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やさしい物理講座ⅴ108「時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在の真偽」

 法律の世界では「予断排除の原則」というものがある。
それは、公判が始まるまで、裁判所(裁判官)があらかじめ事件の内容に触れず、白紙の状態を保つように要請する原則です。 裁判官が偏見を持って審理に臨むことを防ぐためのものです。
 翻って、物理学の研究者にも同じことが言えるのではなかろうか。仮説で出来上がった理論の「一般相対性理論」にあらゆる現象を結び付けようとしているようにしか見えないのである。最初から研究者が「正しい」との認識の偏見を以て結論づけているために、出来上がった理論はどんどん常識から遠ざかっていくのである。そして、現代物理学者は「時空の歪み」は重力によると真顔で信じている。吾輩はそれには驚かされるのである。
 重力は質量のある物体に働く。言い方を変えると重力の影響を受ける物体には質量があるのである。最近、量子力学の発展により色々な特性の素粒子が定義づけられている。素粒子というと物質というイメージが付きまとうが、素粒子は「場」の概念で捉えるとイメージが付きやすい。
光は電磁波と言われている。光を素粒子と捉える粒子とは物質に吸収されるエネルギーと捉える場合であり、空間を伝播する光は電磁波として伝わるのである。

電場と磁場の関係

「重力」と「光(電磁波)」は別の重力場と電場・磁場による「力」であり、直接作用を及ぼさない。故に量子力学でも光粒子は質量「0」と定義されている。重力が原子・分子などの物質を介して光の運動に作用を及ぼすことがある(屈折)。しかし、重力が直接的に電磁波の電場・磁場に影響を及ぼすことが無いのである。つまり光は重力で曲げられることも無いのである。直進する光が重力でゆがめられた空間を通るから光が曲がるという理論も成り立たないのである。
そして、光には慣性力が働かない。アインシュタインの思考実験「光時計」では光粒子に慣性力を働かせて理論展開をして「時間の遅れ」の解説をしているが、その時点から時空の概念に間違いがある。もう一つ、アインシュタインのエレベーターの思考実験でも落下するエレベーターと同じに光も落下する軌跡を描くと解説しているが、慣性力が働かない光を曲げた思考実験をしている。一般の物理常識から考えるとこの辺から思考錯誤を起こしていることが分る。
「時空の歪み」という概念はこのような間違えた物理現象を「思考実験」というあり得ない架空の空想実験を行った結果であることは想像が付くことである。
今回は報道記事をそのまま掲載して紹介するが、「重力」の物理現象としては観測されているが、未だ正体不明である。そして、「重力波」の観測を光の波長で確かめようとする観測は、質量「0」の光(電磁波)は重力の波に干渉することはないために観測不能であり、すでに失敗であるというのが自論である。重力は波であるかは不明であるが、天体の存在する質量のある物質の天体運動の観測が有効であると考える。

     皇紀2684年7月21日
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

報道記事から

時空のゆがみ伝える「重力波」、宇宙のあらゆる方向から伝わる痕跡確認…日本など国際チーム

2023/06/29 23:43

  •  【ワシントン=冨山優介】時間や空間のゆがみを伝える性質を持つ「重力波」が、宇宙の広範囲からゆっくりとうねるように伝わる痕跡を捉えたと、米国や日本など4つの国際チームが28日、科学誌で同時に発表した。重力波の発生源として超巨大質量のブラックホールなどが考えられ、詳しく調べることで宇宙の成り立ちの解明につながる成果という。

 重力波は「時空のさざ波」とも呼ばれ、質量の大きな天体が合体する時などに生じる。2015年に初めて観測され、17年のノーベル物理学賞の受賞テーマとなった。この重力波は、質量が太陽の29倍と36倍のブラックホールが合体して生じたと考えられている。

 今回、痕跡を捉えたのはより長い波長の重力波で、あらゆる方向からの波が重なり合って届いているという。

 米国などのチームは04~20年、「パルサー(中性子星)」と呼ばれる天体68個が規則的に発する電波を観測したデータを解析した。パルサーからの電波の変化を詳しく調べた結果、数年から数十年の長い間隔で振動する複数の重力波が重なり合っている証拠を見いだした。

