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「…待ってもらっていいですか?」

「この前借りた本、とても面白くて何度も読み直したんですけど、やっぱり熱がなかなか冷めなくて…返すの待ってもらっていいですか?」


「お父さん、これから大事な仕事があってね。夜には必ず戻ってくるから、いい子にして…待ってくれるかい?」


「お母さんね、ちゃんとおめかしメイクして出かけたいの。あともうちょっとだけ…待ってくれるかな?」


「お願いされていた落とし物を見つけようと、あちこち探し回ったんですけど、全然見つからなくて。もう少しだけ…待ってもらっていいですか?」


「実は仕入れ先から連絡がありまして、どうも納期にだいぶ時間がかかっているそうで、つきましてはもう少々…待ってもらっていいですか?」


「今そちらに向かっているのですが、車が渋滞に捕まってしまいまして、到着が遅くなりますから、大変恐縮ですが…待ってもらっていいですか?」


「どうやら先方に手違いがあったそうで、なんとか間に合わせるよう伝えておりますが、念の為…待ってもらっていいですか?」


「ごめんなさい、例の資料忘れてきてしまいました。今すぐ取りに戻りますので…それまでの間待ってもらっていいですか?」


「大変申し訳ありません。前のお客様の手続きが長引いておりまして。恐れ入りますが、もう少々…お待ちいただいてもよろしいですか?」


「例の仕事ですけど、新人に対応してもらってまして。思うところはあるかもしれませんが、もう少し…待ってもらっていいですか?」


「どの案件もすぐに決められないんだ。上の人間に伝えなくちゃいけないし、だから返事がくるまで…待ってもらってくれないか?」


「一応、本部の人間に掛け合っている最中なんだ。もし分かったら、すぐに君に伝えるからそれまで…待ってもらっていいかな?」


「まだ迷っているんです、自分の進路を決める大事なコトだから。あと一日だけ…待ってもらっていいですか?」


「約束は必ず守ってみせるよ。なあに、俺たちの仲じゃないか。これまで長い付き合いなんだからさ、だから…待ってもらっていいか?」


「知っています。とっくに期限過ぎていること。ですが、まだ払えそうにないので、今月お金が入るまで…待ってもらっていいですか?」


「以前に貸してもらったお金なんですけど、まだ全然返せそうにないから…あともうちょっとだけ待ってもらっていいかい?」


「すみません。昨日も休みをもらって大変申し訳ないんですけど、今日も病気が治らなさそうなので、復帰するの…待ってもらっていいですか?」


「あのー、まだ働く気力がないといいますか、働けそうな状態にないので。就職活動を再開するのもう少し…待ってくれますか?」


「思ったよりだいぶ痛んでいたみたいで。必ず元の状態に戻れるようになおしておきますから、もう少々…待ってもらっていいですか?」


「今日で人生を終わらせようとしていたのですが、もう少し生きていたいと思って。ですから死神さん…待ってもらっていいですか?」






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