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『エミリーローズ』(ネタバレ注意)

オススメ度⭐️⭐️⭐️(5つ星中5つ)

2005年製作のアメリカのホラーサスペンス映画。

【あらすじ】悪魔払いをした神父が悪魔に取り憑かれたとされる少女の死亡により、裁判にかけられる話。彼女の死因は極度の栄養失調と衰弱。ただし、神父のみらならず、少女本人、家族、儀式に同席した医師等関係者は皆悪魔の存在を認め、悪魔払いを頼りにしていた。悪魔は存在するのか。

一口に「ホラー」と言えない作品で、めちゃめちゃ考えさせられる映画でした。何よりも、特に興味深いところは、ドイツで実在した事件を題材にしていること。「エミリーローズ」(本名はアンネリーゼ・ミシェル)は存在していたのです。映画でもシーンがありましたが、彼女は壁に頭を打ち付けたり、彼女の声と思えない奇声や暴言を発したり、蜘蛛や蝿を食べたり、自身の尿を飲んだり、とても普通の人とは思えない行動をしていたそうで、映画同様に、彼女に取り憑いた悪魔は「堕天使ルシファー」、「旧約聖書にある弟を殺したカイン」、「イエスキリストを裏切ったユダ」、「キリスト教徒を迫害した皇帝ネロ」、「堕落した司祭フライシュマン」、「ナチス総統のヒトラー」と名乗ったそうです。ただ、実際の裁判では、神父と両親は、過失致死で懲役刑、執行猶予6ヶ月という判決になったそうですが。

この事件、色々な解釈があると思いますが、筆者は、彼女は「多重人格障害(解離性障害)」だったのではないかと思います。完全に筆者の拡大解釈ですが、田舎出身の敬虔なキリスト教徒であったからこそ、彼女の中にいた「悪魔」と言われる人格はキリスト教の登場人物だったのではないかと。そして、「ヒトラー」が出てくるのも、彼女がドイツ出身だったから。日本でも「除霊」はありますが、そこで「ヒトラーに取り憑かれました」ってあんまりきかないですよね。むしろ、日本人の私たちにとっては、違和感でしかないというか...

彼女に何があったかはわかりませんが、癲癇を患い、且つ厳格なキリスト教の家庭で育った彼女は、通常の人格だけでは自分を保っていられず、自分の中の「悪」な部分を別の人格に置き換えて、自分自身を守らなければいけない状態だったのかも知れません。

ちなみに、筆者は霊的なものをどちらかと言うと信じていて、「人間がみえてる世界が全てで、見えないものは存在しない」と思うこと自体おかしいと思ってます。ただ、今回のケースはやっぱり「多重人格障害」という解釈で腹落ちしてますが。