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やさしい物理講座ⅴ74「光は空間を波(電磁波)として伝わり物質によって放出・吸収されるときは粒子として振る舞う」

ビックバン理論や宇宙膨張説に異議を述べる。この結論を導き出した出発点の観測で遠くにある「銀河の光の赤方偏移」の原因を光のドップラー効果であると結論付けた。その発展理論で宇宙は遠ざかっている。宇宙全方向に膨張している。などという結論に至ったのである。「天動説と地動説」を思い浮かべて欲しい。いまのビックバン理論や宇宙膨張説は「天動説と地動説」と50歩100歩である。報道記事の「宇宙の誕生から138億年」という数字を見るたびに今の物理学会の権威主義が独り歩きしている様で残念である。
今回はそのような報道記事と吾輩の主張(光のエネルギー減衰理論)を解説する。そして、宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の話題も取り上げる。

     皇紀2684年6月4日
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

 はじめに 

 宇宙の暗黒物質の素粒子が光粒子(素粒子:電磁波)と親和性があり、138億光年以上の先から伝播してくる光はその素粒子(候補:アクシオン)にエネルギーを与え、光エネルギーの減衰作用をおこした結果が赤方偏移や宇宙背景放射の現象として表れていると考える。
つまり、恒星が観測者に対して運動した結果(ドップラー効果)の赤方偏移ではなく、減衰した分のエネルギーは素粒子(アクシオン)から放出・拡散され、エネルギー保存の原理で、その結果が宇宙マイクロ背景放射の原因となるものと考える。それが宇宙のマイクロ背景放射が一様性があることの疑問の解決となるのである。
宇宙マイクロ波背景放射の温度は10万分の1の精度で等方的(方向に依存しない)。地球から見て、まったく逆の方向からやってくる電波の温度が一緒なのだ。逆の方向からやってくる宇宙マイクロ波背景放射が放出された場所は、現在の宇宙で約920~940億光年離れている(宇宙膨張説によると半径460~470億光年)といわれている
色々な事実を俯瞰して見ると、これほどの距離だけ離れた場所が、示し合わせたように同じ温度だったということは、宇宙に散在する恒星からの光が前述した素粒子(候補アクシオン)によって放出・拡散されたことを示唆しているのである。

アインシュタインの思考実験「光時計」についての補足

「光時計」の前提は光を「粒子」として捉えて、その「粒子」の運動(伝播)により「時間」刻むものとして、思考実験をしている。しかし、表題の「光は空間を波(電磁波)として伝わり物質によって放出・吸収されるときは粒子として振る舞う」つまり波(電磁波)として伝わるので下の図のように移動する思考実験は間違いなのである。粒ではなく波として伝播するのである。もう一つ、素粒子「光子」は質量0であり、慣性力が働かないことに留意が必要である。


       アインシュタインの思考実験
       1、 「光時計」は右にV1の速度で移動する
          と想定・・・B
       2、 「光時計」の上まで「光粒子」が移動
           するものと想定
          (静止しているときの条件)・・・A 
       3、 光粒子は軌跡上を、「ⅽ」の速度移動
           する・・・C  
     
          ピタゴラスの定理  A²+B²=C² 
         光速度不変の原理
を当てはめると 
         時間の遅れ(time dilation) が生じる
         と主張。

運動する電車内でボールを真上に上げた運動は電車内での運動(慣性系1)は上下運動をするが、線路を走る電車の中のボールを見ると放物線を描くこと(慣性系2)が良く知られている。
慣性力を体感する経験としては、バスに乗っているときに急ブレーキでバスが止まると乗っている自分は後ろから押されたような力を感じる。

さて、アインシュタインの思考実験の問題は点は?

⑴、「光粒子」には前述のような、慣性力が働くか否か?
⑵、「光時計」のように「光粒子」は動くのか?
この解答は、光粒子には質量がないから慣性力が働かない。「光粒子」は「光時計」のような運動(慣性力)の影響を受けない。
近年の量子力学や素粒子論、光エネルギー学に従う
光は粒子として伝播しない。光は伝播するときは電磁波として伝播する。」と結論付けられている。
そして、思考実験のような実験は成り立たないので、それにより導き出された「時間の遅れ(time dilation)」としての理論は成立しないローレンツ収縮などということは起こらない。

