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とびの冒険 #3

男の人は、この家のパパ。13歳の女の子がサルサで、11歳の女の子がスズメという名前ってことが分かった。この家にはママも居た。初めてママに会った時、ママはキッチンで料理をしていた。パパが「これがとびーだよ」って言うと、ママは振り返って「ふん」と言い、また料理に戻った。パパとサルサとスズメは、代わる代わる、僕を家の外に出したり、茶色いカラカラの豆みたいな食べ物をくれたり、僕の頭をなでで、何度も「とびー」と言った。ママは僕のことを触らなかったけど、僕の名前を「とびー」じゃなくて、「とび」にすると言った。どうして「とび」じゃなきゃだめなのか、僕には分からない、ワン。とにかく、この時から僕は「とび」になったんだ。そう言えば、僕の犬のママはどうしてるだろう。あれ?僕にママっていたっけ?なんとなくいたような気もするけど、はっきりと覚えていない、ワン。このママは、さしゃとみあのママなんだけど、僕のママになってくれるかなあ?ワン。

新しい家に来て1週間ぐらい過ぎた時、パパとママとサルサとスズメが、僕を家の外に出して、リーシュというヒモを僕の首輪につけて、家の前の道をどんどん左の方へ歩いて行った。僕は、この家が好きになっていたから、なんとなく落ち着かなくて、一生懸命家の方に戻ろうとリーシュをひっぱった。
「帰りたいよう、ワン」
そう言ってるんだけど、人間は僕の言葉が分からない、ワン。僕は力の限り家の方に戻ろうとしたけど、パパが大きな声で「とび!行くよ!」と言うので、仕方なく着いて行くことにした。しばらくとぼとぼ歩くと、なんだか急に力が湧いて来て、突然走りたくなった。力一杯走ろうとしたんだけれど、今度は後ろからリーシュを引っ張られて、走らせてくれない。もっと思い切り走りたいなあ。すると、パパが持っていたリーシュをスズメに渡した。僕がまた走ろうとすると、スズメが一緒に走った。全速力で走ったよ、ワン。う〜ん、気分爽快。僕の野生が蘇った、ワン。そんな時、街路樹の枝をサワサワと音を立てながら登って行くリスを発見。「捕まえないと!」っていう衝動にかられ、全身全霊をかけて追いかけ始めた!けれど、すぐに後ろからリーシュを引っ張られて、敢え無く断念。残念だ、ワン。一度でいいから獲れたての新鮮なリスを食べてみたいなあ、ワン。茶色のカラカラの豆みたいな食べ物も好きだけど、やっぱり獲れたてを丸ごと食べてみたいなあ。この辺り、うさぎの匂いもする。ワクワクするなあ。

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