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映画『本気のしるし』劇場版 深田晃司監督

「淵に立つ」「よこがお」の深田晃司監督作品です。星里もちるの同名コミックの映像化。地方局(メ~テレ)の連続ドラマ作品を再編集した映画としては異例の第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020に選出。

出町座で鑑賞しました。上映後に深田晃司監督ご本人の話を聞くことができました。

ストーリー

会社員の辻一路(森崎ウィン)は社内の評判も良いが、他人に好かれるのも他人を好きになるのも苦手である。職場の女性ふたりと曖昧な関係を続けている。
ある日、彼はコンビニで不思議な雰囲気の女性・葉山浮世(土村芳)と知り合う。しかし、彼女と関わったばかりに次々とトラブルに巻き込まれていく。魅力的だが隙と弱さがあり、すぐばれる嘘をついて周りをトラブルに巻き込んでいく浮世と、なぜか彼女を放っておけない辻。辻は破滅への道へと歩みだす、、、

辻と浮世がコンビニで出会ってからの前半部分は、息もつかせぬ展開です。

浮世が運転する自動車が踏切の真ん中で立ち往生した時、辻は体を張って救助します。

それなのに、警察官に「運転していたのはどっち?」と尋ねられると、「辻が運転していた」と浮世は嘘をつくのです。

命を助けてもらったのに。

浮世には計算して行動するほどの余裕はありません。

いつも不安げで頼りなく相手に迎合してその場かぎりの嘘をつく。

柔らかな雰囲気で相手が喜ぶセリフを言う。

この作品は一見「どうしようもない男女の転落ミステリー」です。

とても面白い、上質なエンターテイメント。

でも、ストーリーの奥にもう一つ「社会の中で都合よく扱われる性」というテーマがあります。

辻が浮世の自動車教習所時代の友人に会いに行くシーンで、辻は「隙だらけでだらしなさすぎる」と浮世を非難します。

そこで、すごくおっとりした浮世の友人が、辻にビンタを食らわせながら怒ってくれるのです。

「でも、その隙をすごくついてくる人がいる。押し切られて負けるのは、自分を守るのが下手なだけで。それって、そんなに悪い事ですか?」って。

傷ついて嫌な思いをしているたくさんの人、「あなたは悪くない」です。


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深田監督のアフタートークは、とても充実した時間でした。

「淵に立つ」「よこがお」の作風から、少し気難しい方かと思っていたのですが、気さくで雄弁な方でした。

監督は「本気のしるし」のコミックを20年前から気に入っていて、連続ドラマにしたら絶対おもしろくなる、と確信していたそうです。

浮世を「白いワンピース」に象徴されるような男受けの良いステレオタイプの女性像として描くために、衣装もあえてノースリーブのワンピースを多用したそうです。

深田監督にお会いできて感激です。

出町座さん、いつも素敵なイベントをありがとうございます。

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