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『醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」』オンライン配信レポート

この記事では、4月25日(火)にYouTubeにてライブ配信された、『醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」』の様子をご紹介します。

ライブ配信の音声は、以下のリンクで聞くことができます。

この記事では、今回のトーク内容で特にみなさまに聞いていただきたいおもしろポイントをピックアップしてお伝えしたいと思います!

この配信は、今年の2月にリリース・スタートした、「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」というプロジェクトに関する配信イベントです。

高齢になり廃業を迫られたリンゴ農家さん佐々木悦雄さんと共に、作業の手間を減らすため、食用リンゴを作らないという斬新な発想で、リンゴ生産には欠かせない「摘果」という間引きの作業をしないもしくは簡易化し、オンライン上で仲間を募ってハードサイダー(シードル)に特化した「無摘果リンゴ」を栽培し、その無摘果リンゴを使用したハードサイダーを作ってみようというのが、このプロジェクトです。

プロジェクト詳細はこちらです。

登壇者紹介

袴田大輔さん
青森県青森市出身。2017年に遠野市へ移住。仲間とともに株式会社遠野醸造を設立し、飲食店併設のブルワリー「遠野醸造TAPROOM」をオープン。主に経営全般を担当している。本プロジェクトでは、ビールに用いるホップも使用した無摘果リンゴのハードサイダーのレシピ考案・醸造を担当。

及川貴史さん
岩手県大船渡市出身。2019年9月、それまで営んでいたクラフトビール専門店を閉じ、作り手の道へ。約2年の準備期間を経て「Green Neighbors Hard Cider」を岩手県紫波町にて立ち上げ、2022年9月より醸造を開始。Green Neighbors Hard Ciderの醸造長として本プロジェクトに参画。本プロジェクトでは、無摘果リンゴ100%で作るハードサイダーのレシピ考案・醸造を担当。

佐々木大輔さん
岩手県遠野市出身。インターネットサービスの開発を行うかたわら、TONO DAOの運営に関わる。2022年にはふるさと納税NFT「Game of the Lotus 遠野幻蓮譚」をリリース。本プロジェクトでは、コミュニティづくりを担当。

プロジェクトに参加するふたつの醸造所紹介

遠野醸造
年間20種類ほどのクラフトビールの製造している。ホップの産地遠野にあるブルワリーで、コミュニティブルワリーとして、地域に根ざしながら、遠野産のホップを使用したり、地域のいろんな良い素材をビールに用いながら、地元の方とコミュニケーションをとって醸造を進めている。4年ほど前から発泡酒の免許を用いて、リンゴの果汁メインでかつホップを少し添加した形でハードサイダーをつくっている。

Green Neighbors Hard Cider
2022年7月にサウナに特化した温浴施設併設の醸造所をオープンし、9月から醸造を開始した、岩手県紫波町のハードサイダー専門の醸造所。20種類以上のハードサイダーを製造している。果実酒の製造免許で果物のみを使用して醸造を行っている。現在50〜60%を、食用リンゴ生産の過程で出る摘果リンゴを使用している。醸造で使用するリンゴジュースも、添加物を使用していない食用リンゴのジュースを使用している。

同じお酒なのに名前(呼び方)が違う!?シードル、サイダー、ハードサイダの特徴

各国で独自の発展を遂げてきた、シードル(ハードサイダー)の魅力

同じ発泡性のリンゴのお酒でも、国によって「シードル」「サイダー」「ハードサイダー」など、呼び方が異なるのには、「リンゴ」という原材料だからこその理由があるとのこと。ビールとの違いに、ハッとさせられる視点でした。

及川: それぞれひとつひとつ個性的な味わいがあるというのが1番の魅力ですね。ビールと比較した時に、ビールなら原料となるモルトとかホップを世界各地から調達して醸造できるけれど、りんごに関しては世界中から集めて醸造するのは難しいため、世界各地で作られてるシードル、ハードサイダーはそれぞれの国の中で作られたリンゴを使用しています。そのため、各国の文化とともに独自の発展を遂げてきたお酒がシードル、ハードサイダーになります。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

ハードサイダーは、シンプルで素材の味が強く出やすい

ビールとハードサイダーを両方製造している遠野醸造の袴田さんが感じている、ハードサイダーの作り手目線の言葉も印象的でした。

袴田: すごくシンプルな製造なので、ビールに比べて原料もすごくシンプルですし、素材の味であったり、酵母で勝負するっていうような印象があるので、すごいシンプルで素材の味が強く出るんじゃないかなというふうには思います。(中略)シンプルだからこそ綺麗に作らなきゃいけないし、すごく難しいなというふうには感じています。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

どの「酵母」を使うかに作り手のこだわりが出る!

