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SCOOBIE DOといういつまでも売れないアーティストが人生で一番好きだ

「あなたの好きなアーティストについて3つ挙げなさい」という問いがあったとき(そんな問いを受けたことはないのだけど)、ぼくの中ではすぐに回答する準備ができている。SCOOBIE DOというバンドが、特に3つのうち最初に挙げることになるアーティストだ。

SCOOBIE DO(スクービードゥー)は1995年に結成されたファンクバンド。ギター・ドラム・ベース・ボーカルというオーソドックスなバンド編成の4人組(通称FUNKY4)、気づけばもう結成から25年を超えた大ベテランだ。

中二病アニメオタクとSCOOBIE DOの出会い

ぼくがSCOOBIE DOと出会ったのは2003年頃まで遡る。ちょうど彼らがまもなく結成10周年を迎えようとしていた時期だった。きっかけは、2003年から2004年にかけて放映された2クールの深夜アニメ『Gungrave』という作品のエンディングテーマに、彼らの楽曲『茜色が燃えるとき』が起用されていたことだ(なお他にアニメとタイアップした楽曲はない)。

当時のぼくは中学2年生でアニメオタク真っ盛り。その頃はPCの18禁美少女ゲームを原作とした深夜アニメが隆盛していた時代だったが、その渦中にあって『Gungrave』という作品は、強面の男性キャラクター陣が「スラム街に生まれたチンピラ少年たちのマフィアへの成り上がり」や「復讐」をテーマとして抗争政争を繰り広げる、異色のハードボイルドアニメだった。時代の流行に逆らうような骨太の作風にぼくの中二病をこじらせたハートはまんまと撃ち抜かれてしまったのだけど――SCOOBIE DOの『茜色が燃えるとき』という楽曲はタイアップにも関わらずこの作品の雰囲気に見事に合致していたのだ。オープニングテーマがインストゥルメンタルだったこともあり、なおのこと作品を象徴する楽曲としての印象が際立っていた。

初めてのライブハウスで出会った衝撃

そこからSCOOBIE DOに興味をもったぼくは、『茜色が燃えるとき』以外の楽曲にも手を伸ばすようになった。そんな折、彼らがツアーで名古屋のライブハウスに来ることを知ってぜひ行ってみたくなり、人生で初めて自分の意志でライブハウスに足を運ぶことになった。

彼ら――FUNKY4のライブにおける正装はスーツだ。バンドのリーダーも務めるギター・マツキタイジロウ、メンバーの中では一回り若いが確かな技術を持つベース・ナガイケジョー、特徴的なアフロヘアーの外交担当ドラム・オカモト"MOBY"タクヤの楽器演奏チームはブラックスーツだが、フロントマンであるボーカル・コヤマシュウはひときわ目立つ白スーツを着用してステージに立つ。その様はまるで『Gungrave』に登場するマフィアたちがそのまま目の前に現れたようだった。特に『Gungrave』で主人公のバディとして組織で成り上がっていく野心家のハリー・マクドゥエルというキャラは白いスーツが象徴的で、コヤマシュウはまさにハリー・マクドゥエルその人のようにぼくの目には映っていた。

SCOOBIE DOは"LIVE CHAMP"を自負する、とにかくライブに強いバンドだ。類まれな高い完成度の演奏力と、プロレスのマイクパフォーマンスにルーツをもつ煽り立てるようでありながら、誰も傷つけず置いていかないピースフルなコヤマシュウのライブMCで、オーディエンスを惹きつけて離さない。ホームとしての主催ライブはもちろんのこと、対バンやフェスといったアウェイの場面でも、「誰?」「名前は聴いたことある」といった聴衆を虜にして帰ってくる。

ライブハウス初体験でいきなりそのパフォーマンスを魅せつけられた中学生のぼくは、一発で虜になってしまった。

余談だが、『茜色が燃えるとき』は正直ライブのテンションの中ではあまりセットリスト映えする楽曲とは言い難く、しかもシングルのカップリング曲だ(両A面シングルではある)。なのでSCOOBIE DOのライブで演奏される機会は結構少ないことが後にわかるのだが、その初めて行ったライブではたしかアンコールで演奏されて、ぼくはめちゃくちゃテンションが上がってしまった。

