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ついと頭を傾け、九死に一生を得る/トランプ暗殺未遂の真相は……:山下郁雄

TOP写真:世界に衝撃。トランプ暗殺未遂。(YouTube ANN NEWSより)

 〈照準器の十字線の中点がこみかみに合わさった。やわらかくやさしく彼は引き金をしぼった-。次の瞬間、彼は信じられないという表情で、駅前広場を見おろしていた。大統領は、ついと頭を傾けたのだ。ジャッカルが茫然としてながめていると、大統領は前にいる退役軍人の両頬に、おごそかに接吻した。…後の検証で判明したのだが、銃弾は大統領の頭の後ろ1インチのところを通過していた。〉
 『ジャッカルの日』(フレデリック・フォーサイス著)は、ドゴール仏大統領の暗殺を請け負った英国人スナイパー、ジャッカルと、暗殺を防ぐ仏司法警察、ルペル警視の暗闘を描いたサスペンス小説。上記のように、クライマックスでジャッカルがミスを犯し、直後にルペルに撃たれ殺される。ドゴールと同様、米共和党大統領候補は「ついと頭を傾けた」ことで、銃弾が右耳を貫通し、九死に一生を得る。頭と銃弾のズレは1インチ(2.54cm)もない。射距離はどちらも130メートル。暗殺未遂直後に狙撃犯が射殺されるのも同じだ。

■なぜ発砲を防げなかった?
 トランプ銃撃の瞬間は、テレビで繰り返し放映され、ネット上には関連動画があふれている。そのなかには、狙撃犯を捉えた映像もある。一方、シークレットサービスのスナイパーが狙撃犯を視認し、狙撃犯に狙いを定めている様子もアップされている。にもかかわらず、なぜ8発の弾丸が発砲されたのか。伝えられている「スナイパーに、撃っていいの指示がなかったから」といった話には、まるで納得力がない。
 ネット動画でとくに注目されるのが、強烈な違和感を放つ「サングラスの女」が映り込んだ映像だ。銃撃現場となった選挙集会の聴衆の一人で、銃撃の直前、ソワソワとライフル銃が発射される方向をうかがっている。銃撃の直後は、周囲がパニックになっているのに、ひとり慌てず騒がず、撃たれることを恐れるそぶりも見せずに冷静にスマホを操作している。ネットの書き込みは「もとから狙撃があることを知っていないと出来ない行動」「任務遂行確認役かな」「自分に害はないと知っていた可能性がある」など。
 フォーサイスは、ロイター特派員としてパリに赴任し“ドゴール番”を経験。ドゴールが何度も暗殺未遂に遭遇した事実を知り、事実とフィクションが渾然一体となった「ジャッカルの日」を書き上げる。同小説は映画化され世界各国で上映されている。トランプ暗殺未遂は紛うことなき事実だが、ライフルを持ち屋根をよじ登る20歳の狙撃犯、大声で狙撃犯の存在を知らせる聴衆たち、狙撃犯を射殺する2人のスナイパー、右耳を撃たれ血まみれになりながら右こぶしを高く掲げ「ファイト」「ファイト」と叫ぶトランプ、謎のサングラスの女…等々は、映画のクライマックスシーンかと見紛うばかりである。

■大きな力が働いた?
 トランプ銃撃で、すぐに想起されるのがケネディ米大統領と安倍晋三元首相の暗殺事件だ。どちらも公式見解は、それぞれリー・H・オズワルド、山上徹也の単独犯行というもの。しかし、前者は事件から60年以上経っても真相解明に至らず諸説紛々。後者は①安倍氏に当たった銃弾の角度・軌跡が、犯人と安倍氏の位置関係からしておかしい②的中した2発の銃弾の一つが行方不明③昨年6月、奈良地裁に不審物が届いたとの理由で中止された山上被告の初公判が、事件から2年余り経過した今も開かれていない-など、不可解なことだらけ。
 トランプ事件では「銃声の音響解析から、20歳の青年とは別の狙撃者も発砲した可能性がある」「事件の前日、トランプ関連銘柄に大量の空売りが仕掛けられていた」といった新情報が出てきている。三つの事件のいずれにも大きな力が働いた、との陰謀説に一票投じたくなるのは私だけか。

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