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世界の食事情を「土壌問題」の観点から考えてみた【第8回TSUKURU合宿】

みなさん、こんにちは!

まだまだコロナが猛威を奮っており、なかなか遠出が難しい日々が続いている中、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

私の近年のトレンドは、オンラインでの授業や会議の合間に近場の田舎道を散歩することです。土を踏みしめて歩くだけで、オンラインでの気疲れがそっと抜けていくような感覚を得られますよ!

ということで、コンクリートの上でも田舎道でも必ず私たちが踏みしめている「大地」「土壌」は生活に必要か否かを問うまでもなく生命を支える絶対的な存在なのですが、改めて「土壌」から受ける恩恵を見つめ直す機会は日々の生活では少ないように思えます。

さてさて、7月末に行われた【第8回TSUKURU合宿】では、「世界の食事情における課題とその解決策を考える」をテーマに、以下の3つの観点でグループにわかれて考察を行いました。

①土壌問題
②水問題
③ヒトの問題

今回は「①土壌問題」の切り口から考察を行った、土壌グループの発表内容をご紹介します!

ちなみに、今回のTSUKURU合宿は2か月近くに渡るロングバージョンだったため、あいだに一度中間発表の機会が設けられました。

▼中間発表の様子はこちらからご覧ください▼

今回の記事を経て、土壌や食糧の問題について改めて考えるきっかけが皆様に生まれたらいいなと思っています。
それでは、土壌グループの本発表内容をじっくりご覧ください!

1.土壌の観点から見た食問題

まず私たちは、土壌の観点から「世界の食事情」における理想の状態を、「日本においてその土地で作るべきものが持続的に作られる」ものとして設定した上で、その理想から遠ざかる原因となっている問題点を話し合いました。

その結果浮かび上がった問題点は「土地を活用・維持できず、輸入に依存した消費傾向」でした。

日本の食料自給率の低さはみなさんご存知かと思われますが、近年の食料自給率の推移は以下のようになっています。

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このように、国内で消費される食料の約7割は輸入に頼っており、政府の目標である「2030年での食料自給率45%」には程遠いのが現状になっています。

また、特に小麦については国内需要が高まり続ける一方で、米国やカナダなど特定の国々からの輸入に依存しており、圧倒的に自給率が低いのが問題になっております。

ここで私たちは、日本の「小麦事情」に着目し、小麦の安定した国内供給を目指すことでジワジワと自給率を上げていくような取り組みが大事なのではないかと考えました。

ちなみに、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は2019年に以下のような報告をしています。

すでに頻発している洪水や干ばつの影響に人口増加が相まって、2050年に穀物価格が最大23%値上がり、食料不足や飢餓のリスクが高まる

この報告がもし30年後に現実となってしまうのであれば、食料の約7割を輸入に頼る日本は食料を十分に確保できない事態に遭遇するかもしれません、、、。今こそ、自国の資源を有効利用して食料の安定供給を実現する必要性を真剣に議論するべき局面なのかもしれません。

2.日本における小麦生産の現状

続いて私たちは、日本の小麦生産が今どのように行われ、どのように使われているのか、その現状を調査しました。

国内の小麦生産トップ3の県は以下のようになります。

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先ほど述べた通り、小麦製品(特にパン)の国内需要は高まり続ける一方で特定の国々からの輸入に依存しているのですが、面白かったのは各地域の気候や食文化に合わせた国内ブランド小麦の存在です。

例えば、面積が広く生産シェアが圧倒的に高い北海道ではブレンド適正に優れ汎用性がある「ゆめちから」が、博多ラーメンが有名な福岡県ではストレート細麺に向いた「ラー麦」が、雨が多い佐賀県では湿気に強く高い製パン加工適正を持つ「はる風ふわり」が、各々の土地で開発され、実際に商品として展開しているようです。

こうした国内ブランド小麦は地域と密着して開発されたものが多いため、国内小麦自給率をあげるだけでなく、地方の魅力を上げる特産品としても活躍できそうです。

日本はどうしても他国と比べると小麦の大量生産には向いていない国土面積なのですが、このような地域に根ざした小麦生産を広げていく方向性をしっかり定めることで、将来的に自給率を上げられるかもしれませんね。

3.食料自給率をあげるには?

