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〈卒業制作への道 #5〉 はじめての作品展

いま長野に通いながら受けている「こっぱ人形講習」の講師の先生から、「こっぱ人形をテーマにした作品展に参加しない?」というお話をいただいた。
講師である徳武忠造さんの作品を中心に、いままでの受講生たちの作品を一堂に集めて展示するというものらしい。

「たった2回講習を受けただけの自分が参加していいのか…?」という思いもあったのだけど、「自分の目で見て、感じて、つくる」ことをなによりも大切にしている農民美術運動のモットーを言い訳に、自分も参加することにした。

そもそも自分は締め切りがないとできないタイプ。
次の卒業制作スクーリングに向けての実績づくりにもなるので一石二鳥である。

とはいえ時間的な余裕もそれほどなかったので、いままで集めてきたいくつかのストックの中から比較的つくりやすく、かつ自分らしさを表現できるものを考える。

というわけで、実際に制作したものがこちら。

大型ショッピングセンターのソファで爆睡する男性のこっぱ人形である。

これは決してそのような人たちを小馬鹿にしているわけではなく、「家族の付き添いで大型ショッピングセンターに来たものの、特に見たいものがあるわけでもなく、家族の買い物が終わるのを待っている間についウトウトしてしまう」という姿を目にする機会が多いこと、そしてそれは地域関係なく発生しているということが、むしろ”今っぽい”と感じたのである。
(改めて見るとセーターの青色がキツすぎて、彩色センスのなさを痛感する…)

事実、自分が住む地域のショッピングセンターでも、こっぱ人形講習で訪れた長野県のショッピングセンターでも、なんとも気持ちよさそうに眠りにつく男性たちを目にしていた。
ある意味、外からこっぱ人形を学びに来ている自分にとって、二つの地域をつなぐもっとも最適なモチーフとさえ感じている。

そんな想いが伝わるかはさておき、先日、会場である朝日美術館に行ってきた。

朝日美術館は長野県の朝日村という場所にある。
どうやら朝日村には木工、染織、絵画といった創作活動をしている作家さんが多いらしい。
彼らを「つくりびと」と呼び、朝日村クラフト体験館という施設では木工職人が常駐してワークショップを行ったり、住民向けに格安で本格的な木工の設備を利用できるようにしたりと、村を挙げてものづくりの支援をしているのが朝日村なのである。

おなじく「つくりびと」を名乗る身として非常に感銘を受け、「ここで住むならどんな暮らしができるかな…」と少しだけ妄想したりもした。

都会にも『Fab』と呼ばれるものづくりのシェアスペースはあったりするのだけど、基本的にレーザーカッターや3Dプリンターといったデジタル工作機械を置いている場所が多い。
うちの大学にもウルトラファクトリーという学生が使える作業場があったりするはするが、おそらく民間でこういう施設を運営していくのはすごく大変だと思うので、行政主体でものづくりの支援をする体制を整えるのは個人的にすごく魅力的に感じた。
もし空間系で卒業制作をするなら、公共・教育事業としてのものづくりスペースの重要性をテーマにしていたかもしれないなぁ。

そんな朝日村にある朝日美術館は、コンパクトながらも広々とした空間で、実物大の竪穴式住居や土器、民具といった歴史的資料が所せましと展示されていてなかなか面白い。

こっぱ人形の展示スペースでは農民美術運動の提唱者である山本鼎がどういう人物だったかというところから、北海道の木彫りの熊との意外なつながり、そして徳武先生をはじめとした諸先輩方のこっぱ人形は造形、彩色、モチーフが実に多様で、非常に魅力的に展示されていた。(残念ながら撮影NGなので写真はなし)

日常を切り取るこっぱ人形だからこそ、100人いれば100通りのこっぱ人形があり、そのどれもが生き生きとしていて、改めて農民美術の懐の深さをうかがえた。
この展示の一員として参加させてもらっていることに恐縮しながらも、ライフワークとして自分が取り組みたいテーマを再確認できる素晴らしい経験だった。

その後、学芸員さんとの農民美術談議に花を咲かせ、大雨の長野県をほどほどに堪能して帰宅したのであった ――― 。



こっぱ人形の作品展は絶賛開催中です。
朝日村へのアクセスはレンタカーの利用がオススメ。
機会があればぜひ。

こっぱ人形ってなぁに? 徳武忠造がつなぐ農民美術のいま』
会期:令和6年7月6日(土)~8月25日(日)
場所:朝日美術館(長野県東筑摩郡朝日村古見1308)
入館料:一般300円、高校・大学生200円、小・中学生100円
https://www.vill.asahi.nagano.jp/special/asahibijutsukan/4282.html


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