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やさしい法律講座v50「遺言書と死因贈与契約、外国籍の相続、相続財産の破産」

表題について興味の無い人または関係ないと思うひとは聞き流して頂きたい。マニアックな内容であるので実際に実務を行う場合は法律事務所の弁護士に相談の上で進められたい。2019年7月1日施行の民法改正があり、遺言に関しても、遺留分に関しても「減殺」(形成権)から「侵害額」(金額請求権)に改正されている。改正前に作成された遺言書は文面を替える必要が生じる。以前には「相続させる」旨の遺言で物議を醸しだした表現は、「特定財産承継遺言」に変わっている。遺言執行者の権利義務・遺言執行者の復任権・遺贈義務者の引渡義務・経過規定などに留意ください。
概略は以前掲載したブログを参照ください。
やさしい法律講座ⅴ10 副題 相続の実務(異例案件)|tsukasa_tamura|note
今回は特殊な事例を実務経験から解説する。

         皇紀2682年7月4日
         さいたま市桜区
         相続コンサルタント 田村 司

はじめに

相続の実務(相続人確定など)をしていると色々な境遇にある家族関係が浮かび上がる。そこで、あり得ないと思われる実話に基づいて解説する。

自筆証書遺言書の検認の必要性

テレビ番組で相続での遺産分割の場面が映し出されるが、往々に、検認を受けずに自筆証書遺言を相続人代表又は弁護士が開封する場面がある。「検認を受けなくとも自筆証書遺言は有効だろう」と悪びれる事無く平気な人がいるが、遺言書の効力の問題ではなくその目的は「証拠保全」である。
民法第千四条(自筆証書遺言書の検認) 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
第千五条
 (過料)前条の規定により遺言書を提出することを怠りその検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

無効な自筆証書遺言が死因贈与契約の成立の証拠として認められた事例

自筆証書遺言は素人が書くと遺言の方式に従ってないことがある。判例で救済されている場合の一つに、無効の遺言であるけれど生前に当事者同士で口頭で遺贈の約束をしたという事実から無効となった遺言書を死因贈与契約の証拠と認められ、死因贈与契約が成立していたという判示があり、死因贈与契約として遺贈された事例がある

(条文抜粋)解説

・・・第七章 遺言
第九百六十条
 (遺言の方式)遺言は、この法律に定める方式従わなければ、することができない。
第二節 遺言の方式 第一款 普通の方式
第九百六十七条
 (普通の方式による遺言の種類)遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
第九百六十八条 (自筆証書遺言)自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならない

第五百二十一条 (契約の締結及び内容の自由)何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
第五百二十二条(契約の成立と方式) 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。第三節 遺言の効力
第九百八十五条(遺言の効力の発生時期)
 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる
 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

第五節 遺言の撤回及び取消し
第千二十二条
 (遺言の撤回)遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
第千二十三条 (前の遺言と後の遺言との抵触等)前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

第二節 贈与
第五百四十九条(贈与)
 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
第五百五十条 (書面によらない贈与の解除)書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
第五百五十一条 (贈与者の引渡義務等)贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
第五百五十三条 (負担付贈与)負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
第五百五十四条 (死因贈与)贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

第九章 遺留分
第千四十二条
 (遺留分の帰属及びその割合)兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
第千十四条 (特定財産に関する遺言の執行)前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

相続人の所在不明・相続人の生死が不明の場合の措置

 不在者の財産の管理及び失踪の宣告が必要になる。相続では失踪から7年の満了日を死亡と看做す措置となる。失踪宣告日ではないので注意。

失踪宣告後に生存が分かり、失踪宣告の取消しをした事例がある。第二次世界大戦で東京の空襲で戸籍謄本が焼失して生存が確認できない事例もあった。相続の財産はその人の持分は不在者財産管理人が管理することになる。


第二十五条 (不在者の財産の管理)従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
第二十六条 (管理人の改任)不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
第二十七条(管理人の職務) 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
第二十八条(管理人の権限) 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
第二十九条 (管理人の担保提供及び報酬)家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
第三十条 (失踪そうの宣告)不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪そうの宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
第三十一条 (失踪の宣告の効力)前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす
第三十二条 (失踪の宣告の取消し)失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみその財産を返還する義務を負う。

お互いが相続人が飛行機または自動車事故で生死の順番が不明の場合

第三十二条の二 (同時死亡の推定)数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する
これは推定なので、死亡の順番が立証できれば、再転相続代襲相続も起こり得る。

