見出し画像

ハロウィンの思い出


5年前のハロウィン。

当時はまだハロウィン駆け出し時代で、今ほど定着しておらず、揶揄する意見も多い世の中でした。

そんな中、芸人も空前のハロウィンブームに対して、「さて、どんな角度・言葉でイジりましょうか?」みたいなスタンスマウント合戦が横行してまして。ああだこうだと言い合っているうちに、ふと、「あれ、これちょっとおかしくない?」と感じることがありました。

「参加したこともないのにあれこれ言うのは違くないか?」

もちろん、何を言っても自由だからそれでいいんですけど、本気でなんだかんだ言いたいなら、ちゃんとお祭りに参加して神輿担いで、その上で「自分はこう思いました」と発表した方がそりゃ正しいよな、と思ったわけです。

急にそう思い立った私は、5年前のハロウィン当日、事務所にあった衣装に身を包み、ハロウィンパーティーに繰り出しました。


これで。


この日のことはハッキリと覚えています。確実にどうかしてました。

そんなどうかしていた私が自分の中で決めたルールがこちらです。

「芸人仲間は誘わない。一人で行動する」
「誰も知らないパーティーに行く、入る」
「積極的に交流をはかる」

芸人というのは、気付けばすぐ群れてしまいます。群れたあとで、ああだこうだと性に合わなかった部分の傷の舐め合いもしてしまいます。誰に何言われたわけでもなく、なぜか「行くなら一人っしょ!」という気概で行動し始めたのです。

とはいえ、街に出て一人で歩いていると、ノリの違いをビンビン感じまして。浮き倒しています。明らかな選択ミスです。でも事務所にこれくらいしかなかったですし、普段コントで着ているような恰好では自分を甘やかしている気がしたので、この選択で進むほかありませんでした。

さまざまな格好をした街ゆく人達の目からビーム的な視線で体力が削られていく中、このままでは心がへし折れてしまうと思い、逃げこむようにしてパーティーをしてそうな会場へ。受付に座っていたバニーガールのお姉さんに「あの、一人でなんのアレもないですけど、飛び入りで参加できますか?」と伝えると、割としっかりめに目をシロクロさせながら店のシステムを説明してくれました。「名前を記入して胸元につけてください」と言われ、あ、名前どうしようと思ってモゴモゴしていると、後ろに並ぶゾンビ団体のプレッシャーを感じたお姉さんが「あ、私書いちゃうんで教えてください」と言ってきて、小声で「…日本兵で」と伝え、入店。


こうなりました。

これ以降、パーティーチューンが流れる会場にて、私は貝になりました。一言も発することなく、会場の片隅で違和感の固まりとして鎮座。パーティーノリで背後から「ガオー!」なんて言って血のりをつけてきたライオンキングが、私と正対した瞬間「あ、すいません…」と素に戻って謝ってきたり、警官のコスプレ集団が奥の方でこちらに銃を向けていたり、タバコを吸っていると「アメリカンスピリッツ吸ってるんすね w」みたいなことをルイージ男に言われたりと、鎮座タイムにハロウィンの洗礼を浴びまくり、当初掲げた「積極的に交流をはかる」というルールもどこへやら、貝は深海へと沈んでいきます。

しかし、「自分は何しに来たのか…そうだ、ハロウィンという神輿を担ぎに来たんだ!」と、どうにか心を再起動させ、「楽しむことを忘れてはならない」と、積極的に参加しに行くことに。五郎丸スタイルの男性と話すこと5分、徐々にネットワークビジネスの香りがしたので一時退却。しかし、すかさず前線へ。チャイナドレスの軍団に「一緒に写真いいですか?」と伝えたら、全員でドリンクを取りに行くという鮮やかな集団行動を取られ、再び孤立。写メの音が聞こえ、振り返ると笑っているチャイナドレス軍団。奥歯を噛みしめ、白旗寸前のところで「まだ…」と自分を鼓舞し、さらに前線へ。そこで「フリーでお笑いライブの制作をしている」という孫悟空に遭遇。近しい人物の登場に警戒していたら、「どっかで見たことあるわー」と言われ、自分が芸人であることを打ち明けると、「ラブレターズ?知らないわー」と言われ、ちゃんと心が折れたので撤退。再び鎮座スポットへ戻って鎮座鎮座鎮座。もう動けない。身も心もハロウィンパーティーとお笑い関係者による洗礼を受けてボロボロになり、「こんな時でもコーラってうまいよねぇ」なんて会話をする相手もなく、


陽気な鷲鼻の男性に絡んでいただき、HPがほぼゼロに。

そうこうしていると、ジェイソンマスクさんによるビンゴ大会がスタート。

先にビンゴした人からBOXの中のくじを引き、書いてある商品をゲットできるという出し物が始まり、少し気を休めていたら、かわいらしい小悪魔ルックの女性が「ビンゴ!」の声。BOX内のくじを引き、ジェイソンマスクに手渡す小悪魔のお姉さん。ジェイソンマスクは言いました。

「ザンネーン!!ハズレの方はテキーラショットでぇーす!!」

ゲコ兵にとって地獄大会の幕開けでした。
その後、当たるなと願いつつ、っていうかちょっと放置気味にLINEポコポコをしていたら、隣りの鷲鼻さんが「あ、こことここ空きますよ、リーチじゃないすか!」とご丁寧に穴を開けてくれ、強制的にビンゴの世界へ逆戻り。そして見事ビンゴ。おそるおそるジェイソンマスクに伝えると、突然の兵隊にひるんだのか、何故か自分の時だけくじ引きはなく、小さな小さな「ルンルンハロウィン」なる置き物をいただきました。

その後、もうどうにでもなれと思い、いろんな人に「写真撮ってください」とお願いして回ると、心優しい看護士の皆様が撮ってくれました。

このうち一人のお父様がECCのホームティーチャーをなさっていると。初めてそんな人に会いました。親がECCのホームティーチャーって。「ハロウィンも成長したもんだよね」というスタンスで、ハロウィンの文化体系について日本兵に語ってくれました。


というわけで、私は5年前に神輿を担いだことがあるので言わせてください。ハロウィンは一人で参加するものじゃないですね。怖くて震えるし。やるならみんなでわいわいと。あくまで迷惑のかからない範囲で。

今年は例年より静かなハロウィンになると聞き、なぜかこの苦い思い出を強めに思い出しました。


#ハロウィン  #ラブレターズ  

少しでも感想、応援いただけたら嬉しいですし、他の記事も合わせて読んでいただけたら最高です!