見出し画像

最近読んだ本『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』

ネガティブ・ケイパビリティとは

ネガティブ・ケイパビリティとは、答えがすぐに出ない複雑な状況に耐える力、または消極的な受容力を指します。この能力は、治療の選択肢が限られている患者や複雑な環境に置かれている人々に特に求められます。

詩人や作家にはこの力が備わっていると言われています。詩や小説、演劇では、答えが出せないまま作品を進めることがあります。これはネガティブ・ケイパビリティが作品創造に重要な役割を果たしているからです。

医師には反対にポジティブ・ケイパビリティの考え方が重視される教育方針がありますが、臨床現場では複雑な問題に直面し、即答できないことがあります。「うちでは診ることができない。」と断ることがあるのもその一例です。

料理人も、最初は技術の習得が難しいことがありますが、努力と経験を積むことで成長し、最終的にはレストランを開業することができる人もいます。

重症の患者でも、本人が希望を持つことで生活習慣の改善や症状の改善が見られることがあります。これはプラセボ効果と同様のメカニズムが働いていると考えられます。

日本の教育では、主にポジティブ・ケイパビリティを育成する方針がとられています。一方で、学習内容が多岐にわたり、短期間での習得が求められるため、落第者が出ることもあります。

ネガティブ・ケイパビリティを持つことは、寛容さや共感力を必要とします。社会が寛容でなくなると、差別や児童虐待、生活保護受給者の問題が解決しづらくなることがあります。

治療の選択肢が限られ、孤独に苦しむ人々にとって、他者からの見守りや共感が希望の光となることがあります。

感想

私はネガティブ・ケイパビリティが求められる環境に子どもの頃からいたため、大事にしていきたい考え方だった。子どもの頃に知りたかった。親はなんとなく分かっていたと思う。障がいがある兄弟がいると、彼らの生涯にわたるケアについて、はじめは受け入れられないと反発する人たちも、年齢を重ねていくにつれて受容できるようになると言われている。
しかし、逃げられる場合や、周りの人間に危害を被られるような環境の場合は、無理に耐える必要はないと思う。それも受容力だと思う。そんな人たちや環境に奉仕する必要はないし、義理もない。
受け身を忌み嫌う人がいるが、受動的な姿勢も時に大事になってくる場合がある。それによって、できるようになることが増えるのだと思う。
すぐ答えや方法を教えろという人は、ポジティブ・ケイパビリティを重視する教育に影響を受け過ぎた結果なのではないか。
専門家はその分野において、一番失敗を繰り返した人のことを言うのだそうだ。体系的なことを学んだだけでは、専門家と名乗ることはできない。先人たちの幾度の失敗があってこそ、その分野は成り立っているのだと思う。他人の失敗を鼻で笑うのではなく、尊重し学びとする姿勢が専門家に求められる。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?