被相続人が米国籍の相続

吾輩の知人にも米国人と結婚した者がいるがその配偶者が米国籍の場合は、ややこしくなる。米国の相続は州法により違いがありますが、検認裁判所(probate court)申請書類(petition for probate)を提出。裁判所が発行するletters testamentaryにより権限付与された遺言執行者、遺産管理人(人格代表者 personal representative)が裁判所に代わって法律行為をします。日本に居住している米国人が死亡した場合は、当該州法の反致条項を確認して、反致条項があるなら日本法が適用になる。もう一つ注目点(重要)は相続税は誰に課税されるかである。
日本は、包括承継主義で、相続人に財産、負債がすべて承継されて清算することになるので、相続人に課税されます。管理清算主義の米国では被相続人に課税される。遺産管理人(人格代表者)が被相続人の財産から清算・納税される。
やさしい法律講座ⅴ6 副題 渉外(外国人)相続|tsukasa_tamura|note

韓国人の遺言の場合

韓国の相続は、当然、韓国の相続法が適用になりますが、遺言書に「この相続、遺言書は日本法を適用する」旨の記載があれば、韓国法の反致条項により、日本法による取扱いとなるただし、日本に居住していて死亡した場合に限るようである。

EU加盟国の相続法の原則と常居所法

 EU加盟国(英国、アイルランド、デンマーク王国を除く)の国籍保有国は原則として「被相続人がその死亡時にその常居所を有している国の法」と定められた(2015.8.17)。他方で遺言によって明示的に自らの本国法又は死亡時の本国法を選択することができる。ですから日本で死亡したEU加盟国の国籍保有者遺言で特別な明示がなければ日本法がが適用になる。

相続人不存在の場合は利害関係者の申し出で財産管理人が選任される。

被相続人に相続人がいないとか、相続人が全員(第一順位、第二順位、第三順位が順番で放棄して、多額の債務と幾ばくかの不動産がある場合、利害関係人(債権者)の請求で相続人不存在として、財産管理人が選任される。

第九百三十八条(相続の放棄の方式) 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
第九百三十九条 (相続の放棄の効力)相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

相続人の不存在

第九百五十一条 (相続財産法人の成立)相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
第九百五十二条 (相続財産の管理人の選任)前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)

第九百五十三条 第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
第九百五十四条 (相続財産の管理人の報告)相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
第九百五十五条 (相続財産法人の不成立)相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。しかし、所有資産より債務額が大きい場合は被相続人の破産として破産管財人による配当分配によることになる。

相続財産の破産手続開始の原因

第二百二十三条 相続財産に対する第三十条第一項の規定の適用については、同項中「破産手続開始の原因となる事実があると認めるとき」とあるのは、「相続財産をもって相続債権者及び受遺者に対する債務を完済することができないと認めるとき」とする。


第二百二十四条(破産手続開始の申立て) 相続財産については、相続債権者又は受遺者のほか、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者(相続財産の管理に必要な行為をする権利を有する遺言執行者に限る。以下この節において同じ。)も、破産手続開始の申立てをすることができる。
 次の各号に掲げる者が相続財産について破産手続開始の申立てをするときは、それぞれ当該各号に定める事実を疎明しなければならない。
 相続債権者又は受遺者 その有する債権の存在及び当該相続財産の破産手続開始の原因となる事実
 相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者 当該相続財産の破産手続開始の原因となる事実
第二百二十五条 (破産手続開始の申立期間)相続財産については、民法第九百四十一条第一項の規定により財産分離の請求をすることができる間に限り、破産手続開始の申立てをすることができる。ただし、限定承認又は財産分離があったときは、相続債権者及び受遺者に対する弁済が完了するまでの間も、破産手続開始の申立てをすることができる。
第二百二十六条 (破産手続開始の決定前の相続の開始)裁判所は、破産手続開始の申立て後破産手続開始の決定前に債務者について相続が開始したときは、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者の申立てにより、当該相続財産についてその破産手続を続行する旨の決定をすることができる。
 前項に規定する続行の申立ては、相続が開始した後一月以内にしなければならない。
 第一項に規定する破産手続は、前項の期間内に第一項に規定する続行の申立てがなかった場合はその期間が経過した時に、前項の期間内に第一項に規定する続行の申立てがあった場合で当該申立てを却下する裁判が確定したときはその時に、それぞれ終了する。
 第一項に規定する続行の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百二十七条 (破産手続開始の決定後の相続の開始)裁判所は、破産手続開始の決定後に破産者について相続が開始したときは、当該相続財産についてその破産手続を続行する。


2019年の相続改正部分(第三者対抗要件)

