見出し画像

政治(物理)講座ⅴ1335「迷信と無知に近いトリチウムの存在」

中国共産党が科学的根拠の乏しい非難であることが露呈してきた。中国の国内の核実験で汚染した土壌(砂)などをマンションビルに使用して放射線量が中国ではヤバイ状態がわかった。上海の自宅で放射線量を測定したら東京の976倍福島より上海の方が放射線量が高いことが分り、SNSに掲載したら中国当局によって投稿記事が削除されたようである。
専門家からは「中国の放射能汚染が示された」という意見が出ている。中国から飛んでくる黄砂こそ危険な放射能物質が含まれていると思われるが、日本は「処理水」より黄砂が重要であり分析が必要であろう。今回は有機結合型トリチウムの解説記事と科学的資料に基づく報道記事を紹介する。

     皇紀2683年9月5日
     さいたま市桜区
     政治(物理)研究者 田村 司

トリチウムの生体濃縮を根拠にALPS処理水を批判する人に足りない科学的思考

谷 龍哉 によるストーリー •2 時間


東京電力福島第1原子力発電所の希釈・放出設備(写真:Rodrigo Reyes Marin/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)© JBpress 提供
  • 東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水放出に関して、「有機結合型トリチウム」を根拠に、トリチウムの生体濃縮を主張する人々が存在する。

  • トリチウムの長期「大量」摂取などによる被曝の危険性は否定できないが、海洋放出はトリチウムを基準値以下に希釈したうえで30年程度にわたって実施されるため、トリチウムを海洋生物が大量に摂取するような状況にはならない。

  • 人間はトリチウムを含め、自然界から日常的に被ばくしている。単にトリチウムのみへ焦点をあて、放射能の危険性を煽ることは、科学的な視点が欠落している。

(谷 龍哉:ネット情報アナリスト)

 SNS上で、「有機結合型トリチウム」を根拠に「トリチウムは生体濃縮される」といった主張を一部の人たちが熱心に発信しています。そのつど専門家や知見を有している方々が「間違っていますよ」と殴りかかっており、風評被害とのあくなき戦いが続いているのを実感しています。

トリチウム水」と違い、「有機結合型トリチウム」という言葉は印象が強く、言葉だけ見ると「トリチウムが有機的に結合して離れないのかな」といったイメージになる方もおられると思いますが、こういったイメージだけで考えると現実と認識がずれてしまうため、注意が必要です。

 イメージを根拠にすると、例えば「トリチウムは生体濃縮される」といった話が安易に扱われることにつながり、有機的な結合をするトリチウムを取り込めば取り込むほど体の中にたまっていき、「生体濃縮が起きる」といった話に筋が通っているように感じる人もいるのではないでしょうか。

 しかし、ALPS処理水の海洋放出は科学的根拠に基づいて安全性が確認されており、トリチウムの生体濃縮も可能性が低いと科学的に示されています。(この点についてはのちほど解説します)

 なお、科学を根本から否定する猛者もいるため、何を伝えても意味がない人が一定数いることに触れておきたく思います。

「トリチウムは生体濃縮されるからALPS処理水の海洋放出は危険である」と主張する人たちは、放射性物質への認識について根本的なところを知らなかったり、間違っていたりするのではないでしょうか。こういった主張をする人たちの中に、以下の記事を取り上げている人がいました。

◎「トリチウム」の生物への影響は? 東電対応の何が問題なのかピーチクパーチク指摘する

 この記事では、トリチウムの長期「大量」摂取などによる被曝の危険性について書かれているのですが、ALPS処理水の海洋放出はトリチウムを基準値以下に希釈したうえで30年程度にわたって実施される予定であり、トリチウムを海洋生物が大量に摂取するような状況にはなりません

 また、そういった状況が万が一起きた場合に備えてモニタリングをしているため、長期間にわたって基準値を超えるALPS処理水が海洋放出されるような状況にはならないと思われます。

トリチウム問題で考えるべき「しきい線量」

 基準値以下に希釈したALPS処理水の海洋放出によって、自然界でトリチウムの大量摂取が起きることは想定しづらく、ALPS処理水を要因としたトリチウム水や有機結合型トリチウムが人の体内に取り込まれ、被ばく線量が「しきい線量」を超えることはないと考えられます。

