2023年度の京大日本史について

2023年度の京大日本史について簡単にコメントしておきます。

 問題構成は例年通りで,Ⅰの史料問題で史料読解の要素が多くないのも例年通り(ただしA〔小右記の史料問題〕は読解が必要な問題があり良問!)。ただし時代区分でいうと,近代からの出題がやや多かったか。
 Ⅳの論述問題は
1.院政期から鎌倉時代にかけての宗教・文化の受容層の広がり
2.三国防共協定が三国同盟へと至った経緯・背景

1.院政期から鎌倉時代にかけての宗教・文化の受容層の広がり
 摂関期との対比という視点をもてば,「受容層の広がり」は貴族から各地の武士・庶民への広がりでOKでしょう。あとは,各地の武士や庶民が受容した事例を具体的に書いていけばよい。その際,院政期と鎌倉時代,各地の武士と庶民とに分けながら事項を整理したい。
 なお,「宗教・文化」という表現が判断しにくいところだが,宗教を軸として他の分野も含めて書いておけばよい。また,宗教を仏教に焦点をしぼって書いて問題ないが,それについては実教『日本史B』を参照してほしい。

2.三国防共協定が三国同盟へと至った経緯・背景
 ソ連を中心とするコミンテルン(国際共産主義運動)への対抗からアメリカを仮想敵国とした同盟へと変化したことを明記しつつ,その経緯・背景を説明すればよい。日本の動向を主題とするのか,それとも日独伊(少なくとも日独)にめくばりするのか考えどころですが,どちらでもOKでしょう。
ただ,字数内に収めるには具体的な歴史用語の使用を極力抑えることが不可欠で,その点で難しい。しかし,仮想敵国がソ連ではなくアメリカへと変化した契機(独ソ不可侵条約ならびに日中戦争の長期化〔東亜新秩序建設の動き〕)に焦点を絞って書くべき内容を精選したい。

つかはらの日本史工房(京大日本史/論述問題の研究)

Twitterのスペースで田中一平くんと語ったものがこちらです。


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