ショートショート。のようなもの#51『きょうと、あした。』
ついに、東の空から朝日が顔を覗かせた。
この部屋にも、カーテンの隙間から日の光が差し込んで来た。
その二人は、夜通し口論をしていた。
午前0時を過ぎた辺りから始まり、3時頃になると最早水掛け論となっていた。
「ぼくは、まだまだできます!きょうもぼくにやらせてください!」
「ダメだ。帰りなさい。君の勤めは、もう終わってるんだよ」
「だって、きょうのために4年間ものあいだ準備してきたんですよ!きょうという1日をいい日にするために!」
「これは決まりなんだ。君がどう足掻いて、何を訴えようが変えることはできない決まりなんだ。だから、私の前に覆い被さるのをやめて、早くここを立ち去りなさい!」
「ちょっと、後ろから押すの辞めてくださいよ!ぼくは絶対に、ここを離れません!もっと世界中の人にぼくのことを見てもらいたいんだ!やっと、やっとここへ来ることができたのに…それなのに…」
「いや、そら君の気持ちはわかるがね。あとは、私に任せて、また4年後に来ればいいじゃないか…。」
二人は気が済むまで言い合いをした挙げ句に、諭すように〝3月1日〟が言った。
すると、前に覆い被さっていた〝2月29日〟は悔しそうに瞳を『うるう』とさせた。
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この家の主人が、目を覚まして壁に掛けてある日捲りカレンダーに手をかけて、〝2月29日〟を剥がそうとした……。
刹那、何故だかわからないが〝3月1日〟がびりびりと破れて、ひらりと床へ落ちていった。
~Fin~