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「敷居が高い」という意味が変化している言葉から考えてみた

「敷居が高い」

意味が変化している言葉として、あまりにも有名である。年代によって意味の捉え方が異なるのも興味深い。

出典:文化庁 「敷居が高い」の使い方 
https://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_04/series_08/series_08.html

これは、平成20年度の調査結果なので、参考程度にしていただけたら。とはいえ、本来の意味とは異なる意味が広まっている、代表的な例である。


心理的負担を表す表現

上記のグラフにあるように「敷居が高い」には、

  1. 相手に不義理などをしてしまい、行きにくい

  2. 高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい

という意味で使われている。

この2つの意味から、「敷居が高い」は心理的負担から行きにくさを感じていることがわかる。

(もちろん、2の意味は誤用であると書いている辞書もある)

「レベルが高くてとっつきにくい」の意味で使われることがあるが、誤り。

現代国語例解辞典(小学館)

イコール「ハードルが高い」?

「敷居が高い」は、人によって捉え方が異なる。それにくわえて、「本来の意味とは異なる使い方が広まっている」代表的な表現だ。

「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」という意味合いで使われていると、だいたい「誤用だ」と言う人が出てくる。

少々やっかいともいえる表現なので、Web記事の校正時にはそもそも使わない、言い替えることをおすすめしているのだが、そこで登場しがちなのが「ハードルが高い」だ。

「敷居」を「ハードル」に変えるだけなので、非常に便利だ。ただ、安易に「ハードルが高い」を使っていないか?と疑問に思うことがある。

「ハードルが高い」に気持ちは関係ない

「ハードルが高い」に心理的負担は関係ない。「要求される能力や物事の困難さの程度が高い」ことを指すと、新選国語辞典(小学館)にも書いてある。

ほかにも三省堂国語辞典(三省堂)には「ハードルが高い」は心理的な抵抗はなくても実現が難しい場合に使うと書かれている。さらに、「気軽に体験できない」が新しい用法なので「ハードルが高い」と言い替えることがあるが、これもまた新しい用法とのこと。

「『ハードルが高い』に気持ちは関係ない」というのが本来の意味だったのが、国語辞典に「新しい用法だ」と書いてある。

結局のところ、「敷居が高い」の言い替え表現で重宝されている「ハードルが高い」もまた、意味が変化している言葉なのだ。

結局、どうする?

先述したように、私はWeb記事の校正において「誤解されやすい表現は使わない」ことをおすすめしている。

Web記事では「より多くの人に誤解なく伝わること」を優先するからである。

「その誤解されやすい表現を使って、伝えたかったことは何か」「それを伝えるために適した表現はどれか」を考えて、言い替え表現を探っていく。その文章内での最適解を探す。

もちろん他媒体の校正だと対応は変わるし、最終的にはクライアントが判断することなので、校正者としてできることは判断する材料を提供するだけ。

とはいえ、書く人も言葉の意味の変化まで意識してみてもよいと思う。

数ある表現の中で、その表現を採用した理由を説明できるくらいに、表現に責任をもってみてもよいと思う。

多くの記事を読んでいて、そう思う。

時代とともに意味が変化している言葉は数多くある。見つけたらまたそこからいろいろ考えてみたい。







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