オモシロ捏造から見える生成系AIの真価
登録式プレビューだったbingのAI、通称「あたらしいbing」が5月17日に一般公開されましたが、これの裏側で動いているAIはいまをときめくGPT-4だと明かされています。個人的には、回答の元になっている(と思われる)情報へのリンクが付く点が気に入っていて頻用しています。
地頭と言えば鎌倉時代の……
先日、iPhoneのbingアプリでAIに「地頭力という言葉の初出は?」と聞いたところ、次のように返ってきたのが面白かったので共有します。
解説するまでもないですが、鎌倉時代の役職は「じとう」。地頭力の方は「じあたま」。漢字は同じでも読みも意味も違う別の単語ですから、地頭力の語源が地頭に求められたような能力というのは誤りでしょう。そしてそんな説が実際にあるとも思えないので、ここは完全にbing AIによる作文、AIが生成した部分ということになると思います。
生成的AIの面白さ
この面白さを、僕は次のように理解しています。
生成的AIは、相関関係だけではなく因果関係の「もしかして」を示すことがある
生成的AIは、既存の情報だけではなく新しい「仮説」を示すことがある
AIの「もしかして」はWeb 2.0の初期からリコメンドなどでおなじみですが、これは○○とAは関連している、○○とBは関連している、だからAはBに関連してるかもしれないといった統計結果、相関関係で出してました。以下はおそらくAIによる企まざるボケだと思うのですが、なぜこのことわざにこの画像かといった説明はなく、「大 小」に関係ある画像として選ばれただけだと思います。因果関係は示されてないし、きっとそもそもない。
「地頭力の出典」でも「地頭」(鎌倉時代の役職)には本来、同じ字面で出てくることが多い話題、という相関関係しかないはずです。でもこれが関係ありそうだと当たりを付けたbing AIは、そこから地頭から地頭力という言葉がうまれた「因果」について「地頭にはこういう能力が求められたに違いない、地頭力とはその地頭に求められた能力に違いない」と「仮説」を生成しています。これはいままでのAIではできなかった体験だな、と。
「仮説を生み出す」ことのインパクト
この話したところ、友達からこんなコメントをもらいました。
まさにこれで、ホントのことを知りたい人から見れば「捏造」でしかないこの部分は、見る人によってはお宝そのもの。4月に生成的AI(というよりもChatGPT)関連のニュースがあふれる中、ひときわ目を引いた次のニュースリリースではっきり意識するようになった、僕の感じている生成的AIのインパクトはここでした。
自社の既存資産(製品、特許、人材、etc.)の新規用途を探るといったイノベーション探索は、仮説の生成と検証の絶え間ないサイクル活動で、そのサイクル数は「どれだけの仮説を生み出せるか」が天井になります。AIが「生成的」であるという事、「仮説を生み出せる」という事は、仕事や社会にはこういうインパクトを与えることなのだなと思いました。
なかなかこの「仮説を生み出す」ことの分かりやすい説明ができずに、感じていた面白さを伝えられずにいた僕に、地頭と地頭力の話はズバッと刺さった感じです。それだよ、bing AI。真顔で大ボラ吹いて見せた感じだけど、イイ仕事だった!