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ネコ鮮・ネコネコ鮮の改名に関する整理

以前書き散らしたネコ鮮・ネコネコ鮮の名称変更について整理します。


動機

ネコ鮮・ネコネコ鮮と呼ばれる性能変化系のフェアリールールがあります。

【ネコ鮮】
味方の駒が連続して縦に繋がっているとき、上から$${n}$$番目の駒は下から$${n}$$番目の駒の性能になる。

【ネコネコ鮮】
敵味方を問わず、駒が連続して縦に繋がっているとき、上から$${n}$$番目の駒は下から$${n}$$番目の駒の性能になる。

これらの名称を変更したい理由がいくつかあります:

  • ネコ鮮・ネコネコ鮮は安南や対面、点鏡と同様、駒が特定の位置関係にあるときに駒の性能が変わるルールであるが、「安X」や「X面」とは異なり、分類を意識した名称ではないため、ルール名からその内容を推測するのが難しい。

  • 実際のところは分からないが、「鮮」の字を用いた現在の命名は差別的な思想に由来していた可能性がある。そのため、「鮮」を使用しない名称に変更したい。
    [詳細]
    安南将棋の別名として「朝鮮将棋」が使われていたことがある。安北、対面、背面はそれぞれ逆鮮、対鮮、逆対鮮と呼ばれていたが、1990年ごろに現在の名称に変更された。ネコ鮮・ネコネコ鮮は改称されずに残った。

  • 「鮮」の一字はルール内容を何ら表現していないため、ルールの理解に悪影響を与える懸念がある。

つまり、ネコ鮮・ネコネコ鮮を
・「鮮」を含まない
・ルール内容を類推しやすい
名称に変更したいというわけです。

改称の範囲

ネコ鮮・ネコネコ鮮の名称が望ましいものに変更されれば今回の目的は達成されます。しかし、今後新しいルールが考案された際にネコ鮮・ネコネコ鮮のような命名が行われることを事前に防ぐため、性能変化系のルールの命名規則を整備し、場合によってはネコ鮮・ネコネコ鮮以外のルール名称も変更する方針も考えられます。

実際、『ネコ鮮・ネコネコ鮮の改名について』 を書いたときは、性能変化系のルール全般の名称を規則に従って決め直すのが理想的だと考えていました。対面や背面も、安Xで使用される「東西南北」を使って表現する案です。これは理想的だとは思いますが、対面などのすでに使い慣れた名称も変更することになり、改称による影響が大きすぎます。

現在では、ネコ鮮・ネコネコ鮮のみ名称を変更するのがよいと私は考えています。変更の際は、他の既存のルール名と整合性が取れているかどうかに注意する必要があります。

改称案

現時点で挙げられている改称案は以下の通りです。
案1~3は WFP第188号 pp.23-24 より。
案4は 『ネコ鮮・ネコネコ鮮の改名について』 より。

$$
\begin{array}{r|c|c|c|l}
番号 & ネコ鮮 & ネコネコ鮮 & 発案者 & 備考 \\
\hline
1 & ネコ & ネコネコ & さんじろう氏 & ネコ鮮の改称案は推測 \\
\hline
2 & 安ネコ & ネコ鏡 & 神無七郎氏 & ネコ鮮の改称案は推測 \\
\hline
3 & 安縦 & 縦鏡 & 神無七郎氏 & ネコ鮮の改称案は推測 \\
 & & & & 2の別案\\
\hline
4 & 安縦折 & 縦折 & \text{springs} & \\
\hline
5 & 安ネコ & ネコ & \text{springs} & 4の別案
 \end{array}
$$

それぞれの詳細を記載します。

案1.ネコ鮮→ネコ、ネコネコ鮮→ネコネコ

単純に「鮮」の一字を取り除きます。
元の名称との違いはそれだけなので、変更に伴う影響が最も少ない改称案です。

本案は「安X(安南、安北、安騎など)」や「X面(対面、背面など)」のようなグルーピングを反映した名称になっていないのが気になるかもしれません。しかし、ネコ鮮・ネコネコ鮮は安南や対面などとは異なる点があるので、以下のように理由を後付けできると思います。

まず、安XとX面は以下のように定義されるルール群であると考えます。

【安X】
・駒Aに対し、駒Aと所属が同じ駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。
「所定の位置」は変わらない

