「何故子供は無慈悲に無邪気なのか？」の話

あれは、息子が保育園の頃……

私は駐車スペースのない物件にて仕事だった為、コインパーキングに車を停めた。

仕事が終わり、さて精算をして帰ろう、と思った時……

（やべ！小銭がない！1000円札もない！）

かろうじて財布の中には10000円札があった……

コンビニは近くになく、しかし、コインパーキングの隣にケーキ屋さんがあった。

（しゃーない、ケーキを買おう）

年季の入ったケーキ屋さんで、イチゴのショートケーキとモンブランとチーズケーキを買った。

家に帰り、早速ケーキを食べようと、息子に

「好きなの選んでいーよ」

と言うと、息子はモンブランを選んだ。

「あ、それ選ぶ？」

「うん！一番美味しそう！」

「……へー。キガアウネー」

私はケーキの中で、一番モンブランが好きなのに。

まさか、それを選ぶとは。

仕方ない。

「お母さん、イチゴのケーキも美味しそうじゃから、少し食べていい？」

「うん、いーよ」

私もモンブランを一口もらい、少しだけその場を離れた。

戻ると、テーブルの上にある筈のイチゴの赤とクリームの白に彩られたケーキはなく

何だか黄色い物体がお皿の上に乗っかっている……

よく見ると……

スポンジの部分だけ！

ケーキの残骸！

「え？何コレ？」

「食べていいって言ったから……」

「確かに」

「美味しそうじゃから、食べちゃった……」

「なる程……クリームとイチゴの一番美味しい所を……なる程」

あー、やられた。

あーあ。

あぁ…………