慶応義塾大学経済学部:日本史の並べ替え問題(年表のどこに入るか問題)について

ある受験生から慶応義塾大学経済学部の日本史問題のうち,並べ替え問題(年表のどこに入るか問題)にうまく対応できない,という相談を受けました。
個別に返事したのですが,同じような悩みをかかえている受験生がいるかもしれませんので,こちらにも書いておきます。


慶應・経済の並べ替え問題(年表のどこに入るか問題)を解く際のポイント

慶應・経済の並べ替えを解く際のポイントは
出来事・史料(a〜dなど)と年表の事項について,それぞれ同時代の事項をさまざま思い浮かべてみることです。
具体的に説明しないとわかりにくいと思うので,2023年度の問題を参考に説明しておきます。

例その1)2023年第1問の問3

a.内村鑑三が第一高等中学校を辞職した。
b.学制が公布された。
c.大学令が公布された。

    1    
大教宣布の詔が発せられた。
    2    
東京大学が設立された。
    3    
教育令が公布された。
    4    
帝国大学令が公布された。
    5    
教育勅語が発布された。
    6    
小学校の教科書が国定となった。
    7    

aは内村鑑三不敬事件なので,教育勅語が出された直後の出来事です。
これで入る場所は6となります。

bは廃藩置県によって中央集権体制の基礎が整った後の政策です。
大教宣布の詔は神道国教化政策の一環として出されたものですが,神道国教化政策は明治新政府が成立してから廃藩置県までに行われた政策で,廃藩置県後に後退します。
ここから2に入ると判断できます。

cは第1次世界大戦期の最後のころに成立した原敬内閣の政策です。
一方,小学校教科書の国定化は日露戦争の直前です。
ここから7に入ると判断できます。

例その2)2023年第2問の問8

a 
商工省,大政翼賛会,戦時物資活用協会では消耗戦と資源戦の実相を知らしめるため戦ふ資源展覧会を大蔵,内務両省,情報局協賛のもとに十八日から二十七日まで三越本店で開催する(中略)その内容はまづ米英蘭の東亜侵略,敵側の対日圧迫年表から戦前の我国資材の対米依存状況なども展示され,ここで一転して逆封鎖を受けた敵の資源などが戦果と共に示される。

b 
二日午前十一時頃,日本橋区三越本店へ学生風や労働者風の男が三々五々百名余集合不穏の形勢あるといふので所管堀留署員十余名で警戒中,この一隊は三井銀行寄りの一階休憩室から腕を組み雪崩れを打つて飛びだし『ワッショワッショ』の喚声と共に真向ひの三井銀行裏門へ殺到『国民生活を蹂躙しドル買ひに狂奔する奸悪の牙城を粉砕せよ』とか『三井財閥をようちょう膺懲せよ』等印刷したビラを散布しつヽ受付へ現れ(中略)堀留署に検束された社会青年同盟員二十六名は(中略)単なる財閥に対する反感からこの挙に出たものとみられてゐる。青年同盟は社会民衆党内にある前衛分子からなるもので(中略)騒ぎが一段落ついたあとで同銀行の筆頭常務池田成彬氏は語る。(中略)銀行としてのまじめな商取引の上からドルを買つたもので金輸出再禁止を見越して買つたなぞといふことはない。

c 
楽しい新入学を待つお子さん方や,目出度く進級の諸子諸嬢の為に,時節柄の新装を凝らした学用品がもう店頭に客待ち顔に並んでゐます。(中略)日章旗を持つた兵士と云つた軍国調の鉛筆削り(各十銭)と先頃(*)の日独伊防共協定に因んだ三国の国旗を配したナイフ(六十五銭)と爆弾型のナイフ(三十五銭)等事変の産んだ時世粧がはつきりとこんな些細なものにまで現れてゐます(三越にて)。
(*)先頃とは,資料cの記事が掲載された約3ヶ月前のことである。

(資料出所はいずれも省略する。)

    1    
張作霖が殺害された。
    2    
ニューヨークのウォール街で株価が大暴落した。
    3    
犬養毅首相が殺害された。
    4    
二・二六事件が起きた。
    5    
ドイツがポーランドへの侵攻を開始した。
    6    
日本軍が南部仏印に進駐した。
    7    

aは,大政翼賛会が出てくることから第2次近衛内閣以降の出来事で,かつ,「米英蘭」「敵側の対日圧迫」とあったうえで「一転して逆封鎖を受けた敵の資源」と書かれているので,アジア太平洋戦争開戦より以降の出来事と判断できます。
ここから7に入ると判断できます。

bは,「ドル買ひ(い)」とあり,「金輸出再禁止を見越して」とあるので,イギリスの金本位制離脱より後,金輸出再禁止の前だと考えられます。
ここから3に入ると判断できます。

cは,日独伊防共協定の直後です。
日本がドイツと防共協定を結んだのは二・二六事件のあとに成立した広田内閣のとき,ところがドイツが独ソ不可侵条約を結んで防共協定が無効になったのが平沼内閣の時期で,その後,独ソ不可侵条約を足がかりにドイツがポーランドへ侵攻(ソ連とポーランドを分割)します。
ここから5に入ると判断できます。

まとめ

このように,個別の年代を覚えていなくても問題は解けます。
もちろん年代を覚えておいて損はありません。
とはいえ,年代の暗記に頼りことなく,関連する事項を思い浮かべることで解けるようにしておけば,他の問題を解く学力にもなります。

ですので,これからは
並べ替え問題(年表のどこに入るか問題)だけをできる限り多く抜き出し,それらを解きながら,関連する同時代の事項を『日本史実力強化書』(駿台文庫)で探しまくる作業を積み重ねるといいです。
確実に学力が伸びますよ。

(補注)『日本史実力強化書』をあげているのは,質問をくれた受験生がこれを使って勉強してきているからですが,同時代の出来事を参照しやすい構成になっている参考書だからです。もちろん,高校教科書や他の参考書を使って対応できます。

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