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どちりなの祈り|貳|アヴェ・マリアの祈り

一週間お疲れさまです。みんな生きててマジ偉い。
シリーズ「どちりなの祈り」、第三弾です。
『どちりな』で紹介される5つの祈りのうち、前回は主の祈りを取り上げました。今回は2つ目、アヴェ・マリアの祈りに焦点化します。

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1. 主の祈り(=パアテル ノステル, 『どちりな』第三章 )
2. アヴェ・マリアの祈り(=アべ マリヤ, 『どちりな』第四章)
3. 元后あわれみの母(=サルベ レジナ, 『どちりな』第五章)
4. ロザリオの祈り(=ロザイロ, 『どちりな』第四章第一節)
5. コロハの祈り(=コロハのオラショ, 『どちりな』第四章第五節)

このアヴェ・マリアの祈り、プロテスタントの方には馴染みのないものだと思いますが、カトリックにおいて主の祈りに次いで大切にされるお祈りです。
前回も触れましたが、主の祈りとアヴェ・マリアの祈りは「世界でもっとも大切な祈り」と位置付けられています(日本カトリック司教協議会 聖書・教理部門 監修『YOUCAT 堅信の秘跡』p.75)
ミサの中で唱えるのではなく、ロザリオをするときに唱えます。
ロザリオについての話はまたいつかしますが、とにかく、カトリックにとって大切なお祈りなのです。

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(画像:永井隆『この子を残して』より)

この記事の基本的な構造は前回と同じです。まず「アヴェ・マリアの祈り」の新旧比較を行います。次に「アヴェ・マリアの祈り」がどのような性格のものとして語られているか記します。

新旧比較

まず初めに、今日(2021年10月現在)用いられている「アヴェ・マリアの祈り」をご紹介します。

【アヴェ・マリアの祈り】
アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、
ご胎内の御子おんこイエスも祝福されています。
神のはは聖マリア、わたしたち罪びとのために、
今も、死を迎える時も、お祈りください。
アーメン。 

この祈りは「聖書〔ルカ1章〕に根拠を持つ、天使とエリザベトからの、マリアへの賛美のことばから成る祈り」と解せられています。ちなみに最後の一文、すなわち「神の母」から始まる部分は、後に付け加えられたものです(cf. 山口隆介 2014「トマス・アクィナス『天使祝詞講解』―翻訳と註釈―」)。このことは『どちりな』本文にも記されています。詳しくは後ほど。

続いて『どちりな』におけるアヴェ・マリアの祈りをご紹介します。

【アベ マリヤ】
ガラサみち〻玉ふマリヤにおんれいをなし奉る。
おんあるじはおんみとともにまします。
によにん女人の中にをひてわきて
おんくはほう果報いみきなり。
たいないのおんみにてまします
Jsゼズスはたつとくまします。
Dデウスおんはゝはわサンタ マリヤ
いまもわれらがさいごにも、
われらあくにんのためにたのみたまへ。
アメン。(ibid., p.34)

ちょっとだけ雑感。
冒頭の「ガラサみち〻玉ふ」とか「によにん女人の中にをひてわきて
おんくはほう果報いみきなり」とか見ると、古文ネイティブっぽい言い回しだなぁ等と当たり前のことを沁々感じます。
あと現代語では「お祈りください」になっているところが、「たのみたまへ」になっているのが印象的です。『どちりな』における「たのむ」は、今でいう「望む」や「祈る」を含んでいるようですね。


性格

最後にちょっとだけこのお祈りの周辺のお話をします。

 此オラショはたれのつくり玉ふぞや。
 サン〔聖なる〕 ガビリヱル〔ガブリエル〕 アンジョ〔天使〕、たつときビルゼン〔童貞女〕 マリヤにつげをなし玉ふときのことばと、サンタ〔聖なる(女性)〕 イザベル〔エリザベト〕 ビルゼン マリヤにごんじやう言上なされたることばに又サンタ エケレジヤ〔教会〕よりのことばをそなへ玉ふをもて、あみたて玉ふオラショなり。(ibid., pp. 34-35)

弟子 「この祈りは誰がつくったの?」
師匠 「天使ガブリエルとエリザベトの言葉に、教会の言葉を加えてつくったんだよ」

エリザベトは洗礼者ヨハネのお母さんです。詳しくはルカ福音書を参照してください。

もう一つだけ引用。

 おんはゝはわビルゼン〔童貞女〕 マリヤはたれ人にておはしますぞや。
 Dデウスおんはゝはわのためにえらびいだされ、てんにをひてもろ〻のアンジョ〔天使〕のうへにそなへられ玉ひ、しょぜん諸善みち〻てんのおんきさきのくらゐにあげられ玉ふたつときぜんによにん善女人にてましますなり。これによておんJxゼス キリシトおんまへにをひて、もろ〻のベアト〔諸聖人〕よりもすぐれてないせう内證にかはひ玉へば、われらが申あぐることはりをおほせかなへらるゝがゆへに、をの〻キリシタンふかくしんがう信仰し奉るものなり。(ibid., p.35)

弟子 「マリア様ってどんなお方?」
師匠 「数多の天使より偉く、天の妃の位にまします "神の母"。諸聖人よりも私たちの願いをよく執り成してくださるから、キリスト教徒は深く "信仰" しているんだよ」

神の母テオトコスという呼び名についてはプロテスタントの出身の私にはあまり馴染みがないですが、公会議の議題となるほど熱いテーマのようです。
"信仰"としている箇所は今日の文脈を踏まえれば "崇敬"とでも記すべきかもしれません。

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今回は『どちりな』における「アヴェ・マリアの祈り」をご紹介しました。次回は「元后あわれみの母」をご紹介します。こちらはロザリオや聖務日課の中で用いられるお祈りです。正直カトリックに接近しはじめて間もない私には馴染みの薄いお祈りです。

私の知識不足により配慮にかける言葉選びになっていないかといつも憂慮しているのですが、次回は一層心配です。ご意見ご感想があればどしどしご指摘くださいませ。❤️もぜひ!!!

それではまた来週!
みんな生きてて超えらい!

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