通学路

僕が通っていた中学校の通学路には神社があり、僕を含め一部の生徒はその神社の中を通って通学していた。
本殿とは別にやや奥まった場所には梅林があるのだが、新年の出店に赴くか、梅の花が咲く初春以外は閑散としているので基本的には誰も近づかない。

1年の入学と同じくして皆にプリントが配られた。件の梅林に変質者が出たので注意しましょうと言うもので、手口も”裸にトレンチコート姿で梅林に立ち、女子学生が来たと同時にトレンチを広げて中身を見せる”と言う非常にトラディショナルかつオーセンティックかつコンサバティブなもので「本当にこんなことやる人いるんだ!」とびっくりしたものだ。

2年に上がった時も、まったく同じ内容のプリントが配られた。こうなってくるとクラスの中にもやや「今年もか」的なムードが漂う。僕は心の中でその変質者のことを、様々な意味合いを込めて”つくし”と呼ぶことにした。
”つくし”は僕が中学校を卒業するまでの3年間、毎年春になると梅林に現れて、その都度まったく同じ内容のプリントが回されたのだが、高校入学と同時に”つくし”も話は聞かなくなってしまった。

そして1.2年前に地元の人間から、「梅林には春になると中学生を狙う変質者がでるんだ」と不意に聞いた。これには流石に驚いた。まさか15年以上前から、ないしは僕が中学校へ入学する以前からいたであろう”つくし”がまだ現役だったとは。
大人たちはなぜ対策を取らないのか疑問に思うのと同時に、その”つくし”は同一人物なのだろうかとも考えた。もしかしたら世襲のものなのか、一家相伝のものなのか。

何はともあれ、早く対処されることを祈る。

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