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読書|アルプス席の母

ピアノレッスンまでの時間を使って本屋さんに立ち寄って、面白そうな本を探すことが好き。平積みの本を眺めてると「ワタシ、ワタシ」と呼ばれたような気がして手にした本が「アルプス席の母」

ここからは本書の内容をもとに感想を書きます。
感想と内容が入り混じってますのでご注意を。
読書メータでは書ききれなかった私の想いを吐露させていただきます😆

——— ここからネタバレライン ———


冒頭からアルプススタンドの熱い応援、熱い熱気が押し寄せてくる。
ざわめくスタンド、鳴り止まない応援歌、その*騒音*を切り裂く声があった。

「航太郎!がんばれー!」

父母会で決められたルールを破った瞬間。
誰もが菜々子に驚きとも怒りとも取れる視線を向ける。
それは力の限りを尽くした声だった。

思わず驚く。
本を読みながら彼女の声が頭の中に響いてくるなんて。
この本は、勢いがある。
物語の始まりが最後を締めくくるような形で始まるとは。
おもしろいじゃないか!
*高校野球* を読ませてもらおうじゃないか。


その昔、私は高校球児だった。
だからこそリアルでかつ重厚なストーリー展開を期待していた。
球児たちの苦難、選手たちの上下関係、日々の練習、そんな泥臭い展開があると思っていた。
その期待は良い意味で裏切られ最後の最後で涙をこぼしてしまった。


本書は野球という舞台で波乱万丈な三年間を送る母親が主人公。
息子が強豪校にスカウトされたことにより、関東は湘南から大阪のど真ん中へ息子とともに越して来た菜々子。
越してくるなり、大阪弁というフランクな方言に悩まされる。
この方言は物語におけるスパイスでもあり、そこかしこにくすっと笑えるような面白いシーンが散りばめられている。

息子が野球を続ける三年間、不安や期待、複雑な想いに悩まされる彼女の想いは読者へ向けて痛いように伝播するはず。

私の母も菜々子と同じように感じていたのだろうか。
勝ちか負けにこだわっていた父と比べれば雲泥の差である。

母親ってすごいな。
本書の言葉を借りるなら「私もいいところを母さんに見せたかった」
航太郎の素直な気持ちに共感した。

父母会という昭和の時代にありがちな組織の役員にさせられ、嫌な想いをする菜々子。息子のためなら嫌なことも厭わないと決めた彼女。
航太郎が肘を壊して野球を諦めていないのに、私が諦めるわけにはいかない。
そんな想いが何度も伝わってくる。


高校生活の一年間で行われる公式大会は4つあります。
4大会の内、2つは都道府県内で完結します。
そして残りの2つが春の選抜、夏の甲子園へとつながる大会になります。

その大会に出場できるかどうかも判らない息子を菜々子はどう感じたのか、
大会の出場選手に選ばれるかどうかの不安と期待の渦中にいる息子・航太郎、
希望学園は勝ち進むことができるのか。
息子が母に宣言した夢、約束、
「プロ野球選手になって1億5千万稼いで、お母さんを楽にさせる」
その約束を航太郎は果たすことができるのか。


選手たちの野球に掛ける想い、父母会という組織の中で戦う母も想いは同じ。
読みどころは盛りだくさん。

・・・

結末は清々しい終わりを迎えます。
続きがあるんじゃないかという予感を含んだまま最後の1ページを閉じました。


息子を持たれている母親に是非、読んでもらいたい一冊。
著者は強豪校の球児だったとのこと。
納得のいくストーリー。
怒涛の三年間、経験者だからこそわかる細かい描写に脱帽です。

「アルプス席の母/早見和馬]


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