よくいるあいつのその後 最終話

浩志は26歳になった。
長谷高卒業後、理系の大学に進み現在は医療機器のメーカーに勤めている。
久しぶりに中学のクラス会が開かれることになり、年末実家へ帰省した。
中学卒業後、クラスの皆で集まるのは初めてだった。
参加率はそれなりに高く、30人中25人ほどの出席するようだった。

クラス会当日、かなり冷える夜で雪がちらついていた。
当時学級委員長だった田村が幹事でクラス会の連絡をくれていた。
事前に送られてきた地図を見ながらたどり着くと、
イタリアンの大人な雰囲気の良い店だった。

浩志は店に入り、店員の案内で奥の広いテーブル席に案内された。
「浩志久しぶり!!」
幹事の田村が笑顔で迎え入れてくれた。
「田村!久しぶりだな!中学卒業ぶりだね!」
「いやーマジで懐かしいな。」
浩志の前に既に10人ほど席に着いていた。
浩志はコートをハンガーに掛け、田村の横に座った。
その後続々と人が集まり、浩志が到着してから15分後くらいにクラス会がスタートした。
浩志は何となく、健二が来ることを願っていたがどうやら参加していない様子だった。
「なあ田村。今日健二って来ない?」
「それがさー、健二に連絡しても返信来ないんだよ。浩志もう健二と仲良くないの?」
「最後に会ったのは高校2年だったかな・・・。ちょっと喧嘩っぽくなって終わったから
俺から連絡しにくくてさ。」
「マジかー。浩志が知らないなら誰も知らないだろうな~」
「そうなのか・・・。ちょっと心配だな。連絡してみようかな・・・」
「え?健二がどうしたって?」
浩志の右隣に座っていた相田が話に入ってきた。
「健二の行方がわからなくてさ。今何してるのか心配になって」
「あー。俺が最後に健二に会ったのは大学1年の時だったかな。偶然駅で見かけてさ、
なんだかちょっと元気なさそうだったし、俺あんまりあいつと仲良くなかったから声かけられなかったんだよね。」
「そうなんだ」
「あ!そういえば、夏のものすごい暑い日だったんだけどなんか長袖着てて違和感を覚えたな」
「長袖?なんでだろう?」
「さあ?よくわかんないけど・・・」
「あ・・・!」
浩志は昔の記憶を思い出した。
「そういえば・・・。あいつ、彼女の名前を彫るとかなんとか言ってた事あったな。
ブログにそんなような事書いてて、俺があいつに最後に会った日にそのことで喧嘩っぽくなっちゃったんだよ」
「え?まじ?じゃあ名前入れてて長袖着てたのかな?」
「わからない・・・。もう気にするの辞めようと思ってあいつのブログ見ないようにしてたんだよね」
「ちょっと見てみよう!」
相田が興奮気味に言ってきた。
「あーでも、ブックマークから外したからわからないな・・・」
「あ、俺辿れるかも」
田村がスマホを取り出し、何か操作し始めた。
「あった!!これ、健二のブログだよな?」
健二に田村がスマホの画面を見せた。
「そう!これ!!えーっと、最後の記事が・・・ん?俺らが高校三年の時でブログがストップしてるな」
田村が最後の記事をタップすると、一同驚きの内容だった。
”2012年4月15日
ついに入れた。<添付>
一生一緒”
右腕に、『京子』の文字が書かれた写真を上げたのが最後のブログだった。

「・・・・これって健二の腕・・だよな?」
田村が驚いた様子で浩志に問いかけた。
「うん。そうだと思う。当時の彼女の名前だ」
「でもなんでブログの更新これで止まってるんだろう・・・」
相田も不思議そうに画面を見つめた。

「ねえ、健二君の話してる?」
少し離れた席に座っていた坂堂咲が声を掛けてきた。
「うん。健二の事何か知ってる?」
浩志が咲に聞いた。
「私のお母さんと健二君のお母さんが仲良いんだけど、
健二君今東京にいるんだって。健二君のお母さんも東京で何してるのかよくわからないって
心配してた」
「健二今東京なんだ・・・。全然知らなかった」
「そうなの。私も聞いたときびっくりしたよ。なんかね、腕にタトゥーをいきなり入れたとかで、
お母さんすごく心配してた。彼女と別れてから健二君すごく元気がなくなったみたいで・・・」
「別れたんだ・・・。」
「そうみたい。健二君心配だよね。私も何度か連絡したんだけど、最近はもう既読もつかないの」
「俺ちょっと電話してみる」
心配になった浩志は、健二に電話を掛けた。
・・・お掛けになった電話は、現在使われておりません。
むなしい機械音が流れた。


・・・健二
お前は一体今どこで何をしているんだ。
あの時俺が止めたら今どうなってた?
どうして誰もお前の行方を知らないんだよ。
どうしてクラス会来ないんだよ。
東京で何してるんだよ。
皆お前の事心配してるぞ。


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数年経っても健二が今どこで何をしているか明確に知っている
人がいない状態が続いていた。
しかし、数年に一度咲の母を通して健二の情報は何となく風の噂程度で小さい情報が入ってきた。

どうやら、35歳になった今、健二は結婚したらしいという話が浩志の耳に入ってきた。
浩志はきっと、もう誰も目にすることは無いであろう健二の最後のブログに
「結婚おめでと。連絡よこせよ」とコメントしておいた。

結局健二から連絡が来ることは今でもない。
浩志は数年に一度、健二のブログが更新されていないかチェックだけしていた。



〇あとがき〇
学生の頃、それなりに仲が良かったのに大人になってから
今どこで何をしているか全くわからない人が何人もいる、という人は多いのではないかと思い今回のストーリーを書きました。
結局、よくいるあいつのその後を詳しく知っている人がいなくて、友達の母親から聞いたんだけど・・・という事が多いなぁ、と思いました。
心の中で今どこで何をしているんだい・・・?と心配になる友人が何人もいますが、みんな楽しく幸せになっていることを祈ってます。

(なぞコメント)

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