 しきい線量とは、確定的影響が全体(集団)の1%の人に脱毛・白内障・皮膚障害などの症状が現れる線量のことを言い、しきい線量以下であれば影響が生じない、以上であれば影響が生じる基準になります(注1)。

【注1】第3章 放射線による健康影響 3.1人体への影響(環境省)

 つまり、放射線を浴びたかどうかではなく、「浴びた線量」が問題になるため、しきい線量以下であれば放射線による健康被害はありません。

 私たちが健康を維持するために使用している「レントゲン」も放射線を使って体内を撮影していますが、基準値以下であるため健康被害がでないと言えばイメージしやすいのではないでしょうか。

 ALPS処理水の海洋放出を反対している人たちも、さすがにレントゲンを止めろと声高々に叫んだりしていませんよね。

「環境中のトリチウムに関する最新レビュー」という論文の中で、「トリチウムは生物の代謝によって再利用され、生物自身の水分や海水の安定した水素プールの中で徐々に希釈される前に、生物組織に高濃度で有機的に結合する」と述べられています。

◎An updated review on tritium in the environment

 この内容だけ読むと、トリチウムは生体濃縮が起きて健康被害が出るかのような印象が強まる方がいるかもしれません。

 でも、論文の中では「採取された海洋生物で観測された高濃度のトリチウムは、海水からのトリチウムによる生体濃縮ではなく、これらの生物が摂取した有機分子中の高濃度トリチウムの残留を反映している可能性が高い」とも述べています。

 分かりやすくたとえると、生体濃縮が起きているわけではなく、海洋生物がお食事するときに、食べ物のなかに高濃度のトリチウムが存在する場合は、一時的に海洋生物から観測されるトリチウムの濃度が上がるという内容です。

 これらの観点からも、ALPS処理水の海洋放出は基準値以下までトリチウム濃度を希釈したうえで海洋放出をしており、高濃度ではないため安全性を理解できるのではないでしょうか。

 理解を深めるためにはトリチウムを取り込んだ場合の体内サイクルや、日常的に自然界からトリチウムを取り込んでいる事実、トリチウムの放射線量をあわせて知っておく必要があります。

中国には、福島第1原発の処理水の排出計画量を超える原発がいくつもある(写真:共同通信社)© JBpress


トリチウム水や有機結合型トリチウムの体外排出にかかる時間

 実際にトリチウム水を体内に取り込んだ場合、どのようなサイクルで体外へ排出されるかですが、トリチウム水を体内に取り込むと94~95%がトリチウム水のまま約10日で体外へ排出され、残りの 5~6%が有機結合型トリチウムに変換され約40日(短半減期)もしくは約365日(長半減期)で排出されます。

 有機結合型トリチウムを体内に取り込んだ場合は、50%がトリチウム水になり、残り50%が短半減期の有機結合型トリチウムとして排出され、そのうちの一部が代謝によって長半減期となり排出されるとされています。

【排出期間(生物学的半減期)】

トリチウム水:約10日

有機結合型トリチウム短半減期:約40日

有機結合型トリチウム長半減期:約365日

◎トリチウムの生体への影響と低線量放射線影響研究の課題

 長半減期の有機結合型トリチウムが、約1年とされているところに強い印象を抱く人がいるかもしれませんが、気にする必要はありません。

 私たちは日常的に大気中の水蒸気や雨水、水道水などからトリチウム水を摂取しており、体内では常に変換された長半減期の有機結合型トリチウムが存在していることになるからです。

 有機結合型トリチウムは排せつや代謝によって体の外へ出て行くのに時間はかかりますが、私たちが日常的にトリチウム水を摂取していることを考えると、単に有機結合型トリチウムが体内にあるからという理由で健康被害が出ることはないと理解できると思います。

 トリチウムの放射線についても、「仮に1リットル当たり5000ベクレルのトリチウム水を1リットル、1年間毎日飲み続けた場合、内部被ばく線量は0.09ミリシーベルト(90マイクロシーベルト)程度となります。これは胸のレントゲン写真を1枚撮影した程度の被ばく量であり、健康への影響はありません」(注2)

