コロナ後のデジタルガバナンス・コード 「法令工学」に注目せよ(1)

画像1

東京・霞ヶ関の会計検査院

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのデジタルガバナンスコードは、COVID-19のおかげで経済産業省の検討会が休止、先送りになってしまった。政府がテレワークを推奨しているのだから、検討会もWeb会議でどんどん進めていけばいい、いまを逃すとチャンスはなかったかもしれないのだが、ときはすでに遅し。

こうなっては「コロナ後」を考えなければならなくなった。それが「アフターコロナ」か「ポストコロナ」か、どう表現するかはさておき、一味も二味も変えないと新しい時代は開けそうもない。そこで紹介したいのが「法令工学」だ。

ITシステムを法令に基づいてチェックしようという考え方で、国の機関でいうと会計検査院の取組みに通じている。筆者が注目する会計検査院のIT検査が、アフターコロナのデジタルガバナンコ・コードの基本になるかもしれない。

「IT費用はコスト」の認識

DXの推進を阻む「デジタル負債」が生まれた事情は、ざっくり以下のようだ。

バブル経済崩壊(1992年秋)をきっかけに始まったIT領域の変革は、①ダウンサイジング、②オープンシステム、③フリー・ソフトウェア——だった。1台数億円もしたメインフレームとCOBOLからオープン系サーバーとJAVAへの動きだ。

技術的には前進に見えたのだが、同時に「ITは金食い虫」の認識が事務管理系の管理職や経営者に広がった。思い切ったIT投資で仕事の仕方を変え、ビジネスを創出する、そんな余裕なんてない、と経営者は考えた。不況がデフレを生み、デフレが不況の度合いを深めるスパイラルのなかで、「コスト削減」が是とされてきたのは周知の通りだ。

バブル経済への反省から「本業回帰」が喧伝され、事務にかかる業務を外部の専門会社に委託することが「コスト削減」の掛け声に合致した。ITは事務にかかわることとされたので、社内IT部門とその予算は縮小され、「何ごともない」ことが最善とされるようになってしまった。

20世紀モデル、さてどうするか?

以来30年、"偉い人"たちはITのこととなると「分からん」「難しい」と反応するのが一般的だ。役員や部長クラスの上級管理職たちは、「キミに任せるよ」が太っ腹で理解のある上司としての振る舞いと錯覚している節がある。

予算が減る一方なので、IT部門は制度改正に伴うシステム改修以外のことは何もできない。経営陣は「社内ベンチャー」とか言って小手先の目新しさを打ち出すけれど、本格的な事業改革に手を着けない。新しいシステムも要らないし、システム基盤を変える必然性がない。

その結果、1990年代に構築された集中処理・バッチ処理の基幹業務システムが温存され、その作業はITベンダーに丸投げさている。ユーザー企業の内部には、何がどうなっているのか分かる人がいない。

聞き覚えで「うちのクラウドはどうなっとるかね」と経営者は尋ねるのだが、システム基盤は20世紀モデルのままだから、木に竹を継ぐ結果になるのは目に見えている。システムの保守・運用を丸投げしているITベンダーも、既存システムで売り上げを立ててきたのでクラウド、ビッグデータ、AIなどに対応できるエンジニアがいない。

さぁ、どうする? というわけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?