光の二重性に関しては、「光は空間を波として伝わり(電磁波)物質によって放出・吸収されるときは粒子として振る舞う」(原康夫p4)事はよく知られている。

今まで通説・定説として取り扱われてきた相対性理論は理論として成り立たないことが分る。それについてはまた後日述べる。

次に報道記事をご覧ください。

 質量0の光には慣性力や重力が働かない。故に「重力レンズ効果」と盛んに言われているのは、通常我々が目にする光の屈折である。宇宙空間に漂う物質が重力により濃淡が発生して光の屈折現象を生み出すと考えられる。「銀河団の重力によって空間がゆがみ」とあるが、重力は質量のある物質に作用する力であり、質量0の光を曲げることもなく、「空間を歪める」というという表現は間違いである。これも相対論が導き出したミスリードである。「宇宙は膨張しているため、遠くの銀河から放たれた光は地球に届くまでに波長が引き延ばされて、多くが赤外線になります。」と解説されているが、宇宙が膨張しているから波長が伸びるのではなく、光のエネルギー減衰により波長が伸びるというのが吾輩の主張である。

“最も遠い”宇宙の画像 何が見える?どうやって撮ったの?

アメリカで7月、これまでで“最も遠い宇宙”を撮影したとされる画像が公開されました。画像を撮影したのは、新しい宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」。その画像からは何が見えたの?どうやって撮影されたの?詳しく解説します。(アメリカ総局記者 添徹太郎、科学文化部記者 山内洋平)

公開された画像は?

はるか遠方の銀河団「SMACS0723」

最初に公開されたのは、約40億光年離れた「SMACS0723」と呼ばれる銀河団を中心に撮影した画像です。

遠方の天体を観測するのに適した領域を長時間にわたって撮影していて、数千もの銀河が写し出されています。

銀河団の重力によって空間がゆがみ、奥にある銀河の光が曲がって伸びたように見える「重力レンズ効果」も確認することができます。

画像を拡大すると、さらに細かい銀河や星が見えていて、専門家からは、望遠鏡の性能の高さを感じることができるという声が上がっています。

“星の死”を捉えた「南のリング星雲」

南のリング星雲 近赤外線で撮影(左)と中間赤外線で撮影(右)

続いて公開されたのは「南のリング星雲」とも呼ばれ、鮮やかな色が印象的な美しい画像なのですが、実は“星の死”を捉えています。

右と左は、いずれも観測する光の波長を少し変えて撮影した「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の画像です。

向かって右の画像では「南のリング星雲」の中心に2つの星があるのがはっきりと見えています。

そのうち、赤みを帯びた星が、もともと太陽に特徴が似た星で、その星が一生を終える間際に放出したガスやちりが輝きリング状に見えているということです。

残りの寿命が、約50億年とされる太陽でも同じような現象が起きると考えられていて、詳しく観測することで太陽の将来の姿についても新たな発見があるかもしれません。

“星の誕生”の場である「カリーナ星雲」


一方、こちらは夜空に浮かぶ「山脈」のように見え、「宇宙の崖」とも呼ばれる「カリーナ星雲」の画像です。

「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」のカメラだからこそ撮影できる、濃いガスやちりの詳細な姿とともに、その中で生まれた若い星がいくつも輝いている様子を捉えていて、まさに“星の誕生”の様子を写し出しています。

ハッブル宇宙望遠鏡よりも鮮明に


2枚の画像はほぼ同じ位置を撮影していますが、左が「ハッブル宇宙望遠鏡」の画像で、右が「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の画像です。

「ハッブル宇宙望遠鏡」の画像も、当時としては驚くほど鮮明な画像として一般の人にもインパクトを与えましたが、「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の画像はそれを上回る鮮明なものになっています。

あたかも「霧が晴れたよう」に輪郭や形状が鮮明に見えているほか、ちりの中でも「ハッブル宇宙望遠鏡」では見えなかった誕生したばかりの星がいくつも見えています。

進化する銀河「ステファンの5つ子」


またこちらは、近接して見える5つの銀河の画像で「ステファンの5つ子」と呼ばれています。

銀河どうしがお互いの重力によって引き合い、合体しようとする姿をガスの動きまで克明に捉えています。

銀河は合体を繰り返して、巨大な銀河に進化することが分かってきていて、こうした天体の研究が進めば、天の川銀河の成り立ちの理解にもつながると期待されています。

“生命が存在できる惑星”の探索


惑星「WASP-96b」の大気の観測データ

5つ目の画像は天体の画像ではなく、太陽のように輝く星の周りにある惑星の大気を観測したデータです。

「WASP-96b」と呼ばれる太陽系の外側にある惑星で、大気中に水の存在を示すシグナルを捉えたとしています。

このような分析を通して、生命が存在できる惑星を探すこともこの宇宙望遠鏡の大きな役割だということです。

新たな発見はあったの?

