政治(物理)講座ⅴ1600「トリチウム分離装置の開発?」
政治的には中国から「処理水」を「汚染水」と揶揄されている。科学技術的には期待されたトリチウム除去技術には難点があるようである。しかしながら、トリチウムの半減期12.3年を気長にまつことであろう。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2684年1月19日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「トリチウム水」を分離する装置 関係者の多くが期待した画期的な技術【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか #1】
日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー • 3 時間
【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか】#1
間もなく5カ月が経つ。昨年8月、政府・東電が地元関係者との約束を反故にし、福島第1原発にたまる放射性物質トリチウムを含んだ「処理水」の海洋放出を強行。元の汚染水は今なお1日約90トンのペースで増え続け、海洋放出はイタチごっこだ。政府は完了までに30~40年かかるとするが、希望的観測に過ぎない。元凶は、多核種除去設備「ALPS」でもトリチウムを取り除けないこと。しかし、この状況に一石を投じたのが、約5年半前に近畿大学の研究チームが発表した最新の除去技術だった。あの画期的なシステムは今、どうなっているのか。研究者らの挑戦を追った。
「『トリチウム水』を分離・回収する方法及び装置を開発しました」
2018年6月、近畿大学の研究チームが発表したプレスリリースは、各メディアに驚きをもって迎えられた。
トリチウムを含んだ水は普通の水と化学的性質が同じであり、分離するのは困難とされる。しかし、近大の研究者らは大阪市のアルミ箔製造会社と連携し、直径5ナノメートル(ナノは10億分の1)という超微細な穴を持つアルミ製フィルターを開発。トリチウム水を含んだ水蒸気を通すと、炭やスポンジのような無数の穴の表面にトリチウム水だけが残り、分離して取り除くことに成功したというのだ。
折しも政府と地元の溝が深まっていた時期
折しも政府が、福島第1原発にたまり続けるトリチウム水の処分を検討する有識者会議を設置。海洋放出を中心に検討を重ねていたのに対し、風評被害を懸念する地元漁協関係者らが反対し、「溝」が埋まることなく、平行線をたどっていた時期と重なった。
トリチウムの除去について、近大の研究チームは「実験室レベルの初期段階で、ほぼ100%除染されていることを確認した」と説明。トリチウム水の処理に一石を投じる研究成果に、この研究を主導する工学部の井原辰彦教授(当時)は「福島第1原発の汚染水の量を減らしたい」と胸を張った。
トリチウムを取り除ける画期的な技術さえあれば、難航を極める「処理水」の処分も丸く収まるのではないか──。関係者の多くが研究チームの画期的な技術に期待し、除去システムの確立と実用化に夢を膨らませた。メディアも当時は「処理につながる技術として期待」と歓迎したものだ。
しかし、共同研究者のひとりは、研究成果の発表に対し、一抹の不安を抱いていた。 =つづく
(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)
トリチウムの除染に成功したものの...共同研究者が明かした懸念と新たなアイデア【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか #3】
日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー •3 時間
【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか】#3
この先、数十年も海に放出され続ける福島第1原発のALPS処理水。中に含まれる放射性物質トリチウムを「分離・回収する装置の開発に成功」と近畿大学の研究チームが発表したのは、2018年6月のことだ。
トリチウムを含んだ水と通常の水は化学的な性質が全く同じで、分離は難しい。だが、研究チームは温度60度ほどだと、何かの表面に接した際、両者の離れ方に差異が生じる特性に着目。超微細な穴を多数持つ「多孔質体」のアルミ加工フィルターに両者を通すと、トリチウム水だけが残り、通常の水と分離できた。
つまり、トリチウムの除染に成功したのだ。その成果を各メディアは驚きと期待を込めて報じたが、共同研究者のひとりで現在、近大原子力研究所長の山西弘城氏は懸念を抱いていた。
「処理できる水の量が少なかったからです」
山西氏は淡々と理由を明かし、こう続けた。
「トリチウム水と通常の水を混ぜ、蒸気にしてフィルターに通すのですが、それほど多くの量は処理できません。10時間の連続実験で1時間ごとに通した水は3.5グラム。ごく少量です。結果も初期段階はほぼ100%分離できましたが、扱う量が増えるにつれて効率は極端に落ちてしまった」
第1原発の敷地内にたまる処理水の量は約130万トン。1時間で数グラムしか分離できなければ、数十年かかっても全く追いつかない。除染技術の原理を得ても現場では使えないということだ。
■技術の発展に向け迫られた選択