【注2】[コラム]汚染水に含まれるトリチウムの性質と健康への影響

「カリウム」など日常的に摂取している放射性物質

 また、トリチウム以外にも「カリウム」など日常的に摂取している放射性物質があります。放射性カリウム(カリウム40)はスポーツ飲料などに含まれていたり、私たちの体内にも存在していたりするのですが、カリウムが放射性物質だと知らない方も多いのではないでしょうか。

【体内の放射性物質】

体重60kgの日本人成人の場合

・カリウム40:4000Bq

・炭素14:2500Bq

・ルビジウム87:500Bq

・鉛・ポロニウム:20Bq

※Bq(ベクレル)、μSv(マイクロシーベルト)

 放射性カリウムについてですが、カリウム1gあたりの放射能の強さは30.4Bqで、生物学的半減期(体外への排出期間)は約30日になります。体重60kgの成人男性は4000bqのカリウム40を体内にもっているため、年間170μSvの内部被ばくを受けています。(注3)

【注3】食品中の放射性物質の基礎知識 健康影響と食品の安全性について

 トリチウムも常に数十ベクレルが体内に存在しており、仮に50Bqだとしても年間0.9μSvの内部被ばく量となり、カリウム40よりも被ばく量が少ないことがわかります。

 単にトリチウムのみへ焦点をあて、放射能の危険性を煽ることは、私たちが自然界から日常的に被ばくしている現実を無視しており、科学的な視点が欠落しているのではないでしょうか。

 SNS上で見られる処理水放出反対論の前提には、「私たちは日常的に被ばくしていない」という考え方があるか、「私たちの被ばく状況を知らない」のではと感じています。

 なかにはすべて分かった上で煽っている悪質な人もいそうですが、そういった人は科学を否定している人と同じように何を伝えても意味がないので、周りに見える形で「違いますよ」と指摘しつつ、風評被害が起きないようにしていくしかありません。

処理水放出でなぜトリチウムがやり玉に挙がるのか?

 処理水放出のなかで、なぜトリチウムがやり玉にあげられているかというと、トリチウムの除去が技術的に難しく、基準値以下に処理できていないためであると考えられます。

 でも、基準値に関して言えば、ALPS処理水を海水と混ぜることで、トリチウムを基準値以下まで希釈してから海洋放出しています。希釈の概念がわからない人が「総量が問題だ」などと発信しており、みんな日常的に何か薄めてる(希釈してる)やろとツッコミたくなるところです。

 日常的に放射線を浴びている私たちにとって、放射性物質をどう扱うかはその濃度や放射線量が重要であり、安全な基準を科学的な根拠に基づいて決めることで、健康被害が出ないように運用されています。

 科学的な根拠を無視し、特定の言葉や数字だけを見て過剰に反応するのであれば、極端な話、「放射性カリウムを含む飲料水などはすべて危険なので今すぐ封印処置しろ」といったことになりますが、「誰もそんなことまで言っていない」となるんじゃないですかね。

 ALPS処理水の海洋放出は、科学的根拠に基づいて安全性が確認されており、本来であれば危険性を指摘するようなことではありません。トリチウムについての認識が正しければ、「誰もそんなことまで言っていない」案件なのです。

 風評被害が広がらないためにも、ALPS処理水の海洋放出が危険だと主張している人たちには、安全性に関する情報にも目を通し、聞く耳を持ってほしく思います。

環境省提供資料(興味のある方はお読みください)

環境省_被ばく線量の比較(早見図) (env.go.jp)より。







































































参考文献・参考資料

トリチウムの生体濃縮を根拠にALPS処理水を批判する人に足りない科学的思考 (msn.com)

我が国の放射能泉│村杉ラジウム温泉 奇跡の効能ラボ (murasugi.com)

放射能泉 - Wikipedia

r1kiso-slide02-05.pdf (env.go.jp)

環境省_被ばく線量の比較(早見図) (env.go.jp)

中国、上海の自宅で放射線量を測定したら東京の976倍に 福島より上海の方が放射線量が高い 専門家「中国の放射能汚染が示された」 ★2 - 2NN 2ちゃんねるニュース速報+ナビ

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?