 熊本大が参加したチームも25個のパルサーからのデータを調べ、同様の結果を得た。

 各チームは、太陽の数百万倍から数十億倍の質量のブラックホール同士の合体が宇宙の様々な場所で起き、「背景重力波」と呼ばれる重力波を発生させた可能性があるとみている。

 横山順一・東京大ビッグバン宇宙国際研究センター長(宇宙物理学)の話「色々な波が重なり合った今回の重力波の発生源を調べることで、天体や銀河の形成、宇宙の初期を探る手がかりになるだろう」

宇宙に広がっている謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。衝撃の観測報告と「時空の歪み」を生み出した源とは?

浅田 秀樹

弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授

プロフィール

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。これは、ナノヘルツという非常に長い周期の重力波でした。世界に衝撃を与えたこの発表の様子を話題の新刊『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』から紹介したいと思います。

*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

世界に衝撃が走った!20年にもわたる観測結果とは

2023年、米国東部時間の6月28日午後1時(日本時間、29日午前3時)、国際研究チーム・ナノグラブ(NANOGrav)が国際記者会見を開きました。

会場は、米国国立科学財団(NSF)です。これは史上初の重力波検出に成功したLIGO(ライゴ)チームが、2016年に記者会見を開いたのと同じ会場です。この重力波初検出は、翌年のノーベル物理学賞にも選ばれ、国内外で大々的に報道されたので、ニュースなどで目にした読者も多いと思います。

ナノグラブの成果は論文として雑誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に査読を経(へ)て掲載されました。

また、同じ日に他国の複数のチームも同様の発表を行っています。欧州・オーストラリアの電波天文台を中心とする各チームは、雑誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に成果論文を発表し、インドを中心とするアジア地域のチームでは、熊本大学などの日本の研究者が参加しています。そのほかにも中国のチームが同様の発表をしています。

では、ここで発表された成果とは、どんなものだったのでしょうか。

それは、ある重力波の存在の証拠を見つけたというものでした。

「パルサー・タイミング・アレイ」とは?

それならば、米国のLIGOや欧州の重力波望遠鏡Virgo(ヴィルゴ)による重力波検出と同じだと思われるかもしれません。しかし、ナノグラブの成果はそれとまったく異なるものなのです。

おおげさに聞こえるかもしれませんが、彼らの成果は、宇宙を観測する「新しい扉」を開いたともいえる衝撃を天文学者に与えました。

チーム・ナノグラブの行った観測を簡単に解説します。彼らの観測装置は「パルサー・タイミング・アレイ」とよばれるものです。

パルサー・タイミング・アレイのイメージ図(図版作成:酒井春)

銀河系に分布するパルサーとよばれる天体を、あたかも「検出器を広範囲に並べたもの=アレイ」に見立てて観測するという意味です。文字どおり解釈すれば、多数のパルサーのタイミングを利用した観測ということになります。

少し詳しい方なら、パルサーと聞いて電波を発している星のことだと知っていると思います。パルサーは安定した周期で電波を発する星です。

では、このパルサーの電波からなにを調べたのでしょうか。

それが重力波の存在です。しかも、それはナノヘルツという単位であらわされる超
長波長の重力波なのです。

周波数と波長はどのように表される?

これについての詳しい解説は他の記事で書くことにしますが、ここで簡単に波の長さを感じてもらえればと思います。

まず、波長とは波が1回振動するあいだの長さを指します。次に、1秒間に何回振動するのかをあらわすものが周波数です。図1の場合は、波長1メートル、周波数は1秒間に3回振動していますので3ヘルツ(Hz)となります、ヘルツは周波数の基本単位です。

チーム・ナノグラブが存在を報告した重力波は、ナノヘルツという単位であらわされます。このナノヘルツとはなんでしょうか。聞き慣れない言葉ですが、本書では頻繁に登場します。ただ知っている方でも、ナノヘルツと聞くと違和感を覚える人が多いかもしれません。

