「←嚆-<」と書いて「嚆矢」と読ませる破天荒さ
こんばんは、TMP2年のけーです。
今のところ唯一の最年少なので新入生の登場が待ち遠しい今日この頃です。
比較的理系の多いTMPの中では珍しく文系ということもあり、やや文系チックな(?)テーマで書いていこうかと思います。
どうぞお付き合いくださいませ。
歌詞カードを読む
私が音楽を聴く時のスタイルですが、CDプレイヤーの前で歌詞カードを見ながらじっと聴くのが好きです。(正確には冊子状のものは「ブックレット」と呼ぶようですが、歌詞ありきで書くため「歌詞カード」で統一します)
時にはお菓子や飲み物も用意して、完全にくつろぎ体勢。
フルアルバムだと1枚50〜70分くらいのものが多いので、短めの映画を観るくらいのノリです。
ちょうどプリキュア映画が70分なのでそのくらいをイメージして頂ければ。
(プリキュア映画を観たことがない?観ましょう)
最近ではわざわざCDを買って音楽を聴く方も少ないですし、買っても歌詞カードまでは見ないという方も多いかもしれません。
しかしこの歌詞カードという小冊子、めちゃめちゃおもしろい代物なんです!
そのCDが全体で表す世界観が歌詞カードにはぎゅぎゅっと詰まっているのです。
特にコンセプトアルバムではその色が強くなります(コンセプトアルバムについてはKNRさんがまとめてくださってます↓)
以下、歌詞カードの個人的な楽しみ方を紹介していきます。
ジャケットを眺める
まずは表紙から見ていきましょう。
大抵歌詞カードの表紙はCDのジャケットでもあり、買わなくても別に見るだけならタダですが、歌詞カードを読む時にはその世界への入口になります。
1曲目のイントロの間にジャケットを眺めてみるのも良いですね。
ジャケットにも様々。
アーティストのカッコイイ写真だったり、米津玄師のように本人が描いたイラストだったり。
アジカンと云えば中村佑介ですし、全くの無地のこともあります(そういう時は大抵表題が『Blue』とかだったりしますよね)
通常盤と初回限定盤でデザインが違ったりすると、ついつい揃えたくなってしまいます。
(↑推しの新作が出る度に通常盤、初回限定盤、アナザージャケットの3枚ずつ増えていくので慢性的に棚が足りない人)
個人的に好きなジャケットは
山下達郎『僕の中の少年』です。
自転車から少し離れて山下達郎が屈んでいる画ですが、1曲目『新(ネオ)・東京ラプソディー』の冒頭の歌詞
に繋がっていきます。
表紙から1曲目へと時系列が繋がり、物語が滑り出していく感覚があります。
流行りの曲こそ
中身の構成にも様々な工夫が見られます。
シンプルに白地に歌詞を載せて数ページで終わるものもありますが、近年ではあまり見なくなった印象です。
何かしら挿絵があったり、アー写の色々なカットが載っていたり、それに合わせて歌詞の配置も偏ったりしているものが多いのではないでしょうか。
今テキトーに棚から1枚取り出して見たところ、
槇原敬之『悲しみなんて何の役にも立たないと思っていた。』の歌詞カードは右下がパラパラ漫画になっていました。
他にも冊子状か蛇腹折りか、横書き左開きか縦書き右開きかといった形式にも違いが出ます。
縦書きの歌詞と云えば私が思い出すのはヨルシカですが、ヨルシカのアルバムは凄いですよね!(唐突)
まるで一編の物語か詩集のような構成で、歌詞の無い曲にも詩が付いています。
いつも街中やネットでなんとなく聴いていたヨルシカを初めて歌詞カードと一緒に聴いた時は驚きました。
流行りのアーティスト程、一度歌詞カードを見てみると意外な発見があるかもしれません。
余白に注目
肝心の歌詞ですが、私は主に「改行」「スペース」「句読点」に注目しながら読むようにしています。
耳からだけではどうしても補えない部分ですし、
ネットの歌詞サイトでズレがちなところでもあるからです。
必ず一節が句点で終わっていると、手紙なのか物語なのかわかりませんが、何か文章のようにしたい理由がありそうです。
ほとんどの言葉の切れ目はスペースなのに、数カ所だけ読点だったりすると、これもまた意味深なものを感じます。
その点で個人的に好きだったのは