ファシリテーター佐々木さんの「酵母ってなんですか?」という質問から、それぞれどの酵母を使っているかという話で盛り上がり、ビールもハードサイダーも、それぞれの酵母の特徴をいかに使い分けるかで仕上がりに大きな違いが出るという、酵母選びがお酒作りのひとつの醍醐味になっているのではないかというのが垣間見えました。

袴田: 酵母自体は自然界にたくさんいろんな種類があると思うんですけれども、(中略)醸造に使う酵母っていうのは、いわゆるビールとかリンゴの糖を発酵するのに適したのを選抜して使っているんですね。(酵母選びによって味わいが全然違って、)弊社で使っている酵母は白ワイン用の酵母を使っているので、かなりドライで酸味のある味わいに仕上がります。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

及川: 私たちのところではビール用酵母とワイン用酵母と、あとはサイダー用酵母っていうのもありまして、今その大きく分けるとその3つを使ってます。
袴田: 結構イングリッシュエール(ビール用酵母)だとちょっと甘めの仕上がりになりますよね。
及川: そうですね、ビールと同じようなニュアンスはやっぱりサイダーでも表現できるってことが、私たちも何回か作っているので分かるようになってきました。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

シンプルな製造工程の中で、作り手のこだわりやテクニックが入り込むのはどんなところ?

この質問に対しては、ハードサイダーがシンプルながらもいかに奥深いのか、その面白さを感じました。

及川: 様々な技術であったりテクニックは世界各地でいろいろ使われているんですけども、最初の発酵温度をまず何度にするかっていうところから始まってですね、あとはどこまで温度を下げるかとか、途中の温度をどのぐらいに一旦設定してとか、その辺で変わってきますし、あとはもうフランスとかですと、技法によってキービングっていう、酵母自体の働きを途中で抑制して甘みを残すっていうやり方。国内でもやってらっしゃるワイナリーさんが多分あったと思うんですけども、そういう技術であったりとか、そういうのが醸造の工程の中でもいくつかはありますね。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

袴田: 我々も今年ですね、ちょっと及川さんにアドバイスいただいて、ハードサイダーを作る時の若干技術的なやり方を変えた部分があるんですよ。
やっぱりそれをやったことによって酵母がより快適に発酵してくれて、不快な香りがちょっと抑えられたので、やっぱりすげえなっていうのは今年やってみてすごく感じました。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

「無摘果リンゴ」のハードサイダーという挑戦。醸造家から見た挑戦ポイントは!?

Green Neighbors Hard Ciderでは、通常6月から8月に食用リンゴの生産のために摘果したリンゴを使用したハードサイダーはこれまでもつくってきたということですが、このプロジェクトでは、ほとんど摘果をせずに8月から9月頃まで大きく成長した「無摘果リンゴ」という前代未聞の原材料を使用したハードサイダー作りに挑戦します。

この挑戦について、プロの醸造家の2人はどのように考えているのか、お聞きしました。

及川: 今回のプロジェクトの無摘果リンゴを100%で、どこまで味や質を引き上げられるかっていうのが僕らのチャレンジかなと思います。僕たちも摘果リンゴってのは使ってるんですけども、摘果リンゴ100%で作ったことはないんですね。必ず何かの成熟化のリンゴを合わせることを、今メインとして使ってるので、無摘果リンゴ100%で、どこまで皆さんに喜んでもらえるものが作れるかというのが僕らのチャレンジになると思います。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

及川: 普段リンゴだけで作る場合は、マックスでも(摘果リンゴは)55%ぐらい。100%っていうのはちょっと僕らも本当にキリキリするようなチャレンジですね。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

袴田: 無適化リンゴの果汁のジュースをちょっと飲んだことがないので、そもそもどんな味わいになるんだろうなっていうのがちょっと興味があるのと、一般的なイメージとして渋みめちゃめちゃありそうだっていうのがあるので、(中略)渋みとホップをどうバランスさせるか、(中略)ビール酵母も本当にいろんな種類あるので、どれが渋みとのバランスを取りやすいかなっていうのはちょっと今悩んでいるところであります。

醸造家に聞く「無摘果リンゴでつくるハードサイダー」

おわりに

最後に登壇者の3人からの袴田さん、及川さん、佐々木さんの順で感想と意気込みを語っていただきました。

プロジェクトの参加は、こちらの購入ページから
このプロジェクトへのご参加は、以下のページからメンバーシップNFTをご購入ください。よろしくお願いします!

(撮影・編集 ももばち企画 千葉桃)

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