まず、周波数1ヘルツとは、1秒間に1回振動することです。電気料金のことが気になる昨今ですが、東日本と西日本では交流電気の周波数が異なります。東日本では50ヘルツ、西日本では60ヘルツです。これは東日本では1秒間に50回、西日本では60回、振動することをあらわしています。

波長と周波数(図版作成:酒井春)

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ちなみに、明治時代に日本における電気事業が興ったとき、関東では50ヘルツの発電機をドイツから輸入し、関西では60ヘルツの発電機を米国から輸入したことが原因で、その違いが現在に至いたったといわれています。

次に、周波数が1キロヘルツ(kHz)とは、1秒間に1000回振動することです。オーディオマニアの方なら、「このスピーカーで再現できる音の帯域は10ヘルツから10キロヘルツまでだ」などの言い回しを聞いたことがあるでしょう。

もちろん、振動数の小さな10ヘルツは低音側の振動数で、大きな振動数である10キロヘルツは高音側を指します。我々の耳で聴き取れる音の振動数は、おおよそこのあたりの帯域だといわれています。

単位で用いるキロは、数の単位「千」のことですから、10キロヘルツ=1万ヘルツです。つまり、1秒間に1万回振動することです。さらに、キロを1000倍したものがメガとなり100万をあらわします。パソコンの演算処理速度を表示する単位として、メガヘルツが用いられます。

さらに、その1000倍のギガヘルツも、高速のインターネット通信などにおける表示にて日常生活で見かけるようになりました。1ギガヘルツは、1秒間に10億回の振動をすることです。

キロ、メガ、ギガのような呼び方を「接頭語」といいます。

1回振動するのに1,000,000,000秒かかる波!

では、ナノヘルツとは、どのようなものでしょうか。

ナノ(nano)は「10億分の1」をあらわす接頭語です。あまり聞き慣れない単位なので、まずミリ(milli)で肩慣らしをしましょう。

ミリは「1000分の1」を表す接頭語です。したがって、1ミリヘルツは、1秒間に振動する回数が1000分の1回という意味です。1秒間に1回も振動しないのでイメージしにくいかもしれません。言い換えれば、1回振動するのに1000秒かかるのが1ミリヘルツです。

次に、ミリの1000分の1をあらわす接頭語がマイクロです。これは、「100万分の1」を意味します。1マイクロヘルツは、1秒間に振動する回数が100万分の1回を意味します。これは、1回振動するのに100万秒かかります。ちなみに、100万秒は11日と13時間46分40秒となります。

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いよいよ、ナノヘルツです。ナノは、マイクロの1000分1で「10億分の1」を表す接頭語です。したがって、1ナノヘルツの文字どおりの意味は、1秒間に振動する回数が「10億分の1回」です。言い換えると、1回振動するのに1,000,000,000秒かかるのが、1ナノヘルツのことです。

計算としてはこれで正しいです。しかし、ゼロが9個も並んだため、1,000,000,000秒という時間の長さを直感的にイメージしにくいかもしれません。

1年は、SI単位系(国際単位系)で規定された1秒で、約31,556,925秒です。ちなみに、天文学でよく用いられるユリウス暦では、1年を31,557,600秒と定義します。いずれにしても、1ナノヘルツで振動する場合、1回振動するのにおよそ30年もかかるということになります。

20年にもわたる観測期間

1ナノヘルツで振動する現象では、日本人の平均寿命の間に3回弱程度しか振動しないわけですから、我々の生活でほとんど出くわさないのは当然です。ナノヘルツの重力波とは、数十年にわたって観測しても1回の振動を見ることができるかどうかというスケールのものなのです。

さらに、重力波は光速で伝わるといわれています。約30年間で1回振動する波の波長は、約30光年ということから、この超長波長の重力波の長さが想像できるのではないでしょうか。

このような重力波を観測したわけですから、やはりチーム・ナノグラブの観測期間の長さに驚かされます。主要部分の観測期間だけでも15年間、20年を超える観測期間のデータも含まれています。

小学校に入学した子どもが大学を卒業するまでにかかる標準的な期間は16年間です。その期間に匹敵する時間を継続的に観測してきたのです。基礎研究における粘り強さに驚愕せざるを得ません。

ナノヘルツ重力波の発生源はなに?