今は本格的な観測を始めたばかりなので、これから研究や分析がスタートするため「発見」はこれからになります。

それでも、NASAはすでに“大発見の兆し”があるとして追加の観測結果を公表しています。

「SMACS0723」の画像には、小さな赤い天体が写っていました。

これは、宇宙誕生から7億年後の約131億年前に発せられた銀河の光で、この光を詳しく解析すると、酸素や水素、それにネオンの存在を示すシグナルを捉えることができたということです。


ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡のイメージ図

専門家はこうした観測をさらに進めることで、宇宙初期の銀河がどのような元素でできていたのか解明できる可能性があるとしています。

また「ステファンの5つ子」の画像でも“大発見の兆し”がありました。

向かって右上に写っている銀河について詳しく調べたところ、明るく輝く銀河の中心部にある超巨大ブラックホールが、ケイ酸塩と呼ばれる鉱物でできた細かいちりに包まれていることが分かったということです。

最初の観測で、すでに貴重なデータがとれていることについて、専門家からは大発見につながる予感がするとして、今後に期待する声があがっているのです。

そもそも、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とは?

天文学の大きな功績を残した「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機としてNASAが中心となって開発したもので、20年以上の歳月と1兆円を超える費用をかけた巨大科学プロジェクトです。

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡

NASAの2代目の長官で、アポロ計画などを主導したジェームズ・ウェッブ氏にちなんで名付けられています。

2021年に宇宙に打ち上げられて、観測にむけた準備が進められていました。

「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」には直径が約6.5メートルの大きな反射鏡があり、「サンシールド」と呼ばれる、太陽や地球の光や熱をさえぎる5層の大きな銀色の幕も備えています。

地球から150万キロ離れた軌道で、太陽と反対方向に望遠鏡を常に向けることで遠くの天体を観測します。

望遠鏡の感度はハッブル宇宙望遠鏡よりも高く、遠く暗い天体を観測できるとされます。

宇宙で遠くの天体を観測することは、過去に発せられた光を観測することになることから、宇宙の昔の姿を捉えることになり、宇宙のより初期の姿を知ることができることにつながります。

なぜ遠くの宇宙を観測できるの?

遠くの宇宙の観測を支えているのは、搭載されている赤外線カメラです。

宇宙は膨張しているため、遠くの銀河から放たれた光は地球に届くまでに波長が引き延ばされて、多くが赤外線になります。

こうしたことから、宇宙の始まりからまもなく誕生した星や銀河の光は、赤外線で観測することが重要になるのです。

「ハッブル宇宙望遠鏡」は、主に可視光での観測のため遠方の宇宙の観測には限界があります。


ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(左)とハッブル宇宙望遠鏡(右)

「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、「ハッブル宇宙望遠鏡」の限界を超えた135億年前の天体から発せられた光も観測できるとされています。

それは宇宙誕生からわずか3億年後という、人類がまだ見たことがない宇宙初期の姿になるはずです。

最大のねらいは?

「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」がねらう最大の成果は宇宙の始まりからまもなく誕生した第一世代の星、「ファーストスター」の発見です。

宇宙が誕生して最初の星はどのようなものだったのかという問いは、宇宙誕生にも関わる大きな謎です。

どのような元素でできているのかや、どのような大きさなのか、観測することができれば人類が宇宙を理解する上で大きな手がかりとなることから、天文学史上の大発見になるとも言われています。

また、「ファーストスター」までいかなくても、初期の銀河星を観測できれば重要な発見になります。

日本も関わっているの?

