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完全攻略!鮎Fanatic―はじめに

アユを守り、増やすためなら、なんでもします!
そんなアユやアユ釣りに魅せられた研究者3人が、竿ではなく、ペンを握って(実際はキーボードを打って)出来上がったのが本書だ。まさにアユに身も心も奪われたアユ・ファナティックな3人のアユ語り、である。

アユと聞いて、みなさんは何を想像されるだろうか。この本を手に取っていただいたみなさんは、きっとアユという魚やアユ釣りが大好きな方で、アユそのものの容姿、味、香り、あるいは夏の清流を思い浮かべると思う。なぜアユやアユ釣りはこれほどまでに私たちを強く強く惹きつけるのだろうか。まず、なんといっても夏限定という点があげられるだろう。

日本人は元来、四季折々の自然を愛し、その恵みに感謝しつつ味わってきた。季語というもの自体、それを裏付ける証拠だろう。調べてみると若鮎、小鮎は春、鮎は夏、落鮎、錆鮎は秋の季語である。「季語、ありすぎだろ、アユ」と思ってしまったのは筆者だけではないはずだ。アユ釣り解禁とともに、夏を彩る主役といっていいだろう。

また、寿命が基本的には1年というはかなさ、海と川を行き来するというロマンも心をくすぐる。おまけに、川でのアユの主食は藻類であり、友釣りは、世界で唯一、縄張り行動で魚を獲る手法だ。まさに唯一無二、オリジナリティが高いにもほどがある。そして、アユのいる日本に生まれて本当に良かったと、心の底から筆者は、そして他2人の筆者もきっとそう思っているにちがいない。

川の主役アユをとりまく環境は今、お世辞にも良いとは言えない。それを少しでも良くするのが筆者らの仕事である。元来、研究とは、未解明な点や問題点を深掘りすることが醍醐味であり、そういう意味では、現代のアユを研究対象とすることは、とてもやりがいがあり、たまに手一杯、胸いっぱい、お腹いっぱいなほどである。

問題は山積みだが、手遅れではない、と声を大にして言いたい。手元で複雑に絡んだ仕掛けでも、ゆっくりほどけば、なんとかなる。生態系のもとに戻ろうとする力(レジリエンス)は尊いもので、多くの問題が解決可能である。今ならまだ間に合う。

この本では、筆者ら3人が多くの関係者と連携しながらアユを対象として研究し、そこで得た最新の成果、情報をできる限りエビデンスに基づいて紹介できればと思う。三人寄れば文殊の知恵という言葉があるが、アユ・ファナティックな3人が寄れば、トリプルチェック機能で、正しい情報のみをお伝えできると信じている。

著者を代表して 坪井潤一

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