第八百九十九条の二 (共同相続における権利の承継の対抗要件)相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

遺言書の包括遺贈

相続人ではないが相続人と同一の権利義務を有する者の規定

第九百九十条 (包括受遺者の権利義務)包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
積極財産以外に消極財産(負債)があり放棄したい場合は、家裁に相続放棄の申述が必要となる。

財産分離制度の選択


相続の開始によって被相続人の財産が極端な債務超過の状態にある相続人に承継され、他の債権者と按分比例的にしか弁済を受けることができなくなるとすれば被相続人の債権者にとっていかにも不合理であり不公平である。同様の理屈が反対に債務超過の被相続人の債務相続する者の債権者困難な立場におかれる。このように相続という包括承継が生じた場合に当然に相続人の財産と被相続人の財産とは混合してしまうことになる。この混合することを防止して、両財産を分離し相続財産を相続人の固有の財産と個別にして債権債務の清算をする機能を有する制度財産分離の制度である。手続には家裁の審判によります(民941)。
不動産についてはその登記をしなければ第三者に対抗できない。(民945)

財産分離制度条文抜粋


第九百四十一条 (相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
 家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
 前項の規定による公告は、官報に掲載してする。


第九百四十二条 (財産分離の効力)財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。


第九百四十三条 (財産分離の請求後の相続財産の管理)財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。


第九百四十四条(財産分離の請求後の相続人による管理) 相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があったときは、以後、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければならない。ただし、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任したときは、この限りでない。 第六百四十五条から第六百四十七条まで並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。


第九百四十五条 (不動産についての財産分離の対抗要件)財産分離は、不動産については、その登記をしなければ第三者に対抗することができない


第九百四十六条(物上代位の規定の準用) 第三百四条の規定は、財産分離の場合について準用する。


第九百四十七条 (相続債権者及び受遺者に対する弁済)相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
 財産分離の請求があったときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
 第九百三十条から第九百三十四条までの規定は、前項の場合について準用する。
第九百四十八条 (相続人の固有財産からの弁済)財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行使することができる。この場合においては、相続人の債権者は、その者に先立って弁済を受けることができる
第九百四十九条 (財産分離の請求の防止等)相続人は、その固有財産をもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。
第九百五十条(相続人の債権者の請求による財産分離) 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
 第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条から第九百三十四条まで、第九百四十三条から第九百四十五条まで及び第九百四十八条の規定は、前項の場合について準用する。ただし、第九百二十七条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない

特定財産承継遺言


「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言」のことをいいます(民法1014条2項参照)。簡単に言うと,共同相続人のうちのある特定の相続人に対し,特定の相続財産を,遺贈ではなく「相続させる」とする内容の遺言のことです。判例・通説(遺産分割効果説)によれば,相続させる旨の遺言は,相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできず,遺言の効力発生時に,対象となる相続財産が特定の相続人に承継される効果を生じると解されています。ただし,民法改正(2019年7月1日施行)により,承継した相続財産のうち法定相続分を超える部分については,登記がなければ第三者に対抗できないものとされました(民法899条の2)。


参考文献・参考資料

民法改正後の相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)の法的効力 - 家族信託なら東京・吉祥寺の宮田総合法務事務所 無料法律相談を実施中! (legalservice.jp)

遺留分とは|平成30年の法改正で変更されたポイントとは|freee税理士検索 (advisors-freee.jp)

相続させる旨の遺言 (saeki-net.jp)

やさしい法律講座ⅴ10 副題 相続の実務(異例案件)|tsukasa_tamura|note

遺言書とは?遺言書の種類や効力・書き方を文例付きで解説:朝日新聞デジタル (asahi.com)

死因贈与とは?遺贈との違いやメリット・デメリット、契約手続きの方法を解説 - 相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】 (chester-tax.com)

【死因贈与を撤回(取消)することを認める判断基準(判例の流れ)】 | 死因贈与 | 東京・埼玉の理系弁護士 (mc-law.jp)

民法 | e-Gov法令検索

やさしい法律講座ⅴ10 副題 相続の実務(異例案件)|tsukasa_tamura|note

遺留分とは|平成30年の法改正で変更されたポイントとは|freee税理士検索 (advisors-freee.jp)

民法 | e-Gov法令検索

民法改正後の遺留分侵害額請求手続について (shinginza.com)

特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)とは? | 遺産相続・遺言作成ネット相談室 (yuigonsouzoku.jp)

破産法 | e-Gov法令検索

附 則 (平成三〇年七月一三日法律第七二号) 抄

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