学生時代はずっとともに在った

以来、中・高・大とずっと自分を貫く「好きなアーティスト」に君臨し続けたのがSCOOBIE DOだ。携帯のキャリアメールのアドレスには解約するまでずっと"funky4.scoobie-do"という文字列を使っていた。他人とアドレスを交換したときに、しばしば「誰?」「名前は聴いたことある」と言われたことがある。大学に入学したとき、新歓サークルでメールアドレスを教えたときに「ファンキー?いいねぇ〜ファンキ〜!」とか言われたときはぶっ飛ばしてやろうかと思った。

実は、日比谷野音で結成10周年記念ライブをやったときに、ニュースサイトで招待券のプレゼントがあってそれに当選したのだけど、当時はまだ高校生で名古屋に住んでいたし、定期考査か何かあって流石に親の許可が下りず、行けなかった。せっかくの当選権をフイにして、すみませんでした。大学で上京してから、恵比寿や代官山でのライブに行けたのは嬉しかった。

失意の中での再会

大学生活の後半、2010年頃から徐々にライブに参加する頻度は減っていった。他の好きなアーティストが増えていったり、自分の心境に合致しないことも増えたりして、プレイヤーで楽曲を再生する機会も減っていった。アイドルにハマったりもしたしな。

再び転機が訪れたのは2016年。当時ぼくは縁もゆかりもなかった福岡に移住して現地のスタートアップに勤務していて、慣れない土地と足りない実務能力に苦しんでいた。そんな折にたまたまSCOOBIE DOが新譜を出していたことを知り、当時の最新アルバム『AWAY』を購入。再生すると、昔と変わらないリーダーのスケベなギターリフとジョーナガイケのドスケベなベース音が聴こえてきて、まるで郷愁にも似た懐かしさを覚えた。そして、LIVE CHAMPとしてアウェイのライブバトルに敢然と挑む矜持を謳うリードトラック『アウェイ』が、まさにアウェイの土地で悪戦苦闘していた当時の自分の心に響いた。

SCOOBIE DOのライブに行きたい、という気持ちが湧いたのは数年ぶりのことだった。それから程なくしてMusic City天神という福岡市内のライブフェスに出演が決まり、福岡で知り合った友人を連れて嬉々として観に行くことができたものの、その時点で既にぼくは福岡での暮らしに挫折して地元名古屋に戻ることが決まっていた。それでも久しぶりに観るSCOOBIE DOはめちゃくちゃ格好良くて、福岡で、しかもフェス=アウェイでの彼らのライブアクトを観ることができて本当に嬉しかった(音楽フェスでのSCOOBIE DOを観たのはこれが初めてだった)。

翌2017年の夏、夏びらきフェス@福岡会場に彼らの出演が決まり、たまたまJetstarのセールの都合が合って名古屋から参加することができた。着替えを持っていくのを忘れて服が汗でビチョビチョになってしまったので、「もう物販でシャツでも買うか」と思って物販ブースに行ったら、コヤマシュウとMOBYがブースにいた。

「昔からずっとライブ行ってたんですけど、一時期あんまり行かなくなっちゃって、でも最近また行くようになりました。今日も名古屋から来ました」

とコヤマシュウに伝えたら、

「いつでも帰ってこいよ、俺たちはいつでも待ってるからよ」

と応えてくれて、ただただ、嬉しかった。

売れないバンドマン

冒頭にも書いた通り、SCOOBIE DOはもう結成から25年を経過した円熟味のあるベテランバンドだ。実力は十分、ライブ職人として音楽業界のクリエイターからの誉れも高い。しかし他人にSCOOBIE DOのことを語る機会も随分減ったけれど、相変わらず「誰?」「名前は聴いたことある」という返事しか聞かない。自分の行動圏が狭い/偏ってるだけなのかもしれないが……。

まあ、とにかく売れない。決してこれはディスとかではなく、おそらく昔からSCOOBIE DOを応援しているファンなら誰しも感じていることだと思う。いつかエレカシや竹原ピストルみたいなことが起きたらいいのにな、と思いながらも、実際そんなことになったらやっぱり寂しくなっちゃうのかな。でもやっぱり売れてほしい。

福岡での再会から時間が経って、最近はまた少し離れ気味だ。でもやっぱりぼくの人生で一番最初に出会った、一番好きなアーティストであることは変わらない。ぼくにとってSCOOBIE DO、FUNKY4とは、人生で一番最初に出会った『カッコいい大人』だったのだと思う――ぼくもいつの間にか、ぼくが初めて出会ったときの彼らと同じ年代になっていたけど、なかなか彼らのようなカッコいい大人にはなれていない。


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