行政手続きから紙とハンコを撤廃できるか(2)

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入管法と水道法を優先

基本計画に沿って、本来であれば、先に閉会した臨時国会で有志議員提出による概論「デジタル化の促進に関する法律(デジタル化促進法)案」が成立していたはずだった。それを受けて官邸が指針を立て、通常国会で内閣による各論「デジタルファースト法案」を可決・成立させる、というストーリーだったが、入管法と水道法の改定を優先する国会運営で手順が前後した、と聞いている。

通常国会に提出された議員立法(議法)「デジタル化促進法案」は、行政手続きのペーパーレス化・電子化と社会・経済の方向性を明文化するという。もっとも今回の官邸指針と重なる部分が多いし、概論と各論がほぼ同時に成立するのは永田町の美学にやや反する。そのような”大人の事情”で、議員立法が見送りになる可能性がないでもない。

促進法案には、①マイナンバーによる本人認証の適用拡大、②行政手続きにおける添付書類の省略、③民間における契約の電子化、④飲食店や小売店でのキャッシュレス化、⑤デジタル技術を活用した働き方改革の促進、⑥災害対策におけるデジタル技術の活用――などが盛り込まれるといわれている。マイナンバーの活用を掲げるのは、国のIT基盤を否定しないという建前を示した、と理解していい。

一括で関連法を改定

また内閣が提出する「デジタルファースト一括法案」は、マイナンバー関連法や住民基本台帳法など行政手続きの電子化に関連する法律を一括で改定するものだ。スマートフォンで住民票の変更ができるようにするほか、行政手続きのオンライン化原則、添付書類の撤廃・省略を定め、デジタル技術を利活用した本人確認、ワンスオンリー(手続きに必要な氏名・住所などの登録を一回だけで済ませる)/ワンストップ(一連の手続きを1つのサイトでできるようにする)などが盛り込まれる。

見事なまでの予定調和だが、「デジタル化促進法案」の中心となったのは自民党IT戦略特命委員会、その委員長だった平井卓也衆院議員が科学技術・IT政策担当大臣として「デジタルファースト法案」を立案したと知れば、議法と閣法の”阿吽の呼吸”が理解できようというものだ。

平井氏といえば、地元への利益誘導が常態化している国会議員にしては珍しく「脱メインフレーム」論やブロックチェーンの活用を提唱し、IT業界団体の会合に顔を出すほどのIT通で知られている。今回の官邸指針のほぼ全項目を科学技術・IT政策担当大臣が担当することになっているので、平井氏のあとを受ける大臣は「顔が見える、声が聞こえる」ようになってもらいたいものだ。

(注)この記事は2019年4月に公開したものを再編集しています。

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