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スカートは長い方が好き。

当時のお稽古事のうちの一つに、ピアノがある。10年くらい続けていたけど、元々センスがないからもうほとんど弾けなくなっている。

いくつもお稽古事を掛け持ちしていた僕は、ピアノを練習する時間をあまり取ることが出来なかった。一週間のうち日曜日しか休みがなかったので、平日学校の宿題を終わらせてから寝るまで練習をした。特にコンクール期間が地獄のようだった。学校に譜面を持っていって、授業中や休み時間、暇さえあれば机を弾いて、旅行に連れていかれてもホテルに籠って窓際の机を弾く。別に強制されていたわけではなかったはずだけど、お稽古事にはお金がかかっているのを知っていたから、周りに努力している姿を見せておかなければいけないと思っていた。

コンクールが終わってから、同じ学校の子がいつも親から花束をもらっていた。僕はそれがうらやましくて、「僕も花束がほしいです、お菓子でもいいです。」と当時育ててくれていたヒトにお願いをしたけど、「あなたのドレスを作るのにお金も時間もたくさんかかっている」と窘められた。僕がコンクールの時に来ていたドレスは、そのヒトの友人の手作りで、別に僕がお願いをしたわけでもなければ、装飾のたくさんついたブランド品というわけでもなかった。ポケットもボタンも付いていなかったけれど、裏地はしっかり付けられていて、ある程度時間をかけて作ってくれたんだろうなということは伝わってくるようなものだった。僕は下から覗けるような舞台で短いスカートを履きたくなかったから、出来るだけ長く作ってもらうようにいつもお願いをしていたけど、完成するドレスのスカートはいつも短かった。「せっかく女の子なんだから、若いうちに足を見せておきなさい。」ということらしかった。

今でも僕は短いスカートが苦手だし、履きたいと思うこともない。年齢やその他の要素なんて関係なく、好きな服を着て、好きな風に振る舞って、好きなものを好きだと思って、あわよくばそれが大切な誰か数人から認めてもらえる世界なら、それはとても素敵なことだと思う。

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