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【ツクルバ会社説明資料解説Vol.3】カウカモの対象市場の市場規模(TAM)

こんにちは。IR担当の重松です。
今回は、下記の会社説明動画のスライドの解説記事第3回目になります。

前回のVol.2では、カウカモプラットフォームにおける買主のペルソナ(サービス・商品の典型的なユーザー像)と売り物件の内容等について解説しました。

今回は、会社説明資料の中から、カウカモの対象市場の市場規模(Total Addressable Market=TAM)のスライドについて解説します。

市場規模については、色んな会社様が様々な方法で算出されていますが、決算説明資料等を見ても「どうしてその値になるのか」がわからない場合が結構多いと思います。今回は、「フェアに計算過程も含めて公開する」という一つの試みとして、東京都の中古リノベーションマンションの対象市場1.4兆円の算出方法について詳しく解説していきます。
少し長いかもしれませんが、ぜひご一読いただけますと幸いです。

1.カウカモの取扱物件の類型による対象市場の絞り込み

カウカモは、主に①実需②中古③リノベーションマンションの売買仲介を行うマーケットプレイス型のプラットフォームです。

対象市場の算出にあたっては、上記①から③の条件を元に絞り込みを行いました。

「実需」

「実需」というのは、実際に購入者が住むための物件という意味です。ですので、投資用マンションは対象外となります。そして、購入者が自ら住む物件は面積が30㎡超の物件がほとんどです。ですので、対象市場としては30㎡超のマンションにしようと考えました。

もっとも、参考になる統計資料において、30㎡超というデータが残念ながらなく、20㎡超か40㎡超という類型でしか分けることができませんでした。ですので、ここでは40㎡超のマンションということで対象市場を絞り込みました。

「中古」

リノベーションを行う物件は、ある程度築年数が経過したマンションが多く、大体築20年を経過したマンションが多いです。実際、カウカモで成約している物件も築20年を経過したマンションが全体の8割以上を占めます。

会社説明資料P11

厳密に言えば、築20年以下のマンションの取り扱いも約2割あるのですが、対象市場の算出にあたっては謙抑的に築20年超の物件を対象にしました。

「リノベーション」

カウカモでは、リノベーション済みのマンションの売買仲介もあれば、リノベーションしていないマンションの売買仲介を行い、その後カウカモでリノベーションを行うという場合もあります。

いずれにせよ、購入の前後でリノベーションが施されるマンションがカウカモのメインの取扱物件であることは間違いありません。

ですので、実需の築20年超の中古マンションの市場規模に、「購入前後でリノベーションが施される割合」を掛けるのが適切だと考えます。

留意点

なお、上記のとおり、実際には、30㎡~40㎡のマンションや築20年未満のマンションの売買仲介を行うこともあります。また、マンション以外に戸建の仲介を行うこともあります。

ただ、これらはカウカモが取り扱っている「主な」物件類型から外れるため、謙抑的に、今回の対象市場からは外しています。

2.対象市場規模の算出方法・根拠資料

きめ細かいデータはあるが実際の取引件数全体をカバーできないレインズのデータ

中古マンションの流通市場のデータとして一般的なのは、レインズデータライブラリーに掲載されている年報マーケットウォッチです。

この資料では1年間に売買された中古マンションについて、エリア、築年数、面積帯ごとに取引件数や平均単価等のきめ細かいデータが公開されています。

ただ、難点として、このレインズのデータは実際に行われた取引のすべてが反映されているわけではないよいう点があります。実際には取引がなされていてもレインズに登録されていない取引も存在します。ですので、実態に合った市場規模を算出するためには、登録されていない取引も把握する必要があります。

細かいデータはないが登記を基に取引数量全体を推計できる不動産統計集

そこで、今回の対象市場規模の算出にあたっては、「建物売買による 所有権移転登記個数」に基づいて既存住宅流通戸数の推計値を算出している「不動産統計集」(公益財団法人不動産流通推進センター)の数字を基に、レインズのデータ上の流通工数を既存住宅流通量推計値に割り戻して計算することにしました。

2021 不動産業統計集(不動産流通)P23

上記表を基に、建物売買による所有権移転登記個数に基づく流通数量の推計値に対する指定流通機構(レインズ)への成約報告件数の割合を計算すると、2015年から2019年の5年間の平均では22.6%になっています。

