本音は「人月型SIビジネスに見切り」だけじゃない─“意外に奥が深い15ページ”が示すもの 「DXレポート2.1」の真意を読み解く(3)

デジタルアーキテクチャーの司令塔に求めること

 1970年5月、当時の通商産業省は「情報処理振興事業協会等に関する法律」(現在の情報処理促進法の前身)を制定して、ポスト工業化社会に舵を切った。やや乱暴な言い方だが、同法にこだわった結果、施策は情報処理サービス業とソフトウェア業の育成・振興に矮小化され、社会・経済のIT活用、デジタル化に手が及ばなかったきらいがある。

 先が見通せない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックの状況下、デジタル技術のうねりは世界を大きく変えつつある。デジタルの渦が産業を、ひいては我々の生活を飲み込もうとしている。デジタル化に向けて法制度を見直し、データ基盤を整備するのは喫緊の課題だが、総選挙、内閣首班指名、新内閣発足、所信表明といった政治日程を考えると、年内は来年度予算審議に入るのが精一杯、デジタル庁のアクセルペダルが踏み込まれるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 その間隙を縫って、デジタル産業の流れを加速できるかどうか。経産省の内部からは、「いまこそじっくり産業政策を練るとき」という声が聞こえて来る。「じっくり」とは、政権におもねる施策を練ることではない。産業全体、社会全体を俯瞰したビジョンに立って、デジタル化のリソースをどのように配置するのか、当面想定されるIT/デジタル基盤は何か、それをどう設計し、どのように調達するか。必要なのはデジタルアーキテクチャーの司令塔だ。

 かつて複数省庁が連携し、電源・工業立地や高速鉄道・道路網、通信網の整備を進める5年単位の全国総合開発計画(全総)というものあった。それが第2次世界大戦なかんずくB-29の絨毯爆撃でズタボロになったこの国の経済、社会の復興・再生の基礎になった。

 半導体は「産業の米」とされ、IT/デジタルは「社会・経済の基盤」とされている。そうであるのなら、経産省は自らエコシステムパートナーを求めて、産業全体を視野に入れたバージョンアップ版「デジタルニューディール」を示すべきではないか。個別産業のデジタル化はそのあとの話である。

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