1520年（500年前）の日本
今年も、暑い夏がやってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。地球温暖化が叫ばれて久しいこの頃ですが、「夏＝暑い」というのは、古今から変わらぬものだと思います。
さて、5か月前に執筆いたしましたこちらの記事が大変好評をいただいているようで、とてもうれしく思っております。
そこで、今回は続編と致しまして、もう少し現代へと時を進め、500年前の日本の姿を振り返ってみたいと思います。
１．西暦1520年
さて、「西暦1520年」といわれて、何時代か、すぐに出てくる方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。
「うーん。西暦1600年ならば江戸幕府成立だけど、、」という、なかなか痛いところなのかもしれません。
正解は、室町時代となります。
とりわけ、西暦1520年といいますと、
足利尊氏が征夷大将軍となってから180年、
室町幕府滅亡までは50年
ということで、応仁の乱などを経て幕府の権力が着実に弱まり、
戦国武将の萌芽が地方に勃興しつつある時期と重なります。
２．「わび・さび」
文化の面に目を転じますと、3代将軍義満の北山文化、8代将軍義政の東山文化を中心に、現在日本を訪れる観光客の方が思い描く「日本文化」が大きく栄えた時代ともいえます。
とりわけ、東山文化では禅の精神に基づく「わび・さび」、風雅、幽玄を基調とした文化が数多く生まれました。金閣と打って変わって落ち着いた色調の銀閣は、その最たるものといえます。「華やかな金閣よりも、一見地味な銀閣の方が好き」という方、かなりいらっしゃるのではないでしょうか。
水を用いずに石や砂で川を描き出す枯山水など、この時代の文化は総じて、喧騒とした現代の私たちにとって、心の安らぎを与えるものでもあります。
３．「荒れた」時代
実はこの穏やかな文化が生まれた室町時代、それとは裏腹に政局の方は大いに荒れていました。
東山文化が生まれたのは、京都を荒廃させた応仁の乱の後。地方権力が勃興しだし、中央政権の存在感が薄くなっていくのと重なります。その証拠に、初代尊氏、3代義満、8代義政は知っていても、他の将軍の名前は思い浮かばないという方、多いのではないでしょうか？
地方では、従来の血縁的結合から、地縁的結合へと、連帯の仕方も変化を遂げていました。その結果、地方での結合が強まり、中央の力は徐々に失われ、群雄割拠の戦国時代へと向かう、格好の土壌を作り出すことになります。
地方権力の強大さを表す事例としては、1485年の山城国一揆なども挙げられますが、1488年の加賀の一向一揆も見逃せません。浄土真宗の門徒が、守護の富樫政親を殺害し、なんと以後100年にわたり自治を取ります。
不穏な時代の中で、何とか心の安らぎを得ようとする、そのような気持ちが東山文化には滲み出ているのかもしれません。
４．2020年の日本。
かなり不穏な幕開けを遂げている令和時代。このようにみてみると、室町時代と重なる要素もいくつか見られます。
今や人々は血縁的結合でも、地縁的結合でも、いずれでもなく、むしろSNSなどを通じた他者とのネットワーク形成の方に重きを置いているように感じます。インターネット上では、「右翼」「左翼」といった人々の分断が一層進んでいるように感じられます。血縁でも地縁でも繋がらなくなった今、現代社会はどこへ向かっていくのでしょうか。
さらに、現代社会の混沌に飽き飽きして、自然環境・地方都市などといったものへの回帰に意味を見出す人たちも増えてきています。現代社会において、このような人々の志向は、後世に何を残していくのでしょうか。
今の私たちが、「室町時代は政治的には荒れていたけれど、素晴らしい遺産を残してくれた」と振り返るように、未来の人たちにも、令和時代について、ポジティブな評価を少しでももらえるよう、今を生きる私たちがすべきことは、山積しているように思います。
画像提供：あばうと京都／銀閣寺HP／あなたの隣に室町幕府／東洋経済
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ban
コロナ禍の先にどんな未来が待っているのか、空想が止まらない
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