重力波天文学に関する知識をお持ちの方なら、LIGOが初検出した重力波イベントの観測時間が、1秒間にも満たなかったことを覚えているかもしれません。このような重力波は、大質量天体が合体するときに生じます。実際、LIGOが初検出した重力波は、ブラックホールの合体によるものだとされています。

では、今回、チーム・ナノグラブが存在を報告した超長波長の重力波はどのようなものだったのでしょうか。

彼らが捉えた重力波は、周波数が約1ナノヘルツ、波長にして数光年という途方もないものです。我々からもっとも近い恒星であるケンタウルス座α星までの距離が約4光年ですから、その距離に匹敵するような非常に長い波長の重力波だったのです。

では、このような重力波はどうすれば生まれるのでしょうか。

このような重力波をつくるためには、とてつもない質量の天体が何らかの運動をするか、もしくは宇宙空間そのものが大きく歪(ひず)まなければ生まれません。じつは、これが肝(きも)となります。

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以降の記事では、この重力波の正体はなにか。実際の観測に至るまでの理論的な背景をもとに、その考え方、そしてこの宇宙探査の新しい扉、そしてその向こうに広がるであろう新しい景色を紹介したいと思います。


変動周期「23時間56分」で宇宙から届く謎の電波の正体はなんだったのか?偶然が生み出した天文学「電波天文学」

浅田 秀樹

弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授

プロフィール

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。この記事では観測された謎の重力波「ナノヘルツ重力波」の正体に迫るため、その観測手法のもととなった電波天文学について紹介します。実は、電波天文学はまったくの偶然によって始まったものなのです!

*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

電波天文学の前夜。ジャンスキーの偶然の発見

実は、電波天文学の始まりは天文学者による研究ではありませんでした。これは、米国の電波技術者のカール・ジャンスキーの偶然の発見によるものです。

当時、ジャンスキーが勤務していたのは米国のベル研究所でした。ベル研究所は、発明家グラハム・ベルが創設したボルタ研究所に起源をもつ電気技術、とくに電話に関わる技術開発で優れた実績をあげた研究所です。

カール・ジャンスキー

大学卒業後の1928年にベル研究所に入所したジャンスキーは、電波の研究に取り組み、屋外に受信機を設置し、あらゆる方向からの電波信号を片っ端から記録しました。彼は、検出した電波雑音を3種類に分類しました。

それが、近隣の雷、遠方の雷、そして未知の信号です。

未知の電波信号と「太陽起源説」

彼はそのうちの未知の信号を分析しました。そして、未知の信号が1日周期で変動していることに気づきます。

彼は当初この信号の正体を、太陽が出している電波を地球の自転によって1日周期で受信しているものだと解釈しました。これは「太陽起源説」とよばれました。

その後、より精密に測定したところ、その未知の電波信号の変動周期は、正確には23時間56分であることが判明しました。

太陽起源説が正しければ、ピッタリ24時間でなければなりません。したがって、太陽起源説は棄却されました。

ここで、この1日が24時間というのは、太陽日(たいようじつ)とよばれるものです。

時間の定義には、太陽の動きに基づく太陽時(たいようじ)があり、ある地上の場所で太陽高度が最も高くなった瞬間から、翌日に再び最も高い位置にくる瞬間までの時間間隔を太陽日とよび、これが24時間の由来です。

しかし、夜空に輝く恒星のみかけの運動は、太陽のものとは少し異なっています。これは、地球が太陽の周りを公転運動するためです。地球が公転運動するため、太陽がふたたび最も高い位置に見えるためには、地球の自転1回分より少しばかり余分に回転する必要があるのです。

つまり、24時間の間に地球は1回転より少し多く回転しているのです。

一方、多くの恒星は非常に遠くにあるため、地球の公転による見かけの位置のずれも非常に小さいものです。

恒星日(図版作成:酒井春)

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よって、地球の公転は、恒星の見かけの高度が最高点に到達してから再び最高点に戻るまでの時間間隔にほとんど影響しません。この時間間隔は「恒星日(こうせいび)」とよばれ、これこそが約23時間56分なのです。

未知の電波は太陽系外から来ている!