赤外線カメラの開発チームには、日本人研究者が重要な役割を果たしています。アメリカのアリゾナ大学の江上英一教授は、「NIRCam」(ニアカム)と呼ばれる赤外線カメラを開発したチームに参加しています。

ジェームズ・ウェッブに搭載された赤外線カメラNIRCamの心臓部

江上教授は約10年間、プロジェクトに関わり、打ち上げまでは観測装置の地上試験を重ね、打ち上げ後も観測装置が宇宙空間で正しく作動しているかどうか調整にあたってきたということです。


アリゾナ大学 江上英一教授

公開された最初の画像を見たとき「ひとつの歴史的瞬間に立ち会っているような感覚だった」と話していました。

また、今後の観測で関係する研究者も数多くいます。

「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は、公募で選ばれた研究プログラムの観測が行われることになっていて、日本の研究者たちが提案した観測プログラムが採択されています。

このうち、東京大学宇宙線研究所の播金優一助教は、地上にある望遠鏡などを駆使して見つけた、134.8億年前に銀河から発せられた可能性のある光を捉えていて、これが本当にその年代の光なのか確認することにしています。

確認できれば、現時点での最も昔の銀河の光を捉えたことになります。

播金さんは、今回の画像については、次のように話しました。


東京大学宇宙線研究所 播金優一助教

暗い天体を精度よく鮮明に見ることができ、想像をはるかに超えた質で、パフォーマンスは期待以上です。天文学の新しい時代の幕開けを象徴するものです」

「宇宙の窓」とも言われる「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」からは、宇宙の誕生に関する想像もできなかったような大発見が生みだされるのではないかと期待されているのです。
添 徹太郎の記事一覧

アメリカ総局記者 添 徹太郎

2005年入局 甲府局、科学文化部などを経て、現職。
文芸・歴史・ポップカルチャー・ロボット・AI・感染症・再生医療など幅広い分野を取材。



「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!

高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所

2024.06.03

「光の親戚」アクシオン

次の候補はアクシオンという、これまた光の親戚のような新粒子です。

もともとは、前述されたグルーオンとクォークの間の強い相互作用において、実験データと合うようにCP対称性の保存則を保つべし、という理論的要求から、その存在が予言された粒子です。アクシオンがなければ、CP非保存となってしまい、実験と矛盾します。アクシオンは強い磁石がつくる磁場の下で光子に変身するという性質をもちます。この性質を用いて、地球の周りに大量に存在しているアクシオンや、太陽の中の散乱で新しくつくられて地球に向かって飛んできているアクシオンが、磁場の下で光子に変換される様子を観測しています。アクシオンは、典型的に約1μeVの質量をもつと期待されています。μはmicro(マイクロ)で100万分の1を表します。しかし、依然として未発見で、現在の検出器の感度では足りないのではないかと解釈されています。


以下一部再掲載内容

アクシオン(英語: Axion)

あるいはアキシオンとは、素粒子物理学において、標準模型の未解決問題のひとつである強いCP問題を解決する仮説上で、その存在が期待されている未発見の素粒子である冷たい暗黒物質の候補の一つでもある。
アクシオンは強いCP問題の解決策の1つとして提唱された未発見の粒子である。アクシオンはペッチェイ・クイン対称性英語版)の自発的対称性の破れに伴って出現する(擬)南部・ゴールドストーン粒子である。ペッチェイ・クイン対称性は量子色力学に対してアノマリーを持ち、この性質によりアクシオンは量子色力学の位相を動的に吸収することが可能となっている。

想定される性質(光子と反応する)

様々な実験や観測を考慮した結果、アクシオンの質量電子の約1億分の1以下という非常に微小なものだと考えられている。
また、光子と非常に弱いながらもお互いに反応するため、光子との反応を使った探索方法が有力なものの一つとなっている。
特に、磁場とアクシオンの反応によって光子を作る逆プリマコフ変換を利用した実験は数多くある。

観測実験

様々な理論により観測が試みられている。

代表的な検出原理[4]

  1. プリマコフ効果でアクシオンを光子に転換

  2. 光子を検出

    • X線領域 : 太陽アクシオン - 半導体検出器による検出

    • マイクロ波領域 : 暗黒物質アクシオン - CARRACK , ADMX[6]

アクシオン強い磁場の中でに変わると予測されており、この性質を利用した検出が世界各国で試みられている。たとえば東京大学のグループは、太陽から飛来するアクシオンに強磁場を印加してX線に変換し検出する試みを行っている。暗黒物質の候補にもあげられているため、京都グループはリドベルグ原子を用いて検出する独自の着想により探索を続けている。アメリカのグループは、超伝導磁石を用いた強磁場の元で暗黒物質のアクシオン電磁波に変換して検出を試みる最先端にいる。最近では素粒子実験物理学のメッカであるヨーロッパのCERNにおいても、太陽から飛来するアクシオンを大変高い感度で検出を試みる実験が進められている。

