「タミヤ Honda RC166」のホイールは、人生に必要なすべてを教えてくれる。
タミヤHondaRC166を制作する上で最難関と言える工程は、間違いなく前後ホイール部の制作である。
接着する部分のメッキを丁寧に剥がさなければいけないこと、それでいてかなりパーツが細かく、手元が狂った瞬間即破損をまぬがれぬこと、などなど、世の中のありとあらゆる人間の営みの中でも最高難度を誇るといっても過言ではない。
私も初めて作った時はスポークが曲がってしまったり、なんとか誤魔化し誤魔化しといった風にどうにかタイヤっぽくするのが精一杯であった。
👆スポークが曲がっている。車検は通らないだろう。
しかしその後合計六回このプラモを制作したことによって、完璧に作れるようになったのである。
👆買いすぎである。
したがって今回は「RC166世界最多購入回数」を誇る私が、少しでもホイールを作りやすくするコツ、それからこのホイールを完璧に作れることによって一体どんな人生の教訓が得られたのかについて御紹介あそばすのである。
👆もはやホンダの工場である。
※「そもそもTAMIYA HONDA RC166って何?」という方は、以下の初級者向けの記事も参照されたい。
■説明書に書かれていない注意点
プラモのマニュアルというのは、とりあえず「どのようにパーツが組み合わさるのか」を解説することが第一の目的だから、必ずしも完成度を上げる手順になっていないケースがよくある。
例えば上記のように説明書ではスポークの半分をまず設置して、それをかぶせるようなプロセスで制作するようにされているが、実は最初に2つのスポークをくっつけてしまってからホイールにはめ込んだ方が若干楽である(以下のコツ2で詳述)。
しかし説明書であまり込み入ったことを説明し過ぎると、肝心の作り方自体、構造そのものがわかりにくくなってしまうのだからしょうがない。説明書に罪はないのである。
だから私が君に、脇からちょっと入れ知恵をするわけだ。
要するに、ある女とちょうど付き合えるか付き合えないかという間際、なんか横から余計な口出しをしてくるその女の友達、的立ち位置から、私はホイール制作のコツを君に伝授するのである。
◇コツその1: パーツをランナーから極力はずすべからず
ランナーから安易に切り離さず制作をした方が、そこが〝持ち手〟となって作りやすいことが多々ある。
👆極力「切り離さないと、もうこれ以上進めない」という段階まで粘りに粘って、ランナーから分離したい。
◇コツ2: スポークだけまずくっつけて、それから設置せよ。
👆最初にスポークを全部くっつけて……
👆枠に合わせる。
最初はどのスポークがどの穴に入るかといったことがちょっと分かりにくい面がある。しかしそのような時は赤ペンなどで、どのスポークがどこの穴に入るかを記入するとだいぶ簡単である。
◇コツ3: 必ず音楽を聴きながらメッキを剥がすべし。
メッキ剥がしはデザインナイフで丁寧に行う。
それほど難しいわけでもないが、かなり単調作業であるため飽きるのである。だから音楽を聴きながら行うとよい。
むしろ私は音楽を聴きながらメッキ剥がしをすることが一番の気晴らし、いや、もしあと1日しか生きられないとしてもやりたいような、幸福の時間なのである。
●「メッキはがしに最適な曲4選」
せっかくなので、一体どんな曲がよいかをご紹介しよう。
・「Paperback Writer」(The Beatles)
👆発表は1966年。奇しくもバイクと同じ年齢である。彼らが来日したのもこの年であるし、曲の疾走感はもしやHONDAの影響か。
👆1966年発表のビートルズのアルバムはリボルバー。このアルバムはかなりRC166とマッチするのである。
・ 「M・O・N・K・E・Y 」(THE BLUE HEARTS)
👆これはホンダの別のバイクの曲である。「日曜日よりの使者」がコマーシャルソングになったこともあるけれど、やはりホンダとヒロトの相性は抜群だ。
・「Bankrobber 」(The Clash)
👆泥棒の歌である。バイクとは関係ないけれど、温かい晴れた日に、一人でカッコつけて制限速度より5キロくらいオーバーしながらバイクで走ってるような、こういう感じの曲を選ぶのもよい。
・ギミチョコ!!(BABYMETAL )
👆当時ホンダがRC166で世界に見せつけたことも、要するにこういうことだったのである。
■「TAMIYA Honda RC166」ホイールから学べる教訓
繰り返すが、RC166のホイール制作はかなり大変である。しかしそれだけにそこから学べる教訓は数多くあるのである。
以下の4点である。
・何事もいっぺんにやろうとするな。
・見た目と労力は同じではない。
・マニュアルを信じすぎず、各自の創意工夫も大切。
・伸びる時には、必ず抵抗がある。
奇しくも、本当にまったくの偶然なのだが、4つ目に私が悟った事は、かの本田宗一郎氏の名言とまったく同じだったのである。いや、それも必然であろう。ともかくここでは引用扱いにしておくのである。
■まとめ
実は、ここまで君に隠していたことがあるのである。
実はこのホイール、ハイターを使ってホイールのメッキをまず全部溶かし、それを組み立て、その後メッキ塗装をするという方法が一番楽で速いのである。
👆ハイターに浸けると…
👆みるみるメッキが落ちる。
👆普通にやると8時間くらいかかるが、この方法なら1時間である。
でも私はこの方法を君に推薦しない。
というのも、このプラモにメッキパーツを入れた「タミヤのこだわり」を無駄にしたくないからだ。だってやっぱりプラモの箱を開けたときにピカピカ輝くパーツがあれば、「お。」と男子諸君はどうしてもテンションが上がるのではないだろうか?
👆どんな宝石よりも燦然と輝くメッキパーツ。
要するにこのホイールは、そんなわれわれの、昔は毎日爆発させていた空冷4サイクル6気筒の〝少年の心〟が、長らく放置されたまま動かなくなってはいないかと、真心込めてメンテナンスしてくれる存在でもあるのだ。
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