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やさしい物理講座v25「数学者も解けない物理学における三体問題と摂動の解(怪)」

近似解法の一つとして、摂動論がある。
摂動論はもともと惑星の運行を予測するために天文学の一分野である天体力学で開発された手法である。ニュートン力学では、ある惑星の運行を計算する場合、まず第1近似としてその惑星と太陽の2体問題として取扱う。この2体問題は正確に解くことができて、太陽を1つの焦点とする楕円軌道上の面積速度が一定の運動が導かれる。ところが、この惑星には他の惑星も力を作用する。この力の影響による運動の変化を摂動という。この様な惑星の運動の理論的計算法を摂動論という。海王星の運行の理論的予測と観測結果のいずれから冥王星の存在が予言されたのは、摂動論的手法によるものであった。
今回は表題について簡単に解説する。

                2021.126
                さいたま市桜区
                理論物理学研究者 田村 司

はじめに

2019.5.20から時間の定義が変わった。国際単位系(SI)によると、長さ、質量、時間(秒)、電流、熱力学温度、物質量、光度などを定義している。この中で、時間の改正後の定義に「原子の摂動を受けない基底状態・・・云々」とされていることに注目されたい。

改正前の時間の定義

 「時間の場合の定義は、「秒(second)は、133Cs原子の基底状態の2つの超微細準位(F=4、M=0、及びF=3,M=0)の遷移に対応する放射の9192631770周期の継続時間である。」と基準化されている。」

改正後の時間の定義(2019.5.20改定。)

 「原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位Hz(S⁻¹に等しい)で表したときその数値を9192631770と定めることによって定義される。」

時間とキログラムの定義の解説|tsukasa_tamura|note

古典力学や量子力学において,解の求められている運動をする系に,さらに別の比較的小さな力が作用してもとの運動をわずかに変化させるとき,その小さな力の影響をいう。摂動とは、運動などの厳密な解が得られる系に対し、小さい攪乱(かくらん)から生じたずれ(影響)をいう


三体問題

三体問題の近似解の一例。三つの質点が非常に複雑かつ不規則な運動をすることが分かる。

古典力学において、三体問題(さんたいもんだい、: three-body problem)とは、互いに重力相互作用する三質点系の運動がどのようなものかを問う問題。天体力学では万有引力により相互作用する天体の運行をモデル化した問題として、18世紀中頃から活発に研究されてきた。運動の軌道を与える一般解が求積法では求まらない問題として知られる。
ふたつの質点が互いにニュートン重力を及ぼし合って運動するとき、その軌道は楕円放物線双曲線のいずれかになることが知られている(ケプラーの法則)。三体問題はこの系にさらにひとつの質点が加わった場合の進化を求めるもので、太陽-地球-や、太陽-木星-土星など、天体力学の様々な局面で必要となるため古くから調べられてきた。現実的に三体問題を取り扱う場合、問題の簡略化のために、いくつかの仮定がなされることがある。三体ともに同一平面上を運動するという仮定を置く場合、平面三体問題と呼ばれる。三体のうち、一体の質量が他の二体に影響を及ぼさないほど微小で無視できるとする仮定を置いた場合制限三体問題と呼ばれる。特に制限三体問題において、残り二体の軌道を円軌道と仮定する場合、円制限三体問題と呼ばれる。

よく知られた特殊解としては、円制限三体問題におけるラグランジュ点や、三体の質量が等しい場合に8の字型の軌道をとる8の字解等が存在する。

三体問題が求積可能であるかという可積分性についての否定的な結果は、フランスの数学者アンリ・ポアンカレによって、導かれた。
1889年にスウェーデン兼ノルウェー国王オスカー2世の還暦を祝うために開催されたコンテストで、ポアンカレはいくつかの仮定を置いた制限三体問題を考察し、運動を定める第一積分がある種の摂動級数では表現できないことを示した(ポアンカレの定理)。さらに、ポアンカレはこの研究の中で安定多様体不安定多様体が交差するために生じるホモクリニック軌道と呼ばれる極めて複雑な運動の挙動の概念に到達した。

こうした三体問題を端緒とする積分可能性やカオス現象の研究は、現代的な力学系理論の発展の契機となっている。

運動方程式

一般三体問題

 i=1,2,3体の運動方程式は、その座標を  質量を とするとき、次式により与えられる。

第  i=1,2,3体の運動方程式

ここに  は時刻、 G重力定数である。

エネルギ
運動量
運動量
重心位置

この系の自由度は18であるため三体問題が求積可能であるためにはさらに7個の積分が必要であるが、これ以外の運動の積分は存在せず、従って三体問題は求積可能ではない。そのため、三体問題の解は(ラグランジュ点のような例外を除いて)摂動論数値シミュレーション(N体シミュレーションを用いて求められる。


摂動

摂動(せつどう、 英語: perturbation)とは、一般に力学系において、主要な力の寄与(主要項)による運動が、他の副次的な力の寄与(摂動項)によって乱される現象である。
摂動という語は元来、古典力学において、ある天体の運動が他の天体から受ける引力によって乱れることを指していた。複数天体間、複数粒子間に相互作用が働くときの運動は数学的に厳密に解くことができないことが知られている(多体問題)。これらの数学的に厳密に解くことのできない問題の近似解を求める手法の1つに、摂動論(せつどうろん、 英語: perturbation theory)がある。具体的には、次のような手順で近似解を求める。
1,考えている問題Aを、厳密に解ける問題Bに小さな変更(摂動)が加えられた問題であるとみなす。
2,問題Aの近似解は、問題Bの厳密解に、摂動が加わったことによって生じる小さな補正(摂動項)を加えたものであると考える。
3,ここで求めるべき摂動項は、問題Bの厳密解の組み合わせ、すなわち一次結合の形で表現出来ると考え、その係数を与えられた条件から順次求める。
その類推から量子力学において、粒子の運動が複数粒子の間に相互作用が働くことによって乱れることも指すようになった。なお、転じて摂動現象をもたらす副次的な力のことを摂動と呼ぶ場合がある。
具体的には、量子力学の摂動論では、系のハミルトン演算子Hを、固有値方程式が解析的に解ける無摂動部分H₀と残りの摂動部分H’
H=H₀+H’  と分解する。

My  Opinion.

