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「Re農vation」に込めた想い

こんにちは。
塚本郷~Re農vationプロジェクトの安部です。

本プロジェクトは、都心から約30分、さいたま市西端の荒川堤外地にある、約90ha「塚本郷」の田んぼや里山を、未来に繋ぐためのプロジェクトで、「1200年田んぼを、未来へ!」を合い言葉に活動しています。

塚本郷の歴史や地理的な背景、里山や農業の現代的事情、そしてプロジェクトで取り組んでいる内容や夢、そして課題や悩みなど、色々なところで言い散らかしてきたので、noteを使ってストックの情報としてまとめようと思い立ち、noteを始めることにしました。よろしくお願いします。

何か書かないとはじまらないので、まずは「Re農vation」という言葉に込めた想いについて、お話ししたいと思います。


「リノベーション」のおさらい

リノベーションは英語で「renovation」と書きます。最近できた言葉のように思われがちですが、1988年発行の「第五版新英和中辞典」(研究社)にも、動詞の「renovate」と共に掲載されていました。

renovete(動詞)、renovation(名詞)

いずれも、修復する、刷新するという意味として書かれています。

ちなみに、renovationという言葉を分解すると、3つに分かれるようです。

renovation
re-「再び」nov「新しい」-ation「すること、するもの」
新しくすること
【名】改修、リノベーション

Gogengo! - 英単語は語源でたのしく

・・・話が脱線しました。

近年、よく使われるリノベーションは、古民家など古い建物を改修し、新しく価値のあるものに生まれ変わらせることを意味します。
もともとは、リフォームという言葉が主でしたが、これは元々の状態まで回復する改修を意味するもので、そこにプラスして新しい価値を持たせる、というのが「リノベーション」という使い分けがされているようです。

ちなみに、「リフォーム」は和製英語だそうです。

「リノベーション」を聞くようになった頃

リノベーションという言葉をよく耳にするようになったのは、私の感覚としても、2011年の東日本大震災以降だったような気がします。

行政などもリノベーションに取り組むようになっていきました。最近では、埼玉県内では東武伊勢崎線沿線を中心に、行政主導による「リノベーションスクール」が開催され、実践的なプログラムに参加した市民が実際に街中にコミュニティの中心となるような店舗を構えるようになり、そこが新たな発信源となり、町に新たな息吹が吹き込まれ始めています。

昔ながらの里山の残る、塚本郷

ここで、塚本郷について簡単にご紹介します。
塚本郷は、もともと、農を中心とした地域でした。荒川の氾濫原に位置し、少なくとも1200年以上前から、田んぼで稲作が続けられてきました。家の敷地は水害から守るために土地が盛り上げられ、その家を囲むように屋敷林がありました。屋敷林のシラカシやアラカシは、鍬など農機具の柄として、竹は籠などを編むほかタケノコを掘って食べ、田んぼの稲わらは草鞋や縄などの材料として使われたほか、畑で敷き藁として使われていました。水辺に生える水草は刈り取って加工した後に祭事や神事に使われる道具へと姿を変えていました。里山での農の営みや生活は、モノの循環や生活文化が必然で紡がれた、理想的なシステムでありました。

生きものの視点から見れば、田んぼが営まれ、適度に人の手が入った塚本郷の環境は、水辺から陸域までの環境が繋がっている「エコトーン」を形成しており、結果、さまざまなカエルや野鳥などの暮らす、命のゆりかごとなっていました。

こうした、人々の生活と農の営みの中で、モノと必然が循環した里山のシステムは、今、世界的にも見直され、2010年の生物多様性条約・名古屋会議では「里山イニシアチブ」が採択されています。

農+リノベーション=Re農vation

埼玉県内を中心に、リノベーションの現場を訪れる機会は多くあったなかで、塚本郷で始めるプロジェクトを始めるときに思いついたのが、「Re農vation」という言葉です。

風呂に入っているときに「”renovation”という言葉にある”刷新”や”革新”という言葉の意味と、ピッタリくるのでは!?」と、思いつきました。

農を中心とした里山のモノの循環するシステムは、さまざまな「必然」を組み合わせることで成り立っていました。しかし、生活様式が変わり、薪を使わなくなり、プラスチックなどで作られたモノが増え、雑木林や屋敷林の手入れをする必然性がなくなってしまいました。そして、農と生活が分離されてきたことに伴い、現在の里山は荒れ果ててしまいました。

農を中心とした里山の再生には、「必然」の循環の輪が必要です。確かに、現代では炭を使わなくなったため、雑木を切る必要は無くなりました。しかし、原木椎茸作りや、最近年でも増えているストーブ付き住宅のための薪の供給の事業化ができるかもしれません。様々な農業資材の価格が高騰する中、マルチの代わりに藁の需要が再び増えつつあります。こうして、現代的なニーズを組み合わせた新しいシステムを構築することで、塚本郷の環境を未来に繋いでいくコトができるのでは?と考えました。

これまでとは違う、新しい、農を中心とした里山システムの再構築。そのキーワードとして、「Re農vation」(りのうべーしょん)打ち出していきたいと思います。

塚本郷~Re農vationプロジェクトのロゴ。
荒川の土手と、ハンノキ林(左側)と竹林(右側)、それに田んぼと広い空を表現しています。


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