ですので、レインズの報告件数を0.226で割ると実態に近い取引件数が算出されると考えます。

3.根拠資料に基づく対象市場規模の算出

ここから、上記2の算出方法を基に対象市場規模を算出していきます。

①中古マンション×実需(40㎡超)の市場規模の推計

レインズのデータ上の2020年の東京都における専有面積帯別の成約件数は下記のとおりです。

中古マンションの専有面積帯別件数[東京都]2020

ここから、各面積帯ごとの単価×件数を算出し、40㎡超の面積帯の部分を足し合わせると、8,170億円になります。

ここからレインズに登録された取引だけではなく、実際に取引された件数を推計するため、0.226で割ります。

すると、3兆6,150億円になります。
これが、東京都×中古マンション×実需(40㎡超)の市場規模の推計値になります。

②中古マンション×実需(40㎡超)×築20年超の市場規模の推計

さらに、カウカモが強みを持っている築20年超の物件に絞り込みを行います。

レインズのデータ上、首都圏で2020年に取引された物件のうち、築20年超の物件は45.9%でした。

そこで、上記①の数字を45.9%を掛けると、1兆6,593億円になります。

③中古マンション×実需(40㎡超)×築20年超×購入前後でリノベーション実施の市場規模の推計

築21~25年の中古マンションで、購入前後でリフォームされる割合は85.7%です。

中古住宅リノベ市場データブック2021-2022(リフォーム産業新聞社)P45

上記②で算出した中古マンション×実需(40㎡超)×築20年超の市場規模の推計上記数字に85.7%を掛けると1兆4,220億円≒1.4兆円になります。

この1.4兆円という数字が、今回の会社説明資料で算出した東京都におけるカウカモの対象市場になります。

その他、会社説明資料P13の首都圏の市場規模も同様の計算に基づいて算出しています。

4.バフェット・コードさん、IR Agentsさんからの質問

会社説明動画では、監修をされたお二方から
「本当に1.4兆円の全体がアプローチできる市場なのか。市場規模の割にはシェアが低いように感じる。1.4兆円の中身にアプローチできる市場、できない市場があるのではないのか」
という質問がされました。

これについての弊社の回答は以下のとおりです。

ツクルバとしては、統計によって多少の誤差はあるかもしれませんが、基本的にすべてアプローチできる市場と考えています。

カウカモのコアとなるターゲット層は、都心で、手軽に、「自分らしさ」を求める層になるので、デザイン感度が高い人たちがコアターゲットになります。
そして、国土交通省の調査では、中古マンションを購入される方の中で、「住宅のデザイン」を理由に選択する人は3分の1程度です。ですので、コアターゲットとなるのは、1.4兆円の市場の3分の1程度になるかもしれません。

2020年度 住宅市場動向調査報告書(国土交通省)

ただ、私たちは、カウカモに掲載されているようなオシャレな物件以外にも、市場にある物件はすべて仲介可能です。実際、「オシャレではない物件」をハコとして買ってカウカモでリノベするという方も結構います。カウカモは、リノベが必要となる築20年超、かつ40㎡以上の居住用マンションに強みを持っています。

ですので、まさにこの市場がカウカモが獲得していく市場だと考えています。

シェアが低いという点については、カウカモを2015年に立ち上げてからまだ7年しか経過しておらず、展開エリアも東京都区部の一部と横浜エリアの一部になります。ですので、ここは「伸びしろ」として、まだまだ拡大していく余地があるものと考えています。

5.市場の成長可能性

ここまでは、現時点での中古・リノベーション市場の市場規模についての話をしてきました。今後の市場の成長可能性に目を向けると、中古・リノベーション住宅市場は成長市場でもあります。

これまで、日本は"新築信仰"が根強く、欧米諸国に比べて中古住宅市場が未成熟という状況がありました。英米で住宅における中古住宅の流通シェアは8割~9割に対して、日本は15%にも満たない程度でした。

しかしながら、昨今の新築マンションの高騰、建設地不足や、リノベーションの普及により潮目は変わってきています。実際、2016年以降、首都圏中古マンションの取引件数は新築マンションの供給戸数を上回っています。

そして、既存マンションは今後どんどん経年していきます。2025年には、首都圏中古マンションの半分がリノベーションが必要と思われる築25年以上の「築古」のマンションになります。

このような状況に鑑み、国土交通省としても、「ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする既存住宅流通の活性化」を重要テーマとして認識しています。
国道交通省の計画では、「既存住宅流通及びリフォームの市場規模」について、2018年の12兆円から2030年には14兆円、長期的には20兆円を目標に掲げています。

「住生活基本計画(全国計画)」令和3年3月19日 P16

以上のとおり、カウカモが対象としている中古・リノベーション住宅流通市場は、現時点でも十分に大きな市場規模であり、今後も成長が期待される市場と言えます。

6.編集後記

IR担当の重松です。会社説明資料・解説記事連載の第3回目、いかがでしたでしょうか。

TAMについては、社内的には算出した数字を持っていたのですが、あくまで社内用の数字として推計したものでしたので、公開はしていませんでした。ですが、「会社が自らどのように市場を推計しているのかを示すのは大事」というバフェット・コードさん、IR Agentsさんからのアドバイスをいただき、今回、計算過程を含めて公開しました。計算過程をここまで詳細に解説するのは、あまりない試みではと個人的には思っています(先駆者の方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。私のリサーチ不足です。)

どのような算出方法をとるにしても、中古・リノベーション住宅の市場は巨大な市場です。また、今後の成長も期待できます。

ですが、まだまだアップデートされていない部分が多く、エンドユーザーが不利益や不便を被っていることも少なくないと感じています。

カウカモは、豊富なユーザー基盤とデータを基に、売主から買主までスムーズなマッチングや取引がなされていく、自由で流動性が高い市場を作っていきたいと考えています。

そうすることで、不動産が適正に評価され、投資された額が着実に蓄積していく豊かな社会の形成に寄与できるのではと考えています。

(参考)住宅資産額が住宅投資額累計を上回るアメリカに対し、日本は住宅資産額が住宅投資額累計を大きく下回り、1969年から2010年までで累計約500兆円が失われている。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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