7日間ブックカバーチャレンジ 4日目は「火の鳥」

ブックカバー1978-08-30鳳凰編

7日間ブックカバーチャレンジ 4日目は「火の鳥」月刊マンガ少年別冊(全12巻、1978.7.1~1981.4.1)を取り上げます。

アップした第4巻「鳳凰編」(A4判360ページ、¥480-)は、ちょうどそのころ、武蔵國分寺を舞台にした「仏師」というタイトルの史伝を構想していたこともあって興味深く読むことができた一冊です。東大寺大仏建立をめぐって敵愾心を露わに競った茜丸は炎上する正倉院の中に飛び込んで焼死、我王は両腕を失ってもなお口に咥えた鑿で仏像を彫って狗賓(天狗)となる、というストーリーに圧倒され、執筆を断念することになりました。
その第1巻「黎明編」は、いまブログ「深読みヒストリア)古代探訪)」に書いている邪馬壹國・卑彌呼女王(火の鳥のなかではヤマタイ国・ヒミコ)の時代、ヤマタイ国がクマソの国を滅ぼし、朝鮮半島から渡ってきたらしいニニギ率いる部族(天孫族)がマツラ国を滅ぼし、続いてヤマタイ国を滅ぼしていくストーリーです。
確かに山口県の土井ヶ浜遺跡から出た人骨には、足首を縛られていたり胸から腰に計15本の矢を撃ち込まれているといった、"処刑"の痕跡が確認され、頭蓋骨だけがまとまって出土するなど、凄惨な戦闘があったことがうかがわれます。九州大学医学部の教授で人類学の観点から古代人骨を分析した金関丈夫博士は、「紀元前3世紀ごろから、朝鮮半島の南半沿岸部や山東半島から少なかぬ人数の渡来があって、原日本人(縄文時代人)の形質に影響を与えた」と論じました。異論反論オブジェクションだったのですが、その後の出土例やDNA解析などによって、博士の指摘が正しかったことが証明されています。
最初に出会ったマンガが同級生から借りた「少年サンデー」に掲載されていた『0マン』だったこともあって、手塚治虫さんは特別な存在です。なかでも『火の鳥』の何がスゴイといって、科学的な論証や仮説を踏まえているだけでなく、弱者の目線から歴史を描くことが貫かれていることです。しかも何度でも死んでは蘇る火の鳥を縦糸として、ときにコミカルに、ときにシリアスに、何世紀にも及ぶ壮大なストーリーを作り出す構想力、構成力は、誰とても太刀打ちできないでしょう。1950年代、60年代の米国映画界が何十億円もかけて作製した大スペクタクルを、紙の上のモノクロの世界で作り出したのは舌を捲くほかありません。

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