物理の状態計算は3体問題より複雑に条件が絡み合うのである。以前掲載した記事の通り V(電圧)=R(抵抗:比例係数)×Ⅰ(電流)以外に温度、材質、形状などの要素も加わる。 下手すると短絡(ショート)の事故もおこる。 しかしながら、複雑怪奇であるがゆえに、面白いのである。物理は実に面白い!

To be continued . See  you  later !


参考文献(資料)



やさしい物理講座v18「『オームの法則』には温度の条件も考慮が必要」|tsukasa_tamura|note



・『量子コンピューター』 ニュートンプレス2018.5.7発行 
p30~31引用「 量子ビットの例
 1、光子の偏光、2、超電導回路、3、イオンのエネルギー状態(準位)、4、電子のスピン(量子ドット) 5、原子核のスピン、6物質の「トポロジー」の性質利用」

・宮崎 誠一著 『電子回路が良くわかる本』秀和システム 2011.1.1 第1版第1刷
p32文章引用「 電波も光と同じ電磁波ですから速度も同じです。しかしこれは波(波動)として伝わるのであって、電子自体が移動する速さではありません。・・・パイプに水が詰まっているとき、その一端から水を押し込むとパイプの他端から直ちに水が飛び出します。この飛び出した水はもともとパイプに入った水が押し出されたものであって、一端から入った水が移動して他端に到着したものではありません。電気もこれと同じことです。」p198「電磁誘導とは、コイルに電流を流すと、コイルに電流が流れている間、電磁石となり逆にコイルに磁石を近づけるとコイルに電流が流れるという現象」、

・相良岩男著 『電波の本』日刊工業新聞社 2016.2.22 第二版1刷
p30文章引用「1834年レンツは何らかの原因で誘導電流が流れると、誘導電流を妨げる方向に誘起機電力を生じるという「レンツの法則」を発表した。」
p32「・・・まず空間に磁界電界を発生させ(これが誘導電界)この電界によってループ状の変位電流が発生する。次に変位電流を打ち消す方向に新しい電界ループ状に発生していくといことが連鎖的に起こりながら伝播していく。

・円山重直著 『光エネルギー工学』養賢堂 2004.4.30 第1刷発行 p9

・竹内薫著 『量子力学』講談社 2003.6.1 第五刷発行
p29円偏光、偏光フィルターの説明  p154~166
p165 スピーン測定器 p167「情報が伝わっているわけではなく、絡み合った状態というのは、そもそも、空間を超えて絡み合っているわけで、左の電子から右の電子に情報が伝わったわけではない。ある意味で、量子力学というのは最初から共時性を含んだ理論とみることができる。

・コリン・ブルース著 和田純夫訳『量子力学の解釈問題』講談社 2008.5.20 第1刷発行


・根本香絵・池谷瑠絵著 『ようこそ量子』 丸善 2006.12.15 発行
 p176文章抜粋「最大にエンタングルした状態にある2量子ビットについて、・一方の量子ビットが測定されると他方はそれに応じた状態に変化している。・一方の量子ビットの状態は、他方の量子ビットの状態と無関係に変化することはない。・情報が高速を超えて移動することはなく、相対論に抵触しない。

・阿部龍蔵著 『 光と電磁場』放送大学 1992.3.20 第1刷 p37 レーザー、干渉性(コヒーレント)

・阿部龍蔵著 『物理の世界』 放送大学 1994.3.20 第1刷

・阿部龍蔵・川村 清 著 『量子力学』放送大学 1997.3.20 改訂版1刷

・桑原守二・三木茂監修 『電気・電子のしくみ』 ナツメ社 1997.7.20

・小暮陽三著 『物理のしくみ』日本実業出版 1994.10.15 8刷発行
p116~117、電気と磁気のからみあい 
p118~119 マックスウェルの方程式
p120~121 ヘルツの実験

・吉弘芳郎著 『分子の見方・考え方』オーム社 1974.5.20 第1版1刷 p57

・原康夫著 『量子力学』岩波書店 1994.6.6 第1刷発行 p4~5

・小沼通二著 『現代物理学』 放送大学 1997.3.20 改訂版1刷  
p107 くりこみ理論

・竹内薫著 『超ひも理論』 講談社 2007.12.1 第1刷発行

・竹内了著 『時間とはなにか』 講談社 2008.10.30 第2刷発行 p104 ミュー粒子

・山崎耕造著 『宇宙線と素粒子の本』 日刊工業新聞社 2018.1.18 初版一刷発行 p84~85 サイクロン運動 p146 タキオン(光の速度より速い粒子)p148超ひも理論と幕宇宙 p150~151 暗黒物質 p151 暗黒エネルギー

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