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やさしい物理講座ⅴ89「原子核の新理論(中重原子核の中心部分では殻構造、ごく表面ではαクラスター構造を持つ)」

吾輩も以前から疑問に思っていたことがこれで少し理解で来た。
放射性元素がα崩壊を起こす理由がわからなかったが、その謎の解明として、中重原子核の中心部分では殻構造、ごく表面ではαクラスター構造を持つことが分って、知的好奇心が満たされた。
今回はその報道記事を紹介する。

     皇紀2684年6月30日
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

原子核に新たな見方、2つの構造併せ持つことを発見 大阪公立大

6/27(木) 17:51配信

チタン48の原子核構造の概念説明。球は赤が陽子、青が中性子。原子核の中心からの距離(横軸)により構造が変わり、ごく外側では「アルファ(α)クラスター構造」を持つことが分かった(大阪公立大学提供)

 元素として重さが中程度といえるチタンの原子核では、個々の陽子と中性子が独立に中心の周りを回る「殻構造」が支配的だが、ごく外側でヘリウム原子核に相当する「アルファ(α)粒子」を含む「αクラスター構造」を持つことが分かった。大阪公立大学の研究グループが、理論計算と実験データの分析から解明した。中心からの距離により構造が変わるという、原子核の新たな見方を示した。

ヘリウム原子(He、原子番号2)の模式図。原子核は陽子と中性子の各2個で構成され、これを特にα粒子と呼ぶ

 ヘリウムの原子核は陽子と中性子が2個ずつ、核力によって強く結びついた塊で、特別にα粒子と呼ばれる。原子核内にα粒子が存在するαクラスター構造とみなせる。

α崩壊の例。放射性元素のラジウム(Ra、原子番号88)原子核からα粒子が飛び出し、ラドン(Rn、同86)原子核になる

 一方、原子核からα粒子が飛び出し、より安定した原子核に変わる「α崩壊」という現象がある。元素の中でも陽子や中性子が多く重い、放射性元素で起こる。例えばラジウムでは陽子と中性子の各2個が出るため、原子番号が2小さいラドンになる。
 ただし重い元素の原子核ほど、αクラスター構造ではなく殻構造がよく成り立つと理解されてきた。これでは陽子と中性子がバラバラでα粒子が成立せず、α崩壊が説明できない。理論物理学者のジョージ・ガモフが1928年に仮定の下で説明したものの、未解明だ。

 また、軽くも重くもない中程度の重さの元素の原子核が、αクラスター構造と殻構造のどちらになっているか、研究者の間で議論となってきた。

 そこで研究グループは、中程度の重さといえるチタンの同位体のうち、天然に存在する割合が最も高いチタン48について、原子核の構造を検討した。独自に、殻構造とαクラスター構造を同時に表せる数理モデルを構築。これを使い、チタン48に粒子を高速で衝突させる計算をすることで、原子核の構造を解析した。このデータを別のグループによる実験データと比較し、検証した。

 その結果、チタン48の原子核は中心から外側にかけて大部分が殻構造となっているが、ごく外側ではαクラスター構造が現れることを突き止めた。量子力学的には、ごく外側でαクラスター構造の成分があるといえる。

α崩壊を起こす元素の原子核の実験データがまだ不十分といった理由で今回、先にチタンを検証した。殻構造を持つとみられてきた放射性元素がα崩壊を起こす謎の解明に対し、示唆的な知見が得られたとも考えられる。

 研究グループの大阪公立大学大学院理学研究科の堀内渉准教授(原子核理論)は「実験データは前からあったが、誰も気づかなかった。われわれの解析方法によって原子核構造の転移が初めて示され、新しい見方が与えられた。α崩壊が起きる仕組みの解明のヒントになるのでは。今後、より重い原子核も調べたい」と話している。

 成果は米物理学会誌「フィジカルレビューC」電子版に5月24日に掲載され、大阪公立大学が同29日に発表した。

 なお、原子核の重さの認識は研究分野により、また必ずしも明確ではないが、原子核構造を考える上では概ね、カルシウムまでが軽い原子核と考えられるという。殻構造の本来の読みは「かくこうぞう」だが、原子核構造と混同しないよう便宜的に「からこうぞう」とも読まれている。

チタン原子核の構造が中心からの距離で変化することを発見 -人類の原子核に対する新しい見方を提示-

2024年5月29日

  • 理学研究科

ポイント

◇チタン48原子核がどのような構造を持つか、理論計算と実験データから検証。
◇原子核の中心からの距離により、原子核構造が遷移することを明らかに。
◇人類の原子核に対する新たな見方を提示。

概要

大阪公立大学大学院理学研究科の岡田 磨弦大学院生(博士前期課程2年)、堀内 渉准教授、板垣 直之教授の研究グループは、チタンの原子核であるチタン48が、殻構造※1またはαクラスター構造※2のどちらの原子核構造を持つのか、理論模型を用いた計算結果と既存の実験データを比較。チタン48は、原子核の中心からの距離によって、殻構造からαクラスター構造に変化していることを明らかにしました(図)。本成果は、これまでの原子核構造の理解を覆すもので、約100年間解決されていない重い原子核で起こるα崩壊※3機構の、解明の糸口を与えることが期待されます。

本研究成果は、2024年5月24日に国際学術誌「Physical Review C」のオンライン速報版に掲載されました。

図 チタン48における原子核構造の変化

私たちの開発した解析方法により、チタン48のような中重原子核の中心部分では殻構造、ごく表面ではαクラスター構造を持つことが実証されました。このような構造転移が示されたのは初めてで、新しい原子核の見方を与えるものです。今後は、本研究によって得られた成果を拡張し、より重い原子核の未解決問題に挑戦したいと思っています。

堀内准教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Physical Review C
【論文名】Shell-cluster transition in 48Ti
【著者】M. Okada, W. Horiuchi, and N. Itagaki
【掲載URL】https://doi.org/10.1103/PhysRevC.109.054324



参考文献・参考資料

原子核に新たな見方、2つの構造併せ持つことを発見 大阪公立大(Science Portal) - Yahoo!ニュース

チタン原子核の構造が中心からの距離で変化することを発見 -人類の原子核に対する新しい見方を提示-|大阪公立大学 (omu.ac.jp)

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