パスピエ『永すぎた春』です。
冒頭
最後
それぞれ前後に空白があり、ふたつの文の対比が強調されています。
加えて、この歌詞の他の部分にはない句読点がこの2文には用いられており、曲名も相まって文学的な意味深さを感じさせます。
他にも大胡田なつきさんの書く歌詞は韻の踏み方が気持ちよかったり、ことわざの使い方が巧みだったり、歌詞にサラッと回文が入っていたりと読んでいて楽しいことが多いです。
クレジットもおもしろい
クレジットというのは、作詞作曲誰々とかバンドメンバーとか、冊子の最後にはプロデューサー等関係者の名前が連なっている、アレです。
こんなところも意外に楽しめる要素だったりします。
THE KEBABSが昨年リリースした2ndアルバム『セカンド』は、まさにクレジットがおもしろいCDでした。
大抵バンドのクレジットというのは作詞・作曲、編曲とメンバーの担当楽器、稀にAll other instrumentくらいのものですが、
例えば『セカンド』の2曲目『チェーンソーだ』のクレジットを見てみると
と書いてあります。
Scream!?Shout!?
Crazy Drum Soloって自分で言っちゃう?
などなど、これだけでもかなりおもしろいですし、聴く前からどんな曲なのか少しイメージできてしまいますよね。
このアルバムのクレジットは全曲こんな感じなのです(そもそもバンドで1曲ずつクレジットを書くこと自体稀ですが……)
流石にクレジットで遊ぶアーティストはそんなにいませんが、普通のクレジットでも「このドラム演奏好きだな〜」と思っていたら他の好きなアーティストでも同じ人がバックバンドでドラムを叩いていたり、
「あのブーブーいう音はバグパイプだったのか!」等といった発見があったりしてなかなかおもしろいです。
私は一度バックバンドの名前だけで全く聴いたことのないアーティストのCDを買ったことがあります。
信頼の音がしました。
当て読みがすごい
最後に、歌詞カードの話をするなら欠かせないアーティストを挙げておきます。
Sound Horizon、及び Linked Horizon です。
そもそもこのアーティストはアルバムの作り方が特殊で、物語のような歌詞と組曲的な楽曲でひとつのミュージカル劇のような作品になっています。
歌詞カードはまさに絵本のような装丁で壮大な世界観を表現しており、歌詞の一部が文字ではなかったり、文字列が平行でないなんてこともしばしば。
「言葉も文字も、物語を表現する材料のひとつに過ぎない」と言っているかのようです。
ところでみなさんは進撃の巨人のOPテーマで有名な『紅蓮の弓矢』の歌詞を見たことがあるでしょうか。カラオケで入れてみてギョッとした経験がある方もいるかもしれません(あの演出カッコイイですよね)
この歌詞、とにかく当て読みがすごいんです。
《殺意》と書いて「衝動」、《狩人》と書いて「イェーガー」(ドイツ語でJägerは狩人の意味)等のシンプルな当て読みには飽き足らず、
「←嚆-<」と書いて「嚆矢」と読ませる破天荒さ。
もはや《あの日の少年》を「エレン」と読むことには驚かない。
(なんやねん←嚆-<って……)
この曲はシングルの他に『進撃の軌跡』というアルバムに収録されていますが、その歌詞カードを捲るとさらに何度もギョッとされるかと思います。
私は『紅蓮の座標』のページが好きです。
進撃の巨人を観た方も、知らない方も一見の価値ありです。(実は私は観ていません……。観なければ)
おしまい
以上、歌詞カードのおもしろさをざざっと私なりに書き連ねてみました。
忙しい日常の中で、わざわざ歌詞カードを取り出し、腰を落ち着けて音楽を聴くのはなかなか難しいですが、普段なんとなく聴いている音楽とそうして向き合うのは楽しいものです。
「特典目当てでCDを買ったけど、どうせスマホでしか聴かないしな〜」という方も、歌詞カードを堪能すればするほどお得ですよ!
みなさんも是非、歌詞カードも含めてアルバムまるっと楽しんでみてください!
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