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技術士(経営工学・情報工学)が教えるDX(デジタルトランスフォーメーション)講座41デジタルトランスフォーメーションの実践-ブロックチェーンが切り開くビジネス新時代-

ブロックチェーンはビットコインとしてよく知られていますが、ビットコインはブロックチェーンを利用しているだけで、ブロックチェーンの技術は他にも応用できます。ブロックチェーンは、ネットワークに接続された複数のコンピュータがデータを分担して保存するしくみであり、

・システムダウンが起きない
・データを消すことができない
・データを改ざんすることができない

などの特徴があります。
 
 従来の中央集権的なデータベースでは、管理者が簡単に消すことも修正することもできますし、誤ってデータベースまるごとを削除してしまう危険もあります。そして何よりもデータベースを提供するベンダーが倒産してサービス終了してしまうリスクは今も昔も変わりません。
 
また、ブロックチェーンはWeb3.0のコア技術の一つであり、特定のベンダーや管理者に依存しない自律的で創造的なネットワークを実現して、様々な価値の共創や保有、交換が可能になると言われています。
 
 さて、ブロックチェーン自体の説明はこれくらいにして、ブロックチェーンがDX推進においてどのような意味を持つのかについてみていきたいと思います。ブロックチェーンはまさに今までにないサービスをつくり出すことによって、ビジネスイノベーションを起こすことを期待されているのです。
 
 ブロックチェーンのビジネス利用において、イメージしやすいものとしては、トレーサビリティがあります。品質管理のために、原材料や部品の調達から、加工、組立、物流、販売、さらには、修理、回収、廃棄まで記録して追跡可能とするトレーサビリティの取り組みは以前からありました。しかし、消費者や取引先からみれば、それが真実であるという保証はありません。記録データが消えてしまえば、たちまち追跡不能になってしまいます。
 
 トレーサビリティをブロックチェーンによって実現すれば、データが改ざんされているのではないかという懸念がなくなります。指定された原材料を適切な業者から仕入れ、適切な方法や要員、設備で製造し、適切なルートで販売し、さらには何回修理したか、どのような修理をしたか、適切な廃棄処理が行われたかといったことについて、記録し続けてくれるのです。
 
 より高い真実性が求められるトレーサビリティとして、食品安全や環境保護、人権擁護などが確保されていることを証明するために、ブロックチェーンを利用している企業もあります。グリーン購買やパートナーシップ構築宣言などCSR調達(企業の社会的責任購買)の動きは大手企業を中心に拡大しており、コンプライアンスやSDGsなど優良企業であることを証明するためのトレーサビリティの重要性がますます増していくでしょう。
 
 ブロックチェーンを使ったトレーサビリティのしくみは、さらなる拡大をみせています。ブランド品や美術品の偽造品対策としての真贋証明や、中古車や不動産などの取引履歴、学歴や職歴、資格試験などスキル証明など、様々な分野で利用が始まっています。
 
 また、ブロックチェーン技術の一つであるトークンを使ってデジタルな契約書や証明書を発行することによって、契約や受発注などのビジネス取引を簡素化することも考えられます。

 ビジネス取引をブロックチェーンに記録すれば、過去からの取引履歴が改ざんなく残っていくことから、未納品や支払残などの精算も容易になり、新規取引時において要求される機械や製造方法に対する対応実績を証明することも容易になるでしょう。
 
 最後に、ブロックチェーンがDXの主役的デジタル技術になる理由について触れておきたいと思います。それはWeb3.0のコア技術であることもわかるように、はじめから人や企業同士が「つながり」を持つことを理念としていることにあります。

 自分勝手につくったシステムを後からデータ連係しようと考えるのではなく、はじめからデータ連係ありきでシステム化を考えるのです。その考え方はまさにビジネス革新のためにデジタル技術を活用しようとするDXそのものだと言っても過言ではないでしょう。

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