「処理できる量の増加」と「高い分離効率の維持」──。さらなる技術の発展に向け、研究チームは選択を迫られた。
「フィルターにこだわるべきか否かです。まるでアルミの板に蒸気を通す感覚で、処理量を増やすことは困難です。研究主導者の井原辰彦教授(当時)は結局、多孔質材の持つ吸着・分離特性を利用する考えを維持しながら、別のシステムを選ぶことにしたのです」
それが、トリチウム水を残す多孔質体を顆粒状にするというアイデアだ。
「例えが適切ではないかもしれませんが、『宇宙くじ』ってご存じですか? あのように下から蒸気を吹きつけ、渦を巻く顆粒にトリチウム水を吸着させるイメージです。粒の素材は明かせませんが、フィルター素材を用いる装置の時とは別の民間企業と提携。処理量を飛躍的に伸ばすために、その企業の既存システムへの適用を目標に、素材選びや処理性能試験の共同研究を進めることにしました」
ところが、この斬新なアイデアは思わぬ壁にブチ当たってしまう。 =つづく
(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)
三重水素の解説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
三重水素(さんじゅうすいそ)またはトリチウム(英: tritium、記号: T)は、質量数が3である水素の同位体、すなわち陽子1つと中性子2つから構成される核種であり、半減期12.32年で3Heへとβ崩壊する放射性同位体である。三重水素は、宇宙線と大気との反応により、地球全体で年間約72 PBq(7.2京ベクレル)ほど天然に生成されている。
重水素(2H)と三重水素(3H)とを併せて重水素(heavy hydrogen)と呼ばれることがある。三重水素核は三重陽子 (英: triton) とも呼ばれる。
三重水素は、その質量が軽水素の約3倍、二重水素の約1.5倍と差が大きいことから、物理的性質も大きく異なる。一方、化学的性質は最外殻電子の数(水素の場合は1)によって決まる要素が大きいため、三重水素の化学的性質は軽水素や重水素とほぼ同じであることが多い。
自然界に最も多く存在する「普通」の水素は、原子核が単独の陽子から成る軽水素(1H)であり、原子核が陽子1つと中性子1つから成る重水素(2H)も安定核のため豊富に存在する (自然界の水素同位体の0.0115%) のに対し、三重水素は不安定なため天然には微量しか存在しない。とはいえ、半減期12.32年は軽い元素の放射性同位体としては比較的長いもので、天然においても一定量が常に存在している。たとえば体重60 kg程度の人の場合、50ベクレル程度のトリチウムを体内に保有している。水素には質量数が4から7の同位体もあるが、いずれも半減期が10-22秒以下と極めて不安定で実験室外には存在しないため、多くの場合には三重水素が事実上唯一の水素の放射性同位体として扱われている。
三重水素は、地球環境においては、酸素と結びついたトリチウム水(HTO)として水に混在しており、水圏中に気相、液相、固相の形態で広く拡散分布している。大気中においては、トリチウム水蒸気(HTO)、トリチウム水素(HT)および炭化トリチウム(CH3T)の3つの化学形で、それぞれ水蒸気、水素、炭化水素と混在している。なお、海水中の三重水素濃度は通常、数 Bq/Lより少ない。
三重水素は、宇宙線と大気との反応により、地球全体で年間約72 PBq(7.2京ベクレル)ほど天然に生成される。加えて、過去の核実験により環境中に大量に放出さる、未だに残っている三重水素(フォールアウト・トリチウム)、原子力発電所または核燃料再処理施設などの原子炉関連施設から大気圏や海洋へ計画放出された三重水素(施設起源トリチウム)が地球上で観測される三重水素の主たる起源である。
高純度の液体トリチウムは、核融合反応のD-T反応を起こす上で必須の燃料であり、水素爆弾の原料の一つとしても利用される。
体内では均等分布で、生物的半減期が短く、エネルギーも低い。こうしたことから三重水素は最も毒性の少ない放射性核種の1つと考えられ、生物影響の面からは従来比較的軽視されてきた。しかし一方で、三重水素を大量に取扱う製造の技術者の、内部被曝による致死例が2例報告されている。三重水素の生物圏に与える影響については、環境放射能安全研究年次計画において研究課題として取り上げられたことなどもあり、長期の研究実績に基づいた報告書が公表されている。
参考文献・参考資料
「トリチウム水」を分離する装置 関係者の多くが期待した画期的な技術【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか #1】 (msn.com)
汚染水からトリチウム水を取り除く低コストな除染技術、近畿大学が開発していた | Buzzap!
「トリチウム水」を分離する装置 関係者の多くが期待した画期的な技術|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
トリチウムの除染に成功したものの...共同研究者が明かした懸念と新たなアイデア【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか #3】 (msn.com)
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