対応しきれなかった話

noteの投稿が滞っていた。
その理由は明確だが出来損ないの言い訳だ、と自嘲せざるを得ない。

妻が家を空けていた。

だからnoteを書く気にならなかったのだ。
関係不和が原因でなく、ただ彼女が実家に戻らなければならない用事があった。
滞在期間は6日間。
一見noteを更新するにはうってつけの好条件に思えるが、そうではなかった。
自分でも驚いたが、妻は僕にとって最大の活力源らしい。
仕事には何も支障を来さずに済んだものの、帰宅後の僕は上手く機能しなかった。
ある人が『背骨を引っこ抜いたら立ってられへん』と言っていたが、この6日間はそのような姿だった。

妻がいない時に出来ることとは何か、と考えても大したことは思い付かない。
不摂生とAV鑑賞ぐらいのものだ。

考えてみると確かにAVをレンタルすることは無くなった。
YouTube感覚でアダルト動画が観れるこの時代にわざわざTSUTAYAに足を運んで、ジャリ銭を払う必要はなくなっている。
しかも、無料アダルトサイトの動画の方が画質も綺麗だから勝ち目はないように思える。

しかし、物は試しだ。
僕も苦境を楽しめる人間になりたい。

久々に行くTSUTAYAのアダルトコーナーは僕が知っている姿ではなかった。
無料アダルトサイトではなかなかお目にかかれない作品を主軸としたラインナップに驚かされる。

移り変わりの激しいアダルト業界は新作ばかりが目立ち、レンタルするにしても結構値段が張る印象だったが、今は新作旧作に関わらず5本で1000円という価格設定がされていた。
『これ幸い』と新作ばかりを狙いパッケージとタイトルを吟味し5本に絞る。
1時間の格闘の末、気付くと甲乙つけがたい8作品を手に持っていた。
髪フェチ関連とハードSMばかりの作品たちに自分でも引いてしまった。
しかも、どれも掛け替えのないものに思えて5本に絞りきれない自分にドン引きだった。

今まで考えたことがなかったが、この8本を持ってレジに行くのは気が引けた。
仕事終わりのためスーツを着ていた僕は、レジにいる学生風のアルバイト少女にバーコードを通させたくはなかった。

このような意見が多いからか、辺りを見渡すとセルフレジが設置されており心が救われた。
これで誰にも見られずに、この洒落にならんAVを借りられるのだ。

そそくさとレンタルを済ませ、店を出ると足早に自宅へと向かう。
すると、突然見慣れぬ番号から電話が鳴り始めた。
恐る恐る出ると若い女性の声。
『レシートをお忘れですが、いかがなさいましょう』
とTSUTAYAからの電話だった。
レシートを見ながら僕に電話してきたのはさっきレジにいた彼女だろう。

『私はどうすれば良いでしょうか?もし良ければ取りに伺いますが』
と出来る男の声に切り替えて返すも、むしろ変態具合は増すばかり。

飽きれ声で『こちらで処分させていただきます』の言う彼女に『ほな、掛けてくんな!』と逆ギレしなかった自分を褒めてあげたかった。

結局8本のアダルトDVDを2泊で返し『チ◯コ1本じゃ足りねぇな!』と心の中で叫ぶ。
※今日のタイトルはこの部分から摘要

その数日後に妻は帰ってきた。
僕たちはお互いの6日間の出来事を話した。
妻は凛として、僕はふにゃっとしていた。

女性は強い。
男は情けない。

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