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ゴールの無い、大人のマラソン大会が最高でした。

1週間前の今頃は、走っている。

1週間前の明日は、きっと新たな自分の可能性を発見している頃だろうか。


11月20日 午後3時 BackyardUltraがスタートした。

この耐久レース、大人の我慢比べが最高すぎたので、今回もレースで感じたことを書き残したいと思う。


BackyardUltraとは、どんなレースなのか、出走前の記事をぜひ読んでいただきたい。



11月20日は金曜日なので、仕事はお休みをいただき、「いったいどこに引っ越すねん」ってぐらいの荷物を車に積み込み、一緒にレースに参加する英樹さん、サポートしてくれるそめやんペンちゃんと高尾へ向かう。

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高尾に着くと、それぞれの荷物を下ろし、大会の会場である高尾グリーンセンターへ向かう。駐車場にはレースに参加する猛者たちが、すでに到着していて、なんとあのKOUMI100の覇者の白川さんもレースに参加するらしく、ピリついた雰囲気を感じた。

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この荷物の量。(笑) ゴールなきレースとはいえ、1ヶ月は山の中で過ごせそう。

さぁ、お祭りの始まりだ。


会場に着くと、文化祭の準備をするかのように、大の大人たちが自分たちのエリアで陣地作りをする。各選手は3m×2.5mに区切られたエリアの中で陣地を作らなければならない。僕の隣には、前回大会覇者の上野さん。そしてKOUMI100覇者の白川さん。。とんでもない強者に挟まれた(笑)

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終わりなきレースに参加する25人の選手が出揃い、ブリーフィングが実施される。レースディレクターのTOMOさん(井原知一さん)から、大会の説明をうけている時、まだ一歩も走っていないのに心拍数が上がり、体が早く走りたがっているのを感じた。いよいよだ。


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スタートの合図が15時ちょうどに鳴らされてからは、ひたすら、走る。

今回のコースは、高尾グリーンセンターをスタートとし、約1km先に立っているカラーコーンを目指し、緩やかな下りの林道を走る。コーンを回れば、来た道を戻ってくる。これを3往復すると6.7kmになる。

1本目は49分で帰ってくることができて、11分間の休憩時間をサポートのソメヤンと一緒に過ごす。

スタートの3分前に3度の笛「ピッピッピー。」2分前に2度の笛、、1分前に「ピーッ」。

これを1時間ごとに繰り返し、スタートラインを越え続けなければならない。もし越えられなければ、即失格で、最後の一人になるまでレースは続く。


ゴールが無いことをひたすら続けるのは、正直とても辛いことだ。

でも、この大会には、無いことがもう一つ、「孤独」だ。

25人の選手が一斉にスタートするものだから、1時間に1回は同じ場所にいる訳だし、そうペースも変わらない。時には、一緒に話をしながら走ったし、1kmのピストン道で何度もすれ違う。嫌になる程すれ違う。

僕みたいな最近トレイルランを始めたランナーでも、日本のトップクラスのランナーと話をしながら走れる。


サッカーで言うとすると、無名の高校サッカー部員が、代表合宿に参加して、本田圭佑、長友あたりと「明日のベルギー戦どうする〜?」とか言いながらパス回しでもするようなもの。。

あり得ない!!


そして何より、高尾グリーンセンターの前を1時間に6回も前を通るから、ずーーーっと応援の声が届く。

こんな幸せなことは、他にないと思った。


ウルトラランニングって、結構孤独の時間があって、走っている間は「孤独との戦い」となることが多い。でも、今回はそれがなくて、違う何かとの戦いとなった。


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6.7kmを走って自分の陣地に帰ってきて、まずやることは、靴を脱ぐこと。

KOUMIの疲労は思ったほど響かなかったので、身体の調子を見ながらカレーおにぎりやカップラーメン、スープを飲んで3分、56分になるまで横になって目を瞑る。笛が3回鳴ると体を起こしてポテチを貪り食ってから靴紐を結ぶ。スタート1分前を知らせる1回の笛が鳴れば、スタートラインに向かう。あのポテチが、マジで美味くて、元気がでた。



スタートして17時間くらいが経過するまでは、サポートそめやんのおかげで想定通りのペースで、元気。「次帰ってきたら何を食べようかな〜、ドーナツにしようかな〜」とかワクワクなことを考えながら、たまに英樹さんと話をして走った。

高尾まで駆けつけてくれる応援には、本当に力を貰った。

改めて、人の応援の力の凄まじさを噛み締めて走ることができた。

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20時間近く経過した時、想定外なことが一つあった。脱落者が一人しかいない。まだ20時間とはいえ、ずっと動き続けるのは決して楽ではないし、24時間(100mile)まで残るのは大体3分の2くらいだろうと予想をしていたが、気づけば時計が100kmを余裕で越えていた。