X面
・駒Aに対し、駒Aと所属が異なる駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。
「所定の位置」は変わらない

最後の箇条書きは、Xをひとつ決めればそれだけで「所定の位置」が定まるということです。具体例で説明します。

盤上に攻方55歩のみが置かれているとします。もし安南ルールならば、56の地点に味方の駒が来れば、55歩はその駒の利きに変わります。「この地点に駒が来たら55歩の性能が変わる!」と指で特定のマスを指すことができます。

ネコ(ネコ鮮)ルールの場合を考えてみましょう。盤上に攻方55歩のみがあります。もし54の地点に攻方の駒が来れば、55歩は54の駒の利きに変わります。さらに53の地点にも攻方の駒が来れば、55歩は53の駒の利きに変わります。このように、55歩に利きを写す駒の位置は場面場面で変わります。

安南や安騎、対面や背面、点鏡は、性能変化が起きる駒の位置関係は静的ですが、ネコ(鮮)とネコネコ(鮮)は動的ということです。

前述の通りにルール群「安X」「X面」を決め、この二つに該当しないルールについては個別に命名すると決めます。点鏡やネコ、ネコネコは「安X」と「X面」のどちらにも属さないので、命名に矛盾は生じません。

案2.ネコ鮮→安ネコ、ネコネコ鮮→ネコ鏡

ルール群「安X」「X面」「X鏡」を以下のように定めます。

【安X】
・駒Aに対し、駒Aと所属が同じ駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。

X面
・駒Aに対し、駒Aと所属が異なる駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。

X鏡
・駒Aに対し、所属を問わず駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。

「X鏡」は「点鏡」に由来するルール群です。

【点鏡】
55に関して点対称な位置にある2つの駒は、敵味方関係なく互いにその性能が入れ替わる。

点鏡と同様にネコネコ鮮も駒の所属関係に依らず性能が変化するので「X鏡」の形式で名付けよう、という考え方です。具体的には
 ネコネコ鮮 → ネコ鏡
 ネコ鮮 → 安ネコ
とします。

現時点で存在するルールに対しては矛盾のない命名ですが、今後登場するかもしれない「X鏡」系のルールで不都合が生じるかもしれません。

例えば 先日の記事 で取り上げた「Circe Power Transfer」は「X鏡」に属しますが、その内容に「鏡(mirror)」らしさがないと思います。「鏡」の一字がどうしても反射や重ね合わせのイメージを呼び起こしてしまい、ルール名とその内容に差が生じるように思います。

案3.ネコ鮮→安縦、ネコネコ鮮→縦鏡

案2と同様に「安X」「X面」「X鏡」を定義し、「ネコ」の代わりに「縦」を用いる案です。

案2は元の名称との繋がりを意識した命名ですが、案3はルール内容をより直接的に表現しようとした命名です。

案4.ネコ鮮→安縦折、ネコネコ鮮→縦折

「安X」「X面」を案2・3と同様に定義し、どちらにも当てはまらないルールは個別に命名すると考えます。

【安X】
・駒Aに対し、駒Aと所属が同じ駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。

X面
・駒Aに対し、駒Aと所属が異なる駒Bが「所定の位置」にあるとき、駒Aの利きは駒Bの利きになる。
・複数の駒が「所定の位置」にある場合はそれらを複合した利きになる。
・Xで「所定の位置」の内容を端的に表現する。

点鏡やネコネコ鮮はどちらにも当てはまらないので個別に命名することになります。よって、ネコネコ鮮をどのように改称しても矛盾は起きません。

先日の記事 に記載した通り、性能の入れ替わり方に着目し、
 ネコネコ鮮 → 縦折
とします。

ネコ鮮は「縦折」のルールを、性能変化するのは味方同士の場合のみに制限したものなので、
 ネコ鮮 → 安縦折
となります。

案5.ネコ鮮→安ネコ、ネコネコ鮮→ネコ

案4と同様に「安X」「X面」を定義し、「縦折」の代わりに「ネコ」を用いる案です。

案4に比べて元の名称に近い改称案ですが、ネコがネコ鮮ではなくネコネコ鮮を意味するのは混乱を招く可能性があります。


個人的には案4がいいのかなと思っています。

ご意見やご感想などございましたら、お気軽にコメントいただけますと幸いです。

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