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1手詰から始めるフェアリー超入門 安北編1

これまで、駒の性能が変化するフェアリールールについては下記を扱いました。
 ・安南
 ・対面
 ・背面
 ・天竺
 ・点鏡
 ・マドラシ

性能変化系はこれで終わりにするつもりでしたが、最近目にする機会が増えているルールがいくつかあり、具体的には下記を追加で取り上げようと思います。
 ・安北 ←今回
 ・ネコ鮮
 ・ネコネコ鮮


ルール

【安北】味方の駒が隣接して縦に並ぶと、下の駒の利きは上の駒の利きになる。

安北は安南とちょうど逆のルールです。

  • 安南:上の駒の性能が下の駒の性能に変わる

  • 安北:下の駒の性能が上の駒の性能に変わる

性能が変わる様子を具体例で確認しましょう。
左下図では攻方の銀と桂が隣接して縦に並んでいます。そのため、安北ルール下では、37桂が真上の駒の性能、すなわち銀の性能に変化します。右下図では現状の駒の性能を表示しています。

安北

隣接してはいないので、34歩の性能は変化しません。

復習ですが、左上図は安南ルール下では36銀が桂の性能に変わります(下図)。

安南

私だけかもしれませんが、安南と安北はどっちがどっちか分からなくなるときがあり、下記のように覚えています。

・安南:「南」の駒の性能に変わる
・安北:「北」の駒の性能に変わる

一般的な地図は北が上になっているかと思います。それに倣って北が上、南が下を意味していると考えます。
左下図を安北ルールで考えます。37桂から「北」を見れば銀があるので、37桂は銀の性能になる、と理解できます。

安北

34歩や36銀の「北」には駒がないので性能は変化しない、と解釈します。

一方安南では、左下図で36銀の「南」を見れば桂がいるので桂の性能になる、と分かります。

安南

もちろん、攻方だけでなく受方の駒も性能が変化します。
左下図では玉と歩が隣接しています。安北ルール下では、33玉が歩の性能に変わります。

安北

受方の目線で33玉の「北」を見れば歩があるので玉は歩の性能になる、と分かります。

性能変化系のルール全般に言えることですが、玉を弱い性能に変えると詰ましやすくなります。
例えば、先ほどの図では玉が歩の性能になっていました。また、33玉の前に自分の駒があるので、33玉はどこにも動くことができません。そのため、例えば先手が25桂のように何らかの王手を掛ければ詰みとなります(下図)。

安北

次に、安北ルールらしい王手の仕方を考えましょう。
左下図は攻方が33桂と打った局面です。33桂の「北」に角がいるので、33桂は角の性能になります。よって、33桂は王手になっています。

左下図を見てみましょう。23飛の「北」に歩がいるので、23飛は歩の性能になっています。よって、左下図では王手は掛かっていません。
左下図で攻方が21歩成と指せば、23飛の性能が元に戻るので王手が掛かります(左下図)。

補足

3駒以上縦に並んだ場合

左下図のように味方の駒が縦に並んだとします。

このとき、各駒の性能は
 34歩:歩(変化なし)
 35桂:歩
 36飛:桂
となります。性能を表示すると右上図の通りです。

「35桂は歩の性能になっているから、36飛は歩の性能になる」と解釈するのは誤りです。北にある駒の元々の性能に変化します。

行きどころのない駒

性能変化系のルールでは、一時的に利きが無い駒であっても性能変化によって利きが生じうるのであれば着手可能です。

安北の場合、1段目の桂香歩は禁手で、2段目の桂はOKです。
左下図で91歩、71桂、51香は安北ルールでは駒の性能が変わり得ないので、行きどころない駒の禁手です。一方12桂は、例えば11金がいれば12桂は金の性能になり動けるようになるので、着手可能です。

打歩詰

安北ルールでも打歩詰は禁じ手です。通常の詰将棋とはちょっと感覚の異なる打歩詰のパターンがあります。

左下図で29歩と打てば、29歩が金の性能になるので玉が詰んでしまいます。このように、打った歩が別の駒の性能になったとしても、歩を打つ着手で詰んでいるので打歩詰の禁手です。

二歩禁

安北ルールでも二歩は禁じ手です。歩が歩以外の駒の性能になりうるので、盤上の歩が動いて二歩になるパターンがあります。

例えば、左下図で65歩は飛車の性能になっていますが、15歩とは指せません。二歩の禁手だからです。

利き二歩有効/無効

性能変化系のルールでは、利き二歩有効利き二歩無効の二種類の問題設定がありました。

  • 利き二歩有効:玉を取ったときに二歩が発生する場合でも、玉を取れる

  • 利き二歩無効:玉を取ったときに二歩が発生する場合、玉を取れない

左下図は攻方が65歩と打った局面です。65歩の「北」に飛車がいるので、65歩は飛車の性能になっています。
もし65歩で15玉を取れば、右下図のように1筋で二歩が発生します。

利き二歩有効の問題設定であれば、二歩になっても玉を取れるので、左上図の65歩は王手になっています。
利き二歩無効の問題設定であれば、二歩になる場合は玉を取れないので、左上図の65歩は王手ではありません。もし左上図でさらに攻方が12歩成と指したとすれば、65歩により王手となります。12歩成のように、玉のいる筋から歩を無くして別の歩で王手を掛けるのは、利き二歩無効の場合に特有の王手の仕方です。

フェアリー詰将棋を扱うWebマガジン『Web Fairy Paradise』では、基本的に利き二歩有効です。利き二歩無効を前提とする作品の場合、その旨の注釈を付けます。
一方、詰将棋パラダイスのフェアリーランドでは、基本的に利き二歩無効です。注釈が無いときのルールの解釈に違いがあるので注意が必要です。

本連載では基本的に利き二歩有効とし、利き二歩無効の場合はその旨を明記します。

例題

左上図は 23王 迄の1手詰です(右上図)。受方玉は桂の性能になっているので、23王の王手から逃れることができません。

練習問題(1手)

以下は 安北協力詰 1手 10題です。No.9とNo.10は利き二歩無効です。
解答は次回の記事に記載します。

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