「これは長い長い戦いになりそうだ。」

そして、長く長く動き続けていた体は、だんだんと重くなり、あの痛みを感じるようになった。

「さぁ、100kmを越えてからが、楽しみどきだ。」いつものように自分にそう言い聞かし、本心からそう思った。だが、終わりがない。。

「とりあえず、24時間(100mile)を目指そう、と心に決めて走った。

すると、何度か苦しい時間帯もあったけど、乗り越えることができた。

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長い長い戦いの中で、「笑顔」のパワーを感じた。


1時間ごとに帰れば、必ず笑顔の仲間たちが僕を待っていてくれる。そして「直樹、笑顔やで!!」って声をかけてくれる。

僕はよく、しんどくなったら、それが顔に出てしまう。今回も辛くて笑えない時がたくさんあったけど、しんどい顔をしてたらただただ辛いだけで、仲間の「笑え!!」って言うメッセージのお陰で、一番辛い時に笑いながら走ることが出来た。落ちかけたけど、何度も息を吹き返せた。

結果的に、僕の写真はほぼ笑っていた。(毎度お馴染みか。笑)

応援に駆けつけてくれたみんな、本当にありがとうございました。

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24時間耐えた侍は、予想を遥かに上周り、25人中24人が100mile達成のラインに立った。そこでRDのTOMOさんが言った一言。

「皆さん100mileを越えましたが、だからなんだ。 それがバックヤードです。ただの通過点です。頑張って、いってらっしゃい。」

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ここから、一人また一人と脱落者が増えて行った。

2度目の夜が始まったのである。

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僕も、24時間時点で自分の身体の変化と、100mileを達成した安心感からか、「もう辞めたい」という思いがだんだんと強くなっていった。

「だめだ、だめだ、まだまだ続けなければならない。頑張るぞ。」

でも、体が動かなくなってきている、走るペースが落ちてしまい、26LAPは帰って来た時間が58分だった。休む時間がない。焦る。

「そめやん、ヘッドライトだけ持って来てください。まだまだ行ける」

自分のテントには戻らずにスタートラインでストレッチだけをして、準備をした。

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「27LAP、スタートー!!」

もう少し耐えたら、テツ君、シンさん、トモちゃんが応援に来てくれる。

だからそこまで耐えよう。でも辞めたい。。と心の中でひたすら葛藤。


はじめのカラーコーンを折り返すところで、強い目まいがし、すれ違うランナーのヘッドライトがぐるんぐるん回転した。「やばい。」と一言、僕は立ち止まった。そこで自分の左に丸太が転がっているのに気づいてしまった。

そこに座った瞬間、僕のバックヤードウルトラは終わった。呆気なく終わった。。

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記録は26LAP,174.2Km。DNF(Do Not Finish)

KOUMI100から、約1ヶ月ちょっとで、ここまで走れるとは思っていなかったけど、何も納得感は得られなかった。でも、これが僕の人生初のDNFとなる。こんな幸せなDNFは他に無いと思った。


自分の挑戦が終わり、重い体を引きずりながらお風呂に入らせてもらい、とりあえず寝た。もう30時間以上寝ていない。

でも不思議と長時間眠ることが出来ず、2,3時間で目が覚めた。まだ、外で笛が鳴っているのである。

外に出て大会の様子を見にいくと、10人ほど走っていて、その中に一緒に挑戦した英樹さんがいた。凄すぎる。。僕は英樹さんの応援に加った。


英樹さんの粘り、走る姿、帰って来てまた暗闇に向かっていく姿勢は本当にカッコ良かった。カッコ良すぎた。

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英樹さん 記録33LAP 221km。DNF


英樹さんの挑戦が終わってから、2段ベッドでもう一度寝る。


2人同時に、笛の音で目が覚めた。もう朝になっていた。

レースの様子を見にいくと、2人の選手がまだ挑戦し続けていた。43Loops目(日本記録)まで見学させてもらい、僕たちはグリーンセンターを去った。彼らはまだまだ元気で、どこまで走るのか、、怖ささえ感じた。凄すぎた。



結果的に、最後まで走り続けたLastSAMURAIは54LAPした。54時間走り続けたのである。それを僕と英樹さんは台湾料理屋でラーメンを食べながらライブ映像を見た。心が震えた。



僕は、まだまだやれる。やりたい。可能性しかない。

そう強く感じ、新しい可能性に気が付いたことを嬉しく思った。

勇気を振り絞ってこの大会にエントリーした過去の自分を褒めてやりたい。



そして、今回の大会に関わったすべての人たち。

本当にありがとうございました。


マジでヤバ過ぎる大会だし、また参加したいと心から思います。

また、とんでもない遊びの楽しさを知ってしまいました。(笑)

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Photo by isymtkm


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