【大量消費社会の原点】世界のビジネス構造を髭剃り１本で変えた男の話

1.キング・キャンプ・ジレットの閃きが世界を変えた

P＆G（プロクター・アンド・ギャンブル社）という会社をご存知でしょうか。「ファブリーズ」や「SK-Ⅱ」、「ボールド」など日本では誰もが知ってる家庭用洗剤メーカーですが、実は根っからの外資系企業で本部はアメリカのオハイオ州にあります。

このP＆Gが2005年に買収した企業に「ジレット社」があります。ジレット社は1855年にアメリカのウィスコンシン州で生まれた実業家のキング・ジレット氏が立ち上げた男性用髭剃りメーカーです。

今回は、ジレット氏の生涯を振り返りつつ、彼が史上初めて導入したビジネスモデルである「替刃モデル」の秘密に迫ります。

そもそもジレットは1855年にウィスコンシン州に生まれ、シカゴ大火で全財産を失った両親のために16歳から働いて家計を支える真面目な青年でした。

ジレットはその後容器包装材メーカーのセールスマンなどの職を転々としていましたが、40歳の時、出張先のホテルで転機が訪れます。

当時の雇い主にして王冠商人のウィリアム・ペインターの「使い捨て製品を発売すれば客が安定する」との言葉をヒントに「使い捨ての剃刀」を思いついたのでした。

2.初回無料で普及に成功

当時の剃刀は厚い刃のものが主流で、刃の切れ味が悪くなってきたら刃を研ぎ直して再利用するのが当たり前でした。

「もし男性用の剃刀に使い捨ての薄い刃を使えば、刃を研ぎ直す手間も減って売れるはずだろう」そんな淡い確信を元にジレットは早速使い捨てできるような薄い刃の開発に取り掛かります。

しかし当時のアメリカの鋳造技術では、鉄を薄く伸ばすような技術も無く開発は大いに難航します。

試行錯誤の中でMIT出身の機械工であるウィリアム・ニッカーソンを見つけ、彼のサポートを受けながらT字型替刃式安全剃刀の開発に成功し、1901年に「アメリカン・セーフティ・レザー・カンパニー」（ジレット社の前身）を設立して売り始めました。

3.まさかの大コケ・・・からの逆転勝利

意気揚々と発売に乗り出したジレットですが、初年度の売り上げは鳴かず飛ばずで150枚ちょっとの売り上げに止まってしまいました。

そこでジレットは考えます。

「ジレット本体を無料で配布して仕舞えば良い。替刃のサブスクリプションがあるから売上は絶対に上がる」

この発想をもとにプロモーションを行ったところ、翌年は12万枚を売り上げる大ヒットを記録し、ついに使い捨ての髭剃りはアメリカ男性のスタンダードとなっていきます。

さらに、1914年に勃発した第一次世界大戦では、アメリカ軍が兵士用の標準装備品として本体350万本と替え刃3200万枚の替え刃を購入することを決定。市場を一気に拡大します。

その後、最盛期の1918年にはジレットの作った替刃の売り上げが1億2000万枚に達して、世界で一番の剃刀メーカーの地位を確立したのでした。

ちなみに、彼の開発した「本体を安価に買わせて消耗品の定期購入で稼ぐ」という手法は、「替刃モデル」と言われ、現在でもインクのカートリッジとプリンターや水とヲーターサーバーの販売戦略などに用いられています。

4.ジレットの替刃モデルまとめ

さて、今回のジレットの物語からわかることを列挙していきましょう。

・「歯を研ぐ」という日常の一手間を無くすことが価値になった
・技術的な困難を産学連携により見事に解決
・本体価格を無料にしても、消耗品の定期購入で売上を立てる
・まずは、本体を買ってもらって定期購入のきっかけを作る
・定期的に消耗品のために小額払わせると顧客はお金を出す
・物を売るためには、まず捨てさせることが大切
・国家という巨大な取引先を獲得して経営を安定化

以上のように、彼の「替刃モデル」に至るエピソードから経営的なポイントや営業的なコツなど学べることは多くあるように思います。

ただ、環境的なことを考えると大量生産・大量消費を前提とした「替刃モデル」は持続性のある事業とは言えなさそうです・・・。

私たちは、21世紀の今だからこそ、当たり前になったこのサブスクリプションモデルとどう付き合っていくかが問われるのではないでしょうか。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。興味があればこちらも楽しんでみてください。

写真提供
安全カミソリ：Wikipedia
キング・キャンプ・ジレット：Wikipedia
ジレット剃刀：Amazon
第一次世界大戦：Wikipedia

【SDGs関連事業相性診断はじめました】

弊社では、SDGsに関連した事業やCSRに関する取り組みについて、ご興味のある方を対象にSDGs関連事業の相性診断をはじめました！

3分程度で答えられてしまう相性診断、答えきった後には弊社からのささやかな”お返し”も待っていますのでぜひチャレンジしてみてください！

SDGs事業関連相性診断はこちら

【お仲間募集も年中無休でやってます】

弊社ではSDGsに関わる事業開発を進めていくにあたって、弊社のお手伝いをしてくださるお仲間を年中無休で募集しております。

職歴や学歴、性別は不問です。「まずは週末だけのコミットから...」というのも大歓迎なのでご興味ある方は、ぜひ下記のアンケートフォームからご応募いただければ幸いです。

TSUKURUお仲間募集アンケート

頂いた情報は、当社プライバシーポリシーに準じ、取扱いさせていただきます

＊　＊　＊
この記事を書いた人は

tetsu

起業家になりたい21歳。
髭剃りよりはヒゲの永久脱毛派。