見出し画像

『あめつちのうた』(朝倉宏景・著)

 移動の電車内で、「いい話の図書館」で39冊目の図書『あめつちのうた』(講談社文庫)を読んで、どっぷりはまりました。
 本に恋する小林店長は,「本に恋する店主の呟き新聞」に

 高校野球の聖地,甲子園球場を整備する阪神園芸で働く青年の物語,憧れ悩み,挫折してもがいて…,でも自分が働く意味,生きる意味は何なのか,逃げないで立ち向かい探し続ける一人一人に声をかけたくなるのです。

とメッセージを載せています。

 出版社の内容紹介には,

 絶望的な運動神経の持ち主・雨宮大地は、自分とは正反対の弟や頑なな父への鬱屈を抱え、甲子園のグラウンド整備を請け負う阪神園芸へと入社する。ところが、持ち前のセンスのなさから、仕事は失敗続き,広いグラウンドのなかで、たったひとりうろたえる自分は、本当に一人前のグラウンドキーパーになれるのか?

とあり、高校卒業後一人大阪に来てグラウンドキーパーとして働く青年が成長していく姿が描かれます。

 東京の高校を卒業した雨宮大地は,“何か”から逃げるように大阪で就職し,大の巨人ファンなのに,甲子園球場のグランドキーパーに就きます。
 違う“進路”もあっただろうに…。

 雨宮大地は,阪神園芸に入社し経験を重ねるなかで“これまでのキャリア”を見つめ、見直し、そして“新しいキャリア”を着実に歩み出します。
 本書を通して,その歩みに寄り添い,自分のキャリアを見つめる機会が得られます。

 そのあと、甲斐さんは「不透水層」という言葉を説明した。

 選手が安心してプレーできるグラウンド、さまざまな天候に対応できるグラウンドを作る“職人の技”に感心します。

 同性愛者であることを周囲に隠す親友・一志、重い病気を患いながら歌手を目指すビールの売り子・真夏、ケガでプロへの道を断念した同僚の長谷…。
 友達、同僚、上司…、彼らとの交流を通して、雨宮が“成長”していきます。

 雨宮大地と一緒に、土を作り、グラウンドを作り、そして、 親子・兄弟関係、同性愛、友情を考え味わってみませんか。



 読書メモより

○ 厳しいことを言うようやけど、感謝を求めている時点で、お前は負けやな
○ 俺、プロ野球選手になりたい。(略) 日本のプロではじめてLGBTであることを公表する選手になる。
○ 仕事で独り立ちできる自信をつけて、父さんとしっかり向きあう必要があった。
○ 「でもな、大雨が降ると、平等やんか」
○ 歌ってな、追い焚き機能やねん。
○ こうして社会人になると、知らず知らずのうちに、他人に影響をあたえている。こわい、と思う。
○ そんなパワープレーが許されるのは、長谷さんだけだ。
○ 冷静に周囲を見渡せ。風や雨や太陽を日々、感じるんや。土や芝によりそうんや。それが、グラウンドキーパーの醍醐味や。
○ 叫んだ瞬間、俺は気がついた。/怒っていいのだ。怒りをぶつけていいのだ。
○ まわりをだませれば、自分もだませる。そしたら、絶対におさえられるって、自信もわいてくる。


   目次

プロローグ
はじめての春
はじめての夏
はじめての秋
はじめての冬
ふたたびの春


【関連】
  ◇平塚 千穂子(Facebook)
  ◇阪神園芸株式会社
  ◇阪神甲子園球場



​【「いい話の図書館」
 ◇最近紹介した本
  ◇『夢のユニバーサルシアター』(平塚千穂子・著)(2022/05/01)
  ◇『青山に在り』(篠綾子・著)(2022/03/26)
  ◇『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』(原田ひ香・著)(2022/02/23)
  ◇『死ぬときに後悔しない生き方』(内藤いづみ・著)(2022/01/10)
  ◇『本が紡いだ五つの奇跡』(森沢明夫・著)(2021/12/23)
 *以前に紹介した本は
  ☆カテゴリー「いい話の図書館」から

「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,苦しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。
 そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。
  ◇いい話の図書館【申込】
  ◇小林書店さん (@cobasho.ai)(Instagram写真と動画)
  ◇志賀内 泰弘(Facebook)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?