「電子政府」なのに書類添付が必要な行政手続きが48億件もあるって知ってましたか?(2)

「利用が広がっている」の目眩まし

経済効率の観点からネット化の有意性が認められる580手続きについて、手続きの申請・申告と受領・処理の関係を見ると、「行政機関→行政機関」(中央府省、地方公共団体、外郭機関)は46手続きで7.9%、「民(個人・法人)→官(中央府省)」は262手続きで45.2%、「官→民」は81手続き(8.8%)、「民→地方(地方公共団体)」は102手続き(17.6%)、「地→民」は40手続きで6.9%、「民→民」は28手続きで4.8%だった。「民→官」「民→地」を合わせると346手続きで62.8%となる。

 このうち「改善促進手続き」に指定されている58手続きのネット処理率を見ると、「登記」にかかる5手続き(不動産登記、法人登記など)は2億2,026万件のうち1億5,072万件(68.4%、前年度比2.2ポイント増)、「国税」(所得税申告、給与所得源泉徴収票、不動産売買等の手数料など)にかかる15手続きは3,245万件のうち1,956万件(60.1%、1.9ポイント増)、「社会保険・労働保険」にかかる32手続きは1億5,886万件のうち1,876万件(11.8%、2.8ポイント増)などとなっている。年金にかかる諸手続きのネット処理率が極端に低い。

ただ整合性を疑ってしまうのは、「国税」における「所得税申告」すなわち個人の確定申告だ。申請1,855万件のうち992万件、53.5%がネット処理されているというのだが、e-Taxシステムで電子的に確定申告を完了するにはマイナンバーカードが必須となる。マイナンバーカードは昨年末時点で交付枚数がようやく1千万枚に達した状況であることを考えると、この数字にはネットを利用して申請書類を作成した人がかなり含まれている。

一事が万事と決めつけるわけではないが、冒頭で触れた「ネット処理率は件数ベースで73%」という公式発表に見るように、電子政府の普及度合いを高く見せようとする目眩ましが織り込まれている。

別の言い方をすると、申請・申告はネットでできるけれど、実際の手続きには紙の書類を提出しなければならないケースが少なくない(というか大半)ということになりはすまいか。個人であれ法人であれ、本人確認が電子的に認証され、住民票や領収書などを添付する必要なく、ネットで電子的に(役所に行かず、署名・捺印をせず)手続きが完了することはほとんどない。

何よりも書類添付の規定を見直す必要

住基カードに続いてマイナンバーカードも笛吹けど踊らずで、交付枚数が伸び悩んでいる。総務省は多目的利用を普及の切り札にしようと力を入れているが、国民にマイナンバーが通知された当初、「番号は誰にも教えないように」「通知書やマイナンバーカードは持ち歩かないように」と秘匿を強調していたのに、今度は「持ち歩いてあちこちで使ってください」というのは国民一般に混乱を生む。マイナンバーとマイナンバーカードを区別して理解している人は決して多くないためだ。

また、例えば確定申告のとき、マイナンバーを記入したうえにマイナンバーを証明する書類(マイナンバーカードかマイナンバー通知カードのコピー)を添付させるのは愚の骨頂といっていい。先に発覚した日本年金機構のデータ入力にかかわる不祥事でも、年金受給者の扶養家族の情報を追加・修正するのが目的だったのだから、年金番号とマイナンバーをヒモ付けするだけでよかったはずではなかったか。

ここで筆者が強調したいのは、マイナンバー制度で重要なのはカードの交付枚数ではなく、本様々な行政手続きをネットでできるようにする(役所に出向かなくていい)ことだ。そのとき申請者が当該本人であることを認証するのがマイナンバーであるはずだ。

せっかくスタートしたマイナンバーを活かすのが電子政府の本筋とすれば、手続きの電子化を阻害している書類添付の規定を見直せばいい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?