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校正者が心に刻んでおきたい言葉たち~講談社の校閲部に伝わる「校閲十訓」

以前見かけた言葉をふと思い出したので、「残しておきたい」という気持ちもこめて紹介します。

Twitterで紹介されていた、講談社の校閲部に古くから伝わる「校閲十訓」です。

この校閲十訓の内容は、校正者にとって常に意識しておきたいことばかりです。そして、どんな仕事であっても心に留めておきたいと思えるような言葉が並んでいるのではないでしょうか。

今回は、この中から私が気になった3つをピックアップして紹介します。

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※私は「校正」と「校閲」は同義のものだととらえています。
校正⇒言葉を正す・整える
校閲⇒内容が正しいかどうか確認する
といった使い分けをされることが多いですが、特にWeb記事においては「校正」と「校閲」の使い分けがあいまいだからです。
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一つあるだけでも大問題「誤植は何より品位を落とす」

1つ目の「誤植は何より品位を落とす」は、特に重要です。「誤植」つまり「誤字」はあってはならないものですから、1つあるだけでも、その文章の印象を大きく落としてしまうと思います。

Web記事にあてはめ、具体的に考えてみましょう。

例えば、ツールの使い方を解説する記事を読み進めていたところ、誤字があったとします。すると、ツールの使い方を知りたかったのに、その誤字のほうが気になってしまい、誤字について調べ始めてしまうかもしれません。

また、執筆者のプロフィールが掲載された記事に誤字があったとします。その場合、「この執筆者は誤字に気づかなかった」、「そもそも誤字を気にしない人なのかな」と執筆者に対する印象が悪くなってしまいかねません。

他にも、インタビュー記事でいくら役立つ内容を話していても「そもそもこの事業に参入することは、私にとっては敷居が高いことだと思っていたんですよね」などと言葉の誤用があると、そこが気になって内容が入ってこないことがあります。

このように誤字などの誤りがあると、読むのを途中でやめてしまうおそれがあります。メディアや記事の内容に対する信頼を失ってしまうこともあるでしょう。

よい仕事をするために必要「心身いつも健やかに」

どんな仕事にもいえますが、心身ともにコンディションを整えることはとても大切です。

校正者は校正している間、集中し続けなくてはいけませんが、これはコンディションがよくないと難しいことです。逆に「コンディションが悪いときは潔く休む」という決断も必要だと思っています。なぜなら、見落としに直結してしまうからです。

しかし、仕事には納期がありますので「今日はしんどいから休もう」などと言っていられないこともあると思います。ですので、日頃からコンディションを整えることを意識しておくのが必要です。

複数の情報にあたることが大事「一つの辞書より二つの辞書を」

よく勘違いされていることなのですが、国語辞典に載っていることは必ずしも「正解」とは限りません。おおよそ近いことを書いているものの、さまざまな語釈があります。

こう説明すると、「じゃあ、辞書に載っていることは信じないほうがいいの?」と思う人がいるかもしれません。

しかし、そんなことはありません。ここで重要になるのは「一つの辞書より二つの辞書を」です。つまり、「一つの情報だけではなく、二つ(複数)の情報にあたりましょう」だといえます。

辞書に限らず、インターネット上で情報を調べるときも同様です。

企業の公式サイトや官公庁のサイトといった信頼できる情報でしたら、そこだけで調べることは問題ありません。しかし、情報をまとめたサイトなど、一次情報以外の情報をもとにして書かれた記事だった場合には、複数の情報にあたるクセをつけておくことが大切です。

ただ複数といっても、出典が明記されていない個人ブログばかりにあたっても意味がありません。

つまり「校正者には必要な情報を見つけ出す」、「情報を精査する」といったスキルも必要だといえます。

校正者に必要なもの

「校閲十訓」から、3つをピックアップして紹介してきました。

校正者として働くために必要なのは、言葉に関する知識やスキルだけではありません。コンディションを整え、複数の情報にあたりながら、見落としのないようにすることも大切なことです。

私自身も心に留めて、引き続き校正の仕事をしていきたいと思います。


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