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なぜトイレットペーパーに不安を覚えるのか

新型コロナウィルスをめぐるあれこれの一つで、トイレットペーパーやティッシュペーパーがご近所店頭から姿を消している。製紙業界経産省が製造元も原材料も中国への依存はほとんどなく供給量も在庫も十分と昨日の早い時点で発表しているが、今日も売り場は空っぽだった。多分、入荷はしたけど売り切れたのだろう。

僕たちの抱える不安は、国内在庫みたいなマクロなものじゃなくて、明日の用足し(尾籠で申し訳ない)についてのミクロなものなんだなとあらためて思う。

僕の住まいは本当に小さなものだから、普段からあまり買い置きはしていない。例えば石鹸・洗剤類は各種、詰替用1回分だけを買っていて、詰替時に次の一個を買ってくる。トイレットペーパーは4個入り1パックを買ってきて、最後の1個をセットしたら次を買いに行く。セールとか2個でいくらみたいなのがあっても、まとめ買いはしない。

置く場所がないから、というのは第一の理由だけど、第二にその買い置き分だけで間に合うから、ということがある。シャンプーやボディーソープの詰替用を買いに行くと、たまたま売り切れているということは時々ある。でも詰め替えたばかりなら、数日は困らない。その間には入荷するだろうから出直そうと思える。実際、出直せば買い足せる。

いまトイレットペーパーに起きているのは「出直しても間に合う…のか?」という不安だと思う。

SNS等において、トイレットペーパーやティッシュペーパーが不足するとの情報が広がっていますが、これらの紙製品は、現在、通常通りの生産・供給を行っています。原材料調達についても中国に依存しておらず、製品在庫も十分にありますので、需要を満たす十分な供給量・在庫を確保しています。(マスクや消毒液の状況 ~不足を解消するために官民連携して対応中です~ (METI/経済産業省)

この発表は心強い。だから昨日は出直せばいいや、と思えた。でも今日売場に行ってみても買えないと、じゃあいつ手に入るんだろうと思う。何日分が家にあれば、補充が間に合うのだろう、と。

難しいのは、この先の情報がないことだと思う。国内在庫と国内供給能力については製紙業界と経産省が太鼓判を押してくれたけど、物流状況と、その先にある店舗入荷量や店頭在庫数はよくわからない。でも自宅買い置き量が妥当か考えるには、いつ手に入るかが問題になる。そこの情報がないから、みんなの安心できる買い置き量はまちまちになる。

僕は楽観的に2、3日分、遅くても週明けから1日おいて火曜日ぐらいまでの分があればいいかな、と思う。でも悲観的に、3月末までの分と考える人がいても、否定できない。僕の持ってる情報は、国内在庫/供給量についての発表と、実際に今日も売り切れてたという事実だけで、店舗入荷、店頭在庫についてはなんの情報も持っていなくて、当て推量はお互い様だ。

だから、国内在庫と供給量みたいなマクロな情報だけじゃなく、店舗入荷と店頭在庫、その見通しみたいなミクロな情報も欲しいよ、と生活者感覚では思う。ただ、それを小売業の一部が剥き出しの情報でやったら、それはそれで危ないことも想像できる。きっとそのタイミングで人が殺到して、大混雑にもなるし、もしかしたら事故だって起きるかもしれない。こんなふうに。

「事故かなということで(ベランダに)出たところ、もう、びっくりするような光景でした。500人を超える群衆が、一斉に道路の真ん中を走って、警察官の制止を全員無視で振り切って、雪崩のように人が流れていった」と語った。(略)彼らが特に捕獲したがっていたポケモンが、なかなか出現しないとされている「ラプラス」というレアなポケモンだった。そのラプラスが、お台場の道路に出現したとネットに投稿されたことをきっかけに、その場所をめがけて、ポケモントレーナーが殺到。今回の騒ぎとなった。(FNN News)

これはポケモンGoの初期に流れたニュースだ。場所に依存する、希少性のある、モノのハントという構図を作ってしまえば、きっとこんなことも起きかねないという気がする。

あるいは、ネットスーパー(実店舗と連動している)や予約取置きを組み合わせるなどでうまく行くのかもしれない。でもネットを使わないご近所の普段の利用客のために店頭販売に拘りたいかもしれない。その時は例えば大手スーパーやドラッグストアが協働して、同時刻にトイレットペーパーの店頭販売を開始するようにして、購入者が分散せざるを得ないやり方にするとか、結構大掛かりな仕組みがいるかもしれない。

だから、仮にこの話を小売業の方などが真に受けてくれたとしても、今回の新型コロナウィルス禍の間になにか変わるような短期でできることではないかもしれないなと思う。でも、マスクや消毒用アルコールといったモノの不足ではなく、モノはあるけど情報の不足で問題が起きてる面があるのなら、それはなんとかできたりしないかなあと思う。例えば、こういうことは小売業界の長期的なDXの取組みに入ってこないかなとか。

スーパーの棚が空になってしまうような光景は、3.11の際にも、台風ハギビスの際にも見かけて、今回また見かけてる。繰り返してる。店舗入荷の可視化みたいな小売業界のDXは、けっこう災害時の社会のレジリエンシーみたいなことにつながっているのかも、と思う。

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