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いつでもティーンムービーに帰っていいんだよ

ティーンムービーが好きだ。定義がよくわからないので正確にはどんなものをティーンムービーと指しているのかよくわからないが、私の中でのティーンムービーは”青春っぽいもの”である。まあ評論家でもないので馬鹿っぽいことを真剣にやって泣いたり笑ったりの青春劇を切り取った10代向けの作品をここではティーンムービーとしておこう。

初めて映画を見て心の底から感動したり幸せな気持ちになったときのことは、はっきり覚えている。小学6年生の時だ。

当時習っていたダンスの先生に勧められて観た、『天使にラブソングを』。号泣して、テレビの前で一緒になって踊って、終わった後はひたすら幸せな気持ちになる。そんな映画を見たのは12年間の人生の中で初めてのことだった。当時はコンテストやオーディションだらけの日々で、ダンスを「たのしい」ではなく「頑張らなくちゃ」という対象に捉えていた。だからこの映画を見た時の自分が、テレビの前で狂ったように踊る自分が、その日一日ずっと音楽が頭の中から離れないような自分が、自分でもまるで知らない自分だった。この時から『天使にラブソングを』は、自分は踊ることが好きだという事を何度も思い出させてくれるようなバイブルである。ちなみに1よりも2のほうが好き。

この『天使にラブソングを』事件から、人生の節々でミュージカルコメディーやティーンムービーのシンプルで気持ちのいい感情が交差する作品に何度も助けられてきた。要は、一見馬鹿らしくて時間の無駄のようなことでたくさんもがいたり一喜一憂している姿が愛おしく、同時に物凄く救われるのだと思う。

大学に入ってからは授業で映画を見る機会が増えて、難しくて眠くなるような映画も見たし、ストーリーの起伏があまりない日常の一部を切り取ったような映画の面白さも知った。映画の奥深さを思い知ったわけだが、どんな知識をつけたとしても結局、前知識無く無条件で心躍るのはティーンムービーやミュージカルコメディーなんだと思う。『あの頃ペニー・レインと』のバスの中でバンド全員がエルトンジョンの「Tiny Dancer」を熱唱するシーン、『ピッチパーフェクト』で主人公のベッカがアカペラバトルで歌うブラックストリートの「No Diggity」。『スクール・オブ・ロック』。『リンダ・リンダ・リンダ』。『SUNNY強い気持ち・強い愛』。言葉になる前の上手く伝えられずに救われないような感情を、歌って一つになることで救われているようなあの感覚が好き。

そんな心躍る非日常的な感動も、現実の忙しさや不安などで押しつぶされてついつい忘れてしまうものである。つい最近も、映画という虚像のものが現実を救ってくれることも忘れて、現実的に知識が付くものや直接的に将来のためになるようなものばかり摂取しようと必死になっていた。そんなことで少し疲れていた時に、ふと観たのが『旅するジーンズと16歳の夏』である。

不思議なもので、こういう映画はいつでもタイミングよく出会うものなのである。ずいぶん前にSuperorganismのOronoがラジオで勧めていた作品だけれど、その時は人間的に好きなOronoが言ってるんだからいつか見てみようと、「誰が勧めていたか」という前知識の方を優先していたので結局後回しになってしまっていた作品だったが、つい最近プライムビデオでおすすめに出てきて無性に観たくなった。

生まれる前から運命のようにずっと一緒にいる幼馴染4人組が初めて離れて暮らすことになり、ぞれぞれの場所で自分を見つける物語。体型がバラバラな4人全員にぴったりとサイズの合う不思議なジーンズを媒体として、それぞれの場所でもがく4人の姿がひとつながりとなって描かれていく。

4人全員にサイズが合うジーンズってどういうこと!?なぜジーンズ!?っていう突っ込みから始まったけど、悲しいことがあったら思いっきり泣いて、上手くいかなくてイライラしたらいろんなものに当たって喧嘩して、反省して、仲直りして、楽しむときは全力で楽しんで、「馬鹿らしい」と言われるようなことをみんなで本気で信じて祈って、、っていう素直で単純な感情のやり取りに、なんだか訳も分からずに号泣していた。

誰かに傷つけられたり誰かを傷つけてしまったとき、必ず支えてくれている誰かがいること。素直に反省すること。将来のことや現実の不安でいっぱいになると目の前の暗さしか目に映らなくなってまるで一生このままなんじゃないかと思ってしまうけど、その暗闇にいるからこそ味わえることとか、俯瞰的に見れば感情の起伏というのはストーリーを面白くする一部になることを思い出させてくれるし、もっと気楽に感情のままに生きてもいいんじゃないと思わせてくれる。

きっとこういうティーンムービーって、紆余曲折ある人生だけれど、結局最後にはうまくいくし人生楽しいもんだよっていう人生のダイジェストを描いて、目の前の将来に悩む若者の視野を広げるものなんじゃないかと思う。旅をしたり家出をしたり、反抗したり、新しい世界に足を踏み入れたり、狭い世界から解放してくれるようなものが多い。この映画でリーナが暮らすことになる場所の舞台であるギリシャのスコペロス島は『マンマ・ミーア!』でも舞台になっていた場所で、住民みんなが明るくてゆっくり生活している印象。こういうところ住んでみたいな。干渉の無い、みんながオープンで自由な場所に対する憧れ。世界にはこんなところもあるんだって思わせてくれる。

そんなに人生ドラマティックなものじゃないんだとか、甘くないよとか、大人になったら思うのかもしれない。こういう映画を見ても、感動できなくなるのかもしれない。だからこそ、ティーンムービーやミュージカル、ジブリで号泣できる今のうちは、たくさん救われておこうと思う。

クサい青春ムービーに、堂々と救われてやろう。

いつでも、ティーンムービーに帰っていいんだよ。


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