観測機器

望遠鏡 
太陽中心では原子核や電子と黒体放射光子の相互作用により、平均エネルギー 4KeV のアクシオンが作られている可能性がある。このアクシオンを直接観測するため太陽アクシオン望遠鏡(東京アクシオンヘリオスコープ)が作られ観測が行われている。この望遠鏡は、磁場中でアクシオンをX線に変換することにより観測を試みている。

CARRACK 
強磁場中に置かれた共振空胴内で光子に転換したアクシオンをリュードベリ原子に吸収させる。そしてこの原子のみをイオン化しその電子を計数する方式。

観測成果

2019年、京都大学東北大学の研究グループは、原始惑星系円盤の観測によるアクシオンの探査法とその研究結果について発表した。原始惑星系円盤同心円状の偏光パターンを持っており、アクシオンが存在すれば偏光パターンに渦巻き状の乱れが生じるとされる。研究グループはすばる望遠鏡の取得した原始惑星系円盤の観測データを用いて分析を試みたが、偏光パターンの乱れは見つからなかった。この研究により、アクシオンが光に与える影響度合いを示す「結合定数」の上限値を、これまでの研究の10分の1以下に小さく更新することに成功した。

2020年6月、イタリアのグランサッソ国立研究所で実施されているXENON1T実験において、「予想外の過剰な事象」が検出され、この原因としてアクシオンが関与している可能性が発表された。ただし、同じエネルギースペクトルにはトリチウムの崩壊によって生じる電子があるほか、ニュートリノが関与している可能性も排除されていない。

観測の精度は過去最高の99.98%に達したが、素粒子物理学の世界で発見と認められるには、99・9999%が必要とされる。そのため、今後さらに大規模で高感度なXENONnT実験によって真因が明らかになることが期待されている。

暗黒物質の候補でもあるが、2020年6月に3σで検出されたアクシオンは暗黒物質とは直接関係しない別のタイプのものとなる。

アクシオンの再解説

蓑輪 眞(物理学専攻 教授)

アクシオン(axion)は存在が予言されながら未発見の素粒子で,わずかに質量をもつと考えられ,暗黒物質の候補となっている。
連続的対称性の破れにともなって発生する南部・ゴールドストーンボソン(理学部ニュース2006年5月号「理学のキーワード第1回」参照)の一種である。 素粒子の弱い相互作用では粒子と反粒子の入れ替えについての不変性(CP不変性)が保たれていないことが分かっている(小林・益川理論)。 原子核をまとめている力,すなわち強い相互作用においても,それを記述する量子色力学(QCD)の基礎方程式には,理論では決まらない任意の「角度」に比例してCP不変性を破る項が含まれている。 ところが実験的には,強い相互作用においてはCP不変性が良い精度で保持されており,理論と実験が矛盾することから,「強い相互作用のCP問題」とよばれている。 1977年にR. ペッチャイ(Roberto Peccei)とH. クィン(Helen Quinn)は,「角度」変数を素粒子の場に関係する量とみなしてそのまわりの回転対称性を要請した上で,その対称性が破れて自然に安定点に落ち着くことで強い相互作用をCP不変に保つ仕組みを提唱した(PecceiQuinn機構)。 この対称性の破れに対応して南部・ゴールドストーンボソンの存在が同時に予言されて,アクシオンとよばれている。

アクシオンは強い磁場とレーザー光によりアクシオンと光子の結合を調べる非加速器素粒子実験によって精力的に探索が行われているが未発見である。 また,身の回りに希薄な密度で充満し,宇宙の暗黒物質を形成していると思われるアクシオンを,強力な磁場中でマイクロ波に変換してとらえる実験が,アメリカおよび京都大学でそれぞれ行われている。 筆者の研究室では,太陽の中で発生すると考えられるアクシオンを超伝導磁石による専用の望遠鏡(愛称Sumico)で探索する実験が行われている(理学部ニュース2004年7月号「望遠鏡ものがたり4」参照)。

参考文献・参考資料

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した“最も遠い”宇宙とは? | NHK

やさしい物理講座ⅴ65「ハッブル氏の観測の赤方偏移は『光のエネルギー減衰理論』が妥当。その光の真空中の減衰作用は暗黒物資の素粒子『アクシオン』かも知れない」|tsukasa_tamura (note.com)

「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所) | ブルーバックス | 講談社(2/4) (gendai.media)

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