ここでもう一度議論の原点に戻ります。

私たち土壌グループが打ち出した土壌の観点から見た食問題の解決の方針は「日本における小麦の自給率を上げる」でした。

では、自給率を増やすためには、数字として何を伸ばしていかなければいけないのでしょうか。

ここで我々は一度、自給率の定義に立ち戻り、以下の図のように要素を分解してみました。

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自給率の算出方法は主に「生産量(重さ)ベース」と「カロリーベース」のふたつに分類されますが、今回は「生産量ベース」に基づいて議論を展開しています。

生産量ベースの自給率は上の図に示す通り、国内生産量/国内消費仕向量で表されます。すなわち、自給率を上げるためには、分母を上げるためには「国内生産量」を引き上げるのが一番手っ取り早いわけです。

また、私たちのグループでは国内生産量を「小麦の生産性」「土地の生産性」「生産用地面積」の3要素の積と定義しました。

ここで、第二章で取り上げたように地域に根付いた品種改良とブランド展開が日本各地で進みつつあることが明らかになっているため、今後1つめの要素である「小麦の生産性」については数字が伸びそうだと判断しました。

ということで、「日本における小麦の自給率を上げる」ためには「土地の生産性」と「生産用地面積」を伸ばすことが重要だという結論に辿り着きました。

4.土壌の観点から見た食問題の解決に向けて

以上のように、私たちのグループは「日本における小麦の自給率を上げる」ための解決策のキーポイントを1つに絞りました。また、小麦の国内生産量が上がったとしても、小麦が消費者のもとに行き渡らないと食問題の解決には繋がらないと考え、バリューチェーンの構築も解決策のキーポイントに追加しました。

①小麦を栽培する土地の生産性と、生産用地面積を伸ばす
②生産から消費までのバリューチェーンを構築する

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まず①について、私たちは「リジェネラティブ農業」に注目しました。皆様ご存知でしょうか。

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「リジェネラティブ農業」とは、平たく言うと「持続的生産を可能にするために色々な工夫をしようね!農業」です笑。

この農業の形を小麦生産において積極的に導入することで、
①小麦を栽培する土地の生産性と、生産用地面積を伸ばす
を解決することができると考えました。

旧式農業と比較するとコストはかかってしまうのですが、農業と環境が一体となって持続性を担保できるということで、すでに海外では実際に運用されている例もあるということです。

ぜひ詳細が気になる方は、以下の動画も見てみてください。

続いて、②については、以下のようなフードバリューチェーンの構築を小麦のブランドごとに行うことを考えました。

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小麦の生産量を上げる!となると、どうしても現地での生産の仕組みに目が行きがちですが、上記のように生産・製造加工・流通・消費までを一体として捉え、各事業をどんどん巻き込むような形で連携をとることで、様々なメリットが生まれると考えました。

先ほど紹介した複数の国産ブランドの小麦も、町おこしも兼ねて地域一帯となって開発が進められたということです。

この二点を踏まえて、私たちが提案したのは「埼玉県でのリジェネラティブ小麦生産の検証」でした。

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埼玉県は他の県と比べると農業のイメージはあまりないかもしれませんが、実は関東圏の主要な小麦生産地のひとつなのです。

加えて、県産小麦の振興を図るための団体も立ち上がっており、バリューチェーンの土台も整っているため、最初の検証地として実現可能性が高いと考えました。

このように、消費者や加工業者の認知度が低い県にて国産小麦生産がじわじわと広がっていけば、来たる未来にて海外からの輸入に頼らず国産小麦を楽しめるようになるかもしれませんね。

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今回は、土壌グループの本発表の内容をご紹介しました。

残念ながら、中間発表でも本発表でも優勝は逃してしまったのですが、準備の時間の中で新しい発見が次々に見つかり、とても有意義で楽しい時間を過ごすことができました!

我々土壌グループをやぶった発表は、果たしてどのような食問題を取り上げていたのか、、、
気になる方はぜひ、水グループ・ヒトグループの発表記事をご覧になってみてください!

2022年からは、SDGs議論メシメンバーもご体験可とさせて頂きます。

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この記事を書いた人
ken

学校の近くに美味しいパン屋さんを発見
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