こうして、ジャンスキーが発見した23時間56分周期で変動する電波信号は、太陽からのものではなく、遠方、つまり太陽系外の天体からの電波信号を地球の自転によって観測しているものだと判明したのです。

最終的に、その未知の電波信号は飛来する方向が特定され、銀河系中心(いて座)から発信されていることがわかりました。

1933年、ジャンスキーはその成果を論文として発表しましたが、当時は、多くの天文学者の関心を集めることはありませんでした。その後、彼はベル研究所で別の研究プロジェクトに移り、電波天文学(当時、この学術用語すら存在しなかった)に関わることは遂にありませんでした。

しかし、彼の業績を讃えて、電波天文学における電波強度の単位はジャンスキー(Jy)が用いられます。この単位は、電波で観測できる主要天体の電波強度を表現するのに便利なため、電波天文学ではワット(W)の代わりに好まれています。

電波天文学が天文観測の方法として重要であることが認識されるまでには、ジャンスキーの発見から25年ほどの時間がかかりました。

米国ニューメキシコ州に設置されている「超大型干渉電波望遠鏡(VLA)」

従来の天文学では、光を発する恒星、そしてその集団としての銀河が主な観測対象でした。可視光での観測なので、いわゆる光学望遠鏡が用いられます。恒星はその中心が高密度なため、核融合を起こし、その熱エネルギーで光り輝くのです。このことは、20世紀半ば、原子核物理学の研究によって明らかとなりました。熱エネルギーなので、恒星の表面の原子・分子はランダムに動き回ります。

一方、強い電波を発生させるためには、多くの電子を揃って運動させる必要があります。実際、電波を発するアンテナは、そうした目的の電気回路です。そんなアンテナが、自然界に存在するとは思えません。

したがって、ジャンスキーが未知の信号が宇宙から来ていることを発表した当時、すぐ近くにある太陽を除いて、星からの電波を観測しようとは考えられていなかったのです。

偶然の発見ふたたび!「パルサーの発見」

1967年8月6日、ケンブリッジ大学の博士課程大学院生だったジョスリン・ベルは、偶然、不思議なシグナルに気づきました。

当時、始まったばかりの電波天文学での観測中の出来事です。

ジョスリン・ベル。1968年、マラード電波天文台にて(Daily Herald Archive/SSPL/Getty Images)

宇宙のある方向からの周期1.337秒の電波シグナルを発見したのです。ベルは、電波望遠鏡(大型の電波受信機です)を用いて地球の上空かなたの電離層を研究しているなかで、この未知の電波を発見しました。

前述のように、この当時も、周期的な電波を出す天体現象など想像さえされていない時代でした。そのため、この電波は太陽系外の知的文明が発しているものではないかという説さえ登場し、リトル・グリーン・マン(欧米における宇宙人のステレオタイプである「小さな緑色の人間」)というニックネームでよばれたほどです。

しかし、その後の観測で、これがパルサーとよばれる天体からの電波によるものだと判明しました。

このパルサーについては、次の記事で詳しく見ていくことにしましょう。

このように偶然の積み重ねから電波天文学が誕生し、いまでは天文観測に欠かせない観測手段となっています。そして現在、「パルサータイミング法」によって発見された「ナノヘルツ重力波」の存在という、新しい宇宙観測への扉を開くきっかけへとつながっていったのです。

参考文献・参考資料

時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在 - 検索 (bing.com)

宇宙に広がっている謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。衝撃の観測報告と「時空の歪み」を生み出した源とは?(浅田 秀樹) | ブルーバックス | 講談社(1/3) (gendai.media)

変動周期「23時間56分」で宇宙から届く謎の電波の正体はなんだったのか?偶然が生み出した天文学「電波天文学」(浅田 秀樹) | ブルーバックス | 講談社(1/2) (gendai.media)

やさしい物理講座v39「光時計の思考実験の検証(再解説・掲載)」|